どうしてこんなことになったんだっけ?あ、そだそだ総ちゃんのせいだ。後でアイス奢ってもらうからな。 そんな事を考えながら横目で相棒を一瞥すれば、うんざりといった表情で目前の教師たちを見ていた。さすが親友、ボクも同じ気持ちダヨ。 「ムラムラする」 ことの始まりはこうだった。今日もやっぱり土方撲滅作戦を成功させ、満足した俺たちは屋上に駆け上がり春の風を感じていた。俺はひたすら、昼に飲むパックジュースは何味にしようかとか、お喋りな自分が口をきかずに一体どれ程の時間を耐えられるのだろうかと考えていた。でも結局ものの数十分も保たないだろうという結論に至ったところで、隣に寝そべる総ちゃんが何か言った。ムラムラとか聞こえたけど多分何かの間違いだろう。ちゃんと聞き直しました。 「ごめん総ちゃん、何て?」 「今日は総ちゃんかィ。山ちゃん、ムラムラする」 あれ?聞き間違いじゃなかった。 まあ、僕たち男の子だし、ムラムラするなんて日常茶飯事だけどさ、何で今言う?だってごっちんの目の前には青い青い空が広がっているだけだ。え、コイツ何にムラムラしてんの?空? 「高杉せんせーでィ」 「………は?」 「なんか、エロくね?」 うん、高杉せんせーはエロい。なんかエロい。 俺の疑問を察したのか、此方が質問する前に答えを返してきた。しかもまさかの高杉せんせーだったとは驚きだ。俺も青い青い空を見上げて考える。納得できない訳ではない。でもさ、あの人 「男ジャン!」 「ああ」 ああ、じゃねェよ!総ちゃんてソッチなの?というのは後でじっくり調査することにして、そうだ高杉せんせーは男なのだ。たまに土方撲滅計画の作戦会議(という名のサボリ)で計画を一緒に企ててくれる保健室の先生。てか保健の先生ってだけでなんかもうエロいよね。俺たち健全な男子高校生だもん、頭のなかそれとマヨ先輩いじめしか無い。あ、あと遊び。よく総ちゃんと下り坂をチャリで爆走する。ガキ臭くてちょっぴり命の危機を感じるところが面白い。 てか話飛んじゃった、えっとそうそう高杉せんせーね。口は悪いし目つきだって悪いからチョー無愛想なんだけどチョー美人。中性的な顔立ちからか男女共に大人気だし、髪はサラサラのツヤツヤで近付くとほんのり良い匂いするし……って、 「なんかムラムラしてきた」 「空に?」 「違ェよバカ」 くそ、俺までムラムラしてきたじゃねーか!こんちくしょう。 あれ、でも今まで高杉せんせーをそんな目で見たことはなかったし、こいつがいきなり変なこと言うからつられただけかも。 「確かめに行くぞィ」 俺のイマイチ納得のいかない表情を読み取ったのか(さっきから読心術?使いすぎ)はたまた自分も同じ思いを巡らせているのか。いきなり立ち上がった総ちゃんは勇者の如く言い放った。 そして今まさに高杉せんせーのいる保健室に来た、のだが。 「……何でいンの?」 「いやそれこっちのセリフだからね。お前ら俺の授業サボって何してんだコノヤロー。はい晋ちゃん、あーん」 「あー…ん、晋ちゃん言うな」 何コレどういう状況?銀八がいる!二人して桃食ってる!高杉せんせーがもぐもぐ桃食ってる! 「アンタこそ授業サボって何してんの?」 「俺はお前らを探すという口実で自習にして、晋ちゃんに桃食わしに来ただけだよ?でもってあわよくば銀さんの、ブッ!」 高杉せんせーの鉄拳が銀八のもさもさした頭の上に落ちた。当然だと思う。ていうか単にサボる為の口実に使われたのか、俺たちは。そもそもこの二人ってこんな関係だっけ?高杉せんせーは女王様のように悠然と度々桃を催促するし、銀八は当然のようにそれに応える。至極嬉しそうに。 「で、お前ら何しに来たんだ?またサボリか」 「いえ、ちょっとねィ」 漸く喋り掛けてくれたのに相変わらず桃食べながら資料に注がれる視線はそのまま。高杉せんせーはホントつれない。 「何だよ用がないならさっさと教室帰って勉強しなさいっつーの」 「お前が帰れ」 「晋ちゃんが桃食いたいって言うから来たんだよ?」 「食いたいとは言ってねェし授業抜けて来る奴があるかバカ」 「あっねぇ見て、この桃晋ちゃんのお尻そっくりじゃね?」 「死ね死ね銀八死ね」 「ちょ、消しゴムのカス服の中に入れるのやめて!でもそんな晋ちゃんも可愛い!あーん」 「あー…」 「「食べるんかい」」 何なのこいつら!?さっきから銀八の一方的なアピールがひどすぎるんですけど。高杉せんせーも口ではイヤイヤ言ってまんざらでもないよね?何コレ、イチャついてんの?この流れで"銀八せんせーはどうして高杉せんせーのお尻を知ってるの?"なんて聞けねェよ!まあ聞かないけど。なんか恐いし。つーか萎えたわ!あー腹立つぅ!マヨ先輩4分の3殺し決定ー。 「山ちゃん、悪ィ。俺最近溜まってただけかも」 「ミートゥ」 「土方ん家のエロ本でもパクリに行こうぜィ」 「ルージャ」 |