三角関係@倉南、天倉 | ナノ




「先輩!今日帰りどうすか?」
「んーあーごめん、また今度」
「そうすか…」

がっくりわざとらしく肩を落とすが
南沢先輩は築いてくれない。むしろ
俺なんて興味無いのかさっさと練習
に向かっていってしまう。一人部室
に取り残されてしまった。

「倉間せんぱーいっ!」
後ろから元気いっぱいの天馬の声が
聞こえてきた。
「ん?」
振り返ると勢いよく抱きつかれた。
「今日一緒に帰りません?」
「おいおい、まだ練習始まってない
んだぞ」
なんて言うと、天馬は口を尖らせて
先輩だってさっき南沢先輩に言って
いたじゃないですか、と痛いとこを
突かれてしまった。

「悪い悪い。今日か、あいてる」
「ですよね、一緒に帰りましょう」
「ああ。じゃあ練習行くか?」
「待ってください、忘れ物!」

そう言ってほっぺたにキスをして、
にっこり笑った。積極的なふりして
本当は恥ずかしいのか顔が真っ赤だ

「じゃっじゃあ!いきましょう」
「ぷぷっお前顔真っ赤!
似合わないことすんなよなー」
「先輩だって顔あかいでしょ!」
「あっ赤くねーよ!」

なんて言いながら和気藹々と、練習
に向かった。南沢先輩に睨まれてる
なんて知らずに…

「おい、倉間」
「えっはい?」

振り向くと鋭い形相で睨まれていた
その表情に何か悪いことをしてしま
ったか一部始終を思い出すがなんに
も思いつかない。一方天馬は何故か
余裕の笑みを見せて、先行ってます
ね。なんて言って行ってしまった。
そんな天馬を見て余計に南沢さんの
眉間に皺がよった気がしてならない

「お前さ、なに考えてんの?」
「何って何が何ですか?」
「なになにうるせーよ」
「えっあ?なんすか南沢さん」
「なんであの一年にキスされてんの」
「…みてたんすか?」
「ああ、嬉しそうにしやがって」
「別にそんなんじゃ…」

曖昧な答えに苛ついたのか南沢さん
は胸ぐらを掴み噛みつくようなキス
をしてきた。如何にも怒ってますよ
というキスだった。息もできない程
長く熱いキス。なにに対しても冷静
な南沢さんがなんで?少し期待して
いいのかな。なんて思った。

「南沢さん?」
「調子にのるなよ。ただ玩具が
取られんの悔しいだけだから」

本当か嘘かは解らない微妙な表情で
言った。もしそれが嘘だったらなん
て考えて顔がにやける。最早本当か
嘘かなんてどっちでもいい。ただ、
南沢さんが嫉妬してくれるだけで、
嬉しくて堪らないのだから。

「じゃあ、お前練習戻れ」
「あれ?南沢さんわ?」
「俺は用事あるから後で行く。」

ふーん。と軽く言って部室から出た
その後部室で何が起こっていたのか
は知る由もないが。

「盗み聞きなんて悪趣味だな」
「ふふ、バレてましたか?」
「ああ、お前ならやりかねないからな」
「いやだなあ、南沢先輩ったら!」
「ふん、言いたいことでもあるのか」
「一つ忠告。俺南沢先輩に倉間先輩
絶対に渡しませんからね!」
「へえ、そりゃ無理だな」
「どうとでも言ってください」
「お前こそな」

二人の間に見えない火花が散っている
ような気がした。何故だか天馬は余裕
で、南沢先輩が何しようと動じない。
少しの沈黙の後、じゃあ練習戻ります
ね!と余裕の笑みで駆けていった。

「んだよ、俺だけ余裕ねーな…」


ちょっとすると、天馬がどこからか
帰ってきた。さっきまでどこにいた
のか少し気になったが、南沢さんが
帰ってこない方が心配で天馬の事は
あまり気にならなかった。それに
しても南沢さん遅すぎるな。もうすぐ
練習が終わってしまうというのに…

「先輩誰探してるんですか?」
「えっああ、南沢さん」
「さっき部室で見ましたけど?」
「まだ部室いるのか?」
「そうみたいですよ?」
「様子見てこようかな?」

そう言うと天馬に抱き締められた。
行かないで、南沢先輩のとこにと。
大きな瞳には大量の涙を溜めていた
なんでそんなに必死に止めるのか、
理解が出来なかったが、天馬に泣か
れては困るので優しく抱き締めた。

「行かないでくれますか?」
「わかった。いかねーよ」
「ありがとうございます!」

礼を言って肩に手を回した。後ろ
には南沢先輩が立っていて、べえ。
と舌をだして笑った。南沢先輩は何
も言わず振り返り立ち去ってしまっ
た。そんなこと知る由もなくただ、
天馬を抱き締めているのであった。


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最後まで読んでくださった方、
ありがとうございます!

これはまだ続きがあります。
南沢さんsideから書きます。


よかったらみてやってください!


2012.08.04