「高杉ィ。今までの恨み、晴らさせてもらうぜィ」

「ふん、来いよ」

「笑ってられんのも今のうちでィ」

「それはこっちのセリフだぜ」


爽やかな風がカーテンを揺らす。外は雲一つない快晴で、どこからか洗濯物がよく乾くわ、なんて主婦の声が聞こえてきそうな日だ。
一方、校庭の真ん中か屋上か、どこいらの河原から聞こえてきそうなその言葉は教室の窓際一番後ろから。先日の席替えで生徒の誰もが憧れる席を見事ゲットした高杉と、その前の席に彼と向かい合うように座る沖田のものだ。


「くらえ!ロイヤルストレートフラッシュ!!」

「くっ…!なんだと!?」

「ブハハハハ!死んじまいなァ!」

「クソ!これから先どうやって暮らしていけば良いんだ…!」

「はっ、泣きついたってダメだぜィ。お前の財産はすべて頂いた。せいぜい餓死しねェように天パ教師にでも養ってもらいなァ」

「そ、それだけはァ…!」





「お前ら何してるアル。ズルッ…借金の取り立てごっこか?ズルッ」

「いや、トランプだ」

「普通だとつまんねぇから1ヶ月のジュース代掛けてたんでィ」

「ふーん。私も混ぜろヨ。ズズーズルッ」

「お前ルール知らねェだろ。つかズルズルうるせェよ!」


もう中身が入っていないであろうパックジュースをズルズルと吸い続ける神楽に高杉が怒る。相変わらず耳に掛けているそれが眼鏡の意味をなしているのか甚だ疑問である。


「そういやチャイナ、神威はどうしたんでィ」


以前は遅刻・早退・サボリは当たり前だった神威だが、高杉や沖田と連むようになってからは比較的学校にも来ていたし、サボリも3人一緒が多い。それは高杉、沖田も然りだ。しかし今日は朝から彼を見ていない。沖田は散らばったトランプを片付けながら何となしに問うた。


「アイツは今日は来ないアル。不良仲間が朝から連れてったネ」

「不良仲間って誰でィ」

「喧嘩か?」

「違うネ。誕生日を祝いに来たヨ」


誕生日?高杉と沖田は訳が分からなかったが、どうやら喧嘩ではないらしい。


「アイツ今日が誕生日アル。お前らもケーキの一つや二つ持って来いヨ。私チョコとイチゴの生クリームがいいネ」

「それお前が食いたいだけだろィ」

「つかアイツ誕生日とか一言も言ってなかったぞ」

「神威はあぁ見えて恥ずかしがり屋ヨ。お前ら察せヨ。そんでケーキよこせヨ」

「お前図々しいな」







***


「アイツに友達がいたとはねィ」

「あァ」


放課後、高杉と沖田は街をプラプラとさ迷っていた。やはり神威が学校に来ることはなく、今頃不良仲間とやらに誕生日を祝って貰っているのだろう。2人は神威にそんな友達がいたことに驚くと共に、自分たちに何も言ってくれなかったことを少々水臭いと思う。お互い言葉にはしないがどこか腑に落ちない表情は隠せていない。


「なァ、プレゼントとかあげた方が良いのか?」

「何あげるんでィ」

「………」

「………」

「やっぱケーキ?」

「俺ァあんな店入るのは御免だねィ」

「俺も」


はあ、とどちらのものとも分からない溜め息は周囲の音にかき消された。
このままただ歩いていても意味がないので、2人は取り敢えずゲームセンターへと足を踏み入れる。比較的大きなそこはクレーンゲームやスロットなど、ほとんどのゲームが揃っている為平日の午後といっても客は多い。カップルや学生の集団をうまくかわしながら歩く。


「あ、抱き枕は?アイツ以外と寝るとき何か抱き締めてそうじゃね?」

「持って帰んの恥ィ」

「あー…」

「プリクラ撮って誕生日おめでとうって書くのはどうでィ」

「それなんかキモ。つか仲間外れとか言って逆に怒られそう」

「高杉じゃあるめェし、んな事で怒んねェさ」

「それどういう意味だよ」


案は出るものの言い争いに発展するばかりで一向に前に進む気配がない。誕生日プレゼントなんて人様に送ったことがないに等しい2人だ。さんざん頭を悩ませたがここまで来たからには何かあげたい、そう思いUFOキャッチャーを見て回る。


「あ、これは?」

「んぁ?あー、アイツっぽい」








***


「ストラップ?」

「可愛いだろィ」

「あは、オソロ?」

「オソロだ」

「なにコレ」

「「ウサビッチ」」






*神威誕生日おめでとー!本人全然出てない…。
3人でオソロのストラップしてたら可愛いです。