「尾浜君……私、尾浜君の事が好きです!」
「あのなー、わいもおんなし気持ちやて」
「へ?」
「わいもあんたの事、好きじゃーけー」
「えぇぇぇぇ!?」
「おうぎょーだのぉ」
彼の外見だけで好きになった事は認めますです、はい。
今なら土下座だって出来ますです、はい。



尾浜君に憧れ多めに告白して玉砕すると思いきや付き合い始めて早数週間。
彼が少し皆と違うように感じます。
いえ、なんと言いますか……
口調がね……
よく分からないと申しましょうか。
でも、良い方なのです。
少し、スキンシップが激しいような気もしますが……
「きゃぁっ!」
図書室を出て、廊下を歩いていた私を突然抱き締める誰か。
誰でしょう。
くのたまの後輩かしら、と振り向けば数週間前に告白したばかりの尾浜君が私に抱きついていました。
「お、尾浜君?」
「えへへーばれたぁ?」
ばれますとも。
ぺしり、
悪戯のお仕置きに尾浜君の頭を軽く叩きます。
へにゃへにゃの髪の毛が少しだけ揺れました。
「名前ー名前、どけーいっとんたん?」
「あ、……図書室に少し」
「名前のこめー背じゃ棚に手がたわん癖に」
「……失礼ですよ」
ぺしり、
暴言のお仕置きにもう一度尾浜君の頭を叩きました。
やはりへにゃへにゃの髪の毛が揺れます。
「じゃーけー次からわいもつれのーていかれー」
気遣ってくれますし優しいのですけど、たまに言葉が通じないのです。


「名前ー名前、わいの事好きゆうて」
「……わい?」
「わいの事、好きじゃろう?はようしねぇ」
「しね?今しねって言いました!?」
廊下でいちゃつくな!
名前だけは知っている忍たま五年生が本を尾浜君に投げつけました。
仲良しなのですね。
「名前、名前」
「はい、なにか?」
「呼んだだけじゃ」
尾浜君は岡山の出身らしく方言が根付いているのです。
「名前、名前ー」
「呼んだだけ、ですか?」
「ん」
にこり、
悪戯っ子のように笑う尾浜君。
……実際悪戯っ子なのですが。
格好良いな、と思ってしまうのは惚れた弱味と言うものでしょうか。
忍たま長屋の尾浜君の部屋。
同室の方はお出かけ中らしく、部屋に入れば早々に抱き寄せられました。
尾浜君は胡座をかいて、私を足の間に座らせました。
「名前、髪つんだん?」
「へ?」
「あ、ごめん 髪切った?」
あぁ そういう意味なのですか。
確かに少しだけタカ丸さんに切って貰った覚えがありました。
前髪が邪魔だったから。
「はい タカ丸さんに頼みまして」
似合うでしょうか?
似合う、と言ってくださるでしょうか。
「やじゃ」
「?」
「……いやだ」
尾浜君が私を抱き締めます。
どうかされたのでしょうか?
「何が嫌なのですか?」
髪を、撫でられます。
優しく、優しく、撫でられます。
何だか不思議な感じですね。
「名前はわいが好きなんじゃろう?」
「尾浜君?」
「斉藤じゃのうて名前の恋人はわいじゃ」
「……嫉妬、ですか?」
「……」
頬を膨らませて拗ねてしまった尾浜君。
可愛らしい、と思ってしまうのはやはり惚れた弱味というものなのでしょうか。
足の間に私を座らせてぷんぷん怒っています。
「斉藤ばー……」
「タカ丸さんばっかり?」
「ずりぃわ」
「……」
可愛らしい嫉妬に私は呆れるばかり。
「名前、口吸いしよ」
「く、口吸いですかぁ!?私と尾浜君がですか!?」
唐突に尾浜君が口を開いたと思ったら……
口吸い、ですか。
「わいとせなんだら、誰とするんで?」
「ー…っ!狡いですよ」
あぁ 酷い人。
ため息を吐いて尾浜君に身体を預けます。
私をこんなにときめかせる方は尾浜君以外居られませんのに。
そっと、唇が重なるのを感じる。
今なら言っても許されるでしょうか?
「尾浜君……好き、ですよ?」
「名前……!」
分かりやすく顔を綻ばせた尾浜君は私をぎゅうぎゅうに抱き締めてまた私の分からない言葉で私に何か囁き出しました。
本当に好きならば方言なんて関係ないのでしょうね。
少なくとも、私はそう思うのです。
……日常生活に多少難はありますが。



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