三角関係U@倉南、天倉 | ナノ





南沢side

なんだよなんだよ。あの一年の
松風天馬って。なんであんなに
自信があるんだ?絶対に渡しま
せんからね。なんてそんなこと
いわれても…それに余裕の笑顔
も気にくわない。何処からそん
な根拠のない自信…頭の中が、
松風天馬でいっぱいになる。
最早部活をしていることさえ、
忘れており今ボールを蹴ってい
たことも忘れていた。どこから
か松風の声がしてよそ見や他事
考えてると危ないですよ。そう
言われた。我に返る前に、風の
ような速さでボールを奪われた

「くそ…」
「南沢先輩大丈夫ですか?」
「お前むかつく」
「ふふ、そんな怒んないで下さい」
「その笑顔がムカつくんだよ」
「まあ俺はなにいわれてもいいです
けど、倉間先輩には当たらないように
しないと嫌われちゃいますよ?」
「ふん、わざわざ忠告どうも」
「いえいえ、じゃあ始めますか」

お互いがお互いに背中を向けて
ボールを追いかけグラウンドを
走り回る。何故だか今日はいつ
もより目一杯サッカーに向きあ
っている気がした。嫌いな汗も
沢山かいたしもう走れないくら
いヘタヘタになっていた。

「よし!今日の練習は終わり」

円堂監督のその一言で汗塗れの
部員達は一斉に部室へ戻った。
なんだか部室に行く気にもなれ
ないな。だんだんと日が落ちて
いるせいか、外の方が割と涼し
くて落ち着く気がした。

「汗拭かないと風邪引きますよ?」
「松風がなんで心配する」
「いや、別に同じ部員だし」

顔を赤くしてもじもじそう言った
なんだ。可愛いとこもあるんだな
ちょっと見直した。そう思って、
松風の滴る汗を手で拭ってやった

「ちょっ先輩汚いですよ?」
「綺麗だ。お前の汗輝いてるな」
「先輩おかしいですよ?」
「はっ?おかしくねーよ」

俺はなんだか心から笑っている
ような気がした。こいつそういう
不思議なとこあるよな、やっぱり
憎めないな。松風天馬って…
ちょっとだけ見直した瞬間だった

「あっ、そうだ!帰り…話したい
ことあるんですけど」
「んーちょっとくらいなら」
「ありがとうございます!」

松風が俺に話したいことと言ったら
やっぱり倉間の話だろうなと
感づいてしまう。倉間の事になると
松風はなんだか怖いからな。
けど譲るつもりはないのも確か。
まあ、もちろんその話じゃ無いかも
しれないけど。

「先輩用意出来ましたか?」
「ああ、じゃあ帰るか。」
「はい」

三分ほど無言で歩いていた。そして
沈黙を破ったのはやはり松風のほう
だった。あの…俺、南沢先輩が好き
なんです。耳を疑う発言にもう一度
聞き返した。頭の中がパニック状態

「じゃあもう一度言いますね?」
「えっああ、」


「俺、南沢先輩が好きなんです」



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2012.08.05