「坂田くん、アホの坂田くーん」

「山崎くんさ、マジでその呼び方続けんの?」


だって土方さんが、と困った笑顔を見せる山崎。越しに見える土方がチラチラと此方を伺っている。まあ、先日なんやかんやあって山崎に"坂田くん"と呼べって言ったけどさ。いや、土方が睨み利かせてくんのも分かったけどさ、アホは余計じゃね?誰がお前ら二人をくっ付けたと思ってんだ。いや、ごめんなさいやったのウチの高杉くんだけど。銀さんの可愛い高杉くんだけど。あの子が身体張って頑張ったおかげだよね。


「…っくそ!思い出したらイライラしてきやがった!土方死ね!」

「なに勝手なこと言ってんだ糞天パ!」

「あ、土方さん」


いつの間にか俺の隣に立っていた土方に頭を一発殴られた。瞬間移動してんじゃねェよ。


「山崎、こいつに言ったか?」

「あ、まだ…」

「何だよコソコソしやがって。イジメですかー?」


俺の問いに山崎はニンマリと笑って、土方は鬱陶しそうに眉をしかめた。


「あのさ、明後日の日曜4人で遊園地行かない?」

「……えーと、それは俺と高杉と山崎とマヨネーズの4人ですか?」

「誰がマヨネーズだ!」


バシンとまた頭を叩かれた。はいコレ2回目だよー。銀さんいつまでも覚えてるからね。帰りの靴の中に注意だからね。
ていうか行くなら高杉と2人が良いんですけど。あれ?そういや愛しの高杉くんがいない。


「なぁ、それより高杉知らねェ?」

「高杉なら職員室だ」

「え、なに土方くんストーカー!?高杉のストーカーなの!?」

「バカだろ、お前バカだろ!何で俺が高杉のストーカーすんだよ!逆にこっちが恐いわ!」

「いやしろよ!そこまで言われると逆にムカつくんですけど。逆にお前それでも男ですか?逆にキンタマ付いてんですかー?」

「キンタマ逆ってソレどんな状態ィィ!?"逆に"使いすぎだろ!つかストーカーして良いのかよ!」

「いやキンタマ逆って俺も意味分かんないから。そんな意味じゃねェし。むしろ意味なんてねェしぃ!ちなみに銀さんは高杉くんのストーカーしてましたー!」


「…テメーだったのか銀時ィ」

「あれ?」


ゴスッ
……俺今日殴られてばっかじゃね?









***


「ねね、晋助は何のお菓子持ってく?」

「堅揚げポテトとサワーズグミ」

「晋ちゃんグリーンアップル味だよね」

「遠足かよ」

「土方さんノリ悪ーい」


昼休み、さっそく遊園地の相談。山崎が楽しそうにキャッキャしている横で、高杉も心なしか楽しそうだ。うん、何ていうか女子っぽい。


「はいはーい!バナナはおやつに」

「入りません!」

「何でだよ山崎ィ!」

「だって坂田くん絶対カバンの中汚いからバナナぐちょぐちょになって臭くなっちゃうよ?」

「ちょ、山崎くんそれ何かヤラシイ」


ゴスッバキッ







***

俺は新しく増えたタンコブ(二人分はキツイ)をさすりながら日曜のことを考える。ちょっと楽しくなってきてコンビニでサワーズグミのグリーンアップル味を買った。デジカメも持ってこうかな。あれ、ハリキリすぎ?いやいや久しぶりの高杉とのデートだぞ。そりゃテンション上がるだろ!余計なマヨネーズ付きだけど。







***

「あ?あー、うん分かった。じゃあな」

「なんて?」

「銀時のやつ熱出したって」


日曜、俺はよくある楽しみすぎて遠足の当日に熱出しちゃったバカになりました。俺の琵琶湖よりも深い愛の力をもってしてもかなわない程の熱でした。もう死にたいです。


「うそ!?土方さんもだよ!」


ちなみに土方も熱出してたみたいです。アレだよ、絶対楽しみにしてたクチだよ。ダッセ!クールに決めてたくせにダッセ!…あ、俺もだった。明日学校行くの恥ずかしい。てか治るかな?治るよね?
でも高杉のことだから『もう、銀時ったらおバカさん。仕方ないからまた後日みんなで行こうね』なんて言ってたりして。


「よし、2人で行くぞ」

「えっいいの?」

「あー…、いいだろ」

「やった!晋助、グミ食べる?」

「ん」


…んなわけねェよなァ!分かってたよ。つかお前らよっぽど行きたかったんだな。くそ、2人でコーヒーカップとかメリーゴーランドとか乗るのかな。…可愛い。
そんな妄想をしながら俺は大量のイチゴ牛乳を身体に流し込みベッドの上で目を瞑った。


「お土産買ってこうね」

「ん」