小さくも、大きくもない国の第二王女である私はずっと祖国ではなく、隣国で育った。
人質として、私は隣国に捧げられたのだ。
隣国での私の役目は同い年の第三王子、留三郎さまの遊び相手。
家族同然で育ったけど、私と留三郎さまは格付けするなら所謂、幼馴染みだったのだろう。
幸せだった。
幸せは長く続かない。
誰だったかしら、言っていたような気がする。
幸せだった年月は、決して短くはなくて、私の生きてきた年月そのものだった。
つまり、十五年もの間。
私は、とても幸せだった。
私と留三郎さまが十五才になった春、怒る民達の手で、私の祖国は葬られた。
詳しくは、知らない。
きっとこれからも、私と留三郎さまは変わらないから。





今朝、留三郎さまが私の居室を訪ね、散歩に誘われた。
今は、暖かな陽光に満ちた中庭を、留三郎さまと一緒に歩いている。
「思い出しますね……よく、二人で遊びましたもの」
「ああ……懐かしいな」
留三郎さまと同じくらい、高い木の根元に二人して腰を落とした。
淡い桃色の花がちらほらと咲いた枝を見上げて、ため息をついた。
幼い頃は、もっと大きく感じたのに……
私より背の小さかった留三郎さまはもう私の背なんか越えていて。
幼い頃と同じように、留三郎さまが私の膝に頭を枕に横になった。
文句を幾ら言っても止めないから、何時だったか、諦めてしまった。
眩しい、太陽を仰ぐ。
まるで、天と地の恋だと思った。
お互いが大切なのに、大事なのに、大好きなのに、障害が多すぎて、結ばれない。
お互いが大切すぎて、大事すぎて、大好きすぎて、触れない。
幸せに、なれないよ……
幼い頃から、留三郎さまは眩しすぎる。
「…………お前は、俺の傍にいれば良いからな」
「え?」
「俺が、守るから、」
留三郎さまの髪を撫でていた手を止める。
悲しげな声色に、私はどうすればいいのだろう?
「名前は、これからもこの国に、俺の傍にいてくれるか?」
「私はずっと、一緒にいたでしょう?」
「そういう意味じゃない!」
強く言い返され、言葉を失ってしまう。
曖昧に微笑めば誤魔化すな、と怒られた。
「あ、のな、もし、よかったら……俺と──」
留三郎さまは身体を起こして、私を見つめた。
戸惑いなく、留三郎さまは話を続ける。
「……名前……」
「私は…………」
どう答えるべきなのだろう。
「私は、地位を失いました 人質でいる、この国にいる意味さえも、失ってしまったんです」
落ちぶれた、元王族。
この国から追い出されるのも時間の問題だと思っていた。
「こんな、私が傍にいても、良いのですか?」
留三郎さまが黙って私を抱き寄せた。
私も何も言わなかった。



天(王族)

地(落ちぶれた王族)




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