私達はいつもナナシに色んな物を与えられている立場なのです。例えば、暖かい寝床から始まりご飯やもて余すほどの愛情などとたくさんのものを与えてくれるのです。もちろん、私達は与えられるだけではなくナナシのために戦ったりしますし、ナナシのよき友であり家族であります。しかし、それだけでは足りないのです
進化をしたのもナナシのお陰なのです。私一人の力ではこんなに強くなることはできないのです、それはコモルーも同じことであり彼もその事を自覚しているのです。それも含めて、日頃の感謝をナナシに伝えたいのですが私達は人間の言葉を喋る事ができません。言葉で伝えられないのなら、何かをナナシに贈りたいと思ったのです。なので、ナナシが深い眠りについた深夜にみんなと作戦会議なのです

「ナナシにいつものお礼として何かを贈りたいのです」

ヒンバスのいるタライを囲んで座り、ナナシが起きてしまわぬように小さな声で話す。いつもは眠っているはずの深夜に起きたせいか眠たいコモルーが大きなアクビをこぼした。私もいつもは起きてない時間帯なので眠たいのですが、ナナシのためと考えると自然と目が覚めてきます
ヒレを動かしばしゃり、とコモルーの顔にヒンバスが水をかけた。彼女は最初のうちはよそよそしかったのですが、最近はもうそんなことはないのです。まだナナシに対して慣れていないのかよそよそしい態度をとったりしていますが、私達とは仲良くしてくれています。それはとても嬉しいことです、できればナナシとも仲良くしてくれれば嬉しいのですが今はおいておくのです
ヒンバスに水をかけられたコモルーは、いきなりのことに驚き目を丸くした。その様子を見て私達はくすくすと笑い声を漏らす、コモルーはそっぽを向いてしまったがすぐに機嫌をなおすので放っておいて問題はない

「贈る、とは言っても私達にはお金がありませんよ?」

「そこが問題なのです。ナナシのお金を借りるわけにもいかないのですし……」

それに、お金を借りたとしてもポケモン達だけでは買いに行けませんし物ではない方がいいかもしれないのです。しかし、そうしたらどうすればいいのでしょう。花を贈ってもすぐに枯れてしまいますし旅をしている私達には不要なものなのです。食べるものもお金が必要ですし、お金を使わずに何かを贈るというのはとても難しいことなのです
どうすればいいのだろうかと二匹で悩んでいると、いじけるのに飽きたらしいコモルーが首をかしげながらも提案した

「別に無理に贈らなくてもいいんじゃねえの?」

「私はナナシに日頃の……」

「あー、あー、俺の言い方が悪かった。ナナシは俺達の事が好きだろ? だから思いっきり甘えれば良いんじゃねえの、それだけでもあいつは喜ぶだろ。馬鹿だし」

最後の言葉は聞かなかったことにして、確かにコモルーの言う通りなのかもしれないのです。自分達で言うのもあれですが、ナナシは私達の事を好いています。もちろん、私達もナナシを好いていますが積極的に甘えたりすることはありませんでした。きっと甘えたら喜んでくれるでしょうけど、もしかしたらナナシの負担になってしまうかもしれない、そう考えるとどうしても憚ってしまうのです
コモルーをじっと見ていると、そっぽを向かれたのです。きっと自分で言っておいて恥ずかしくなったからなのです、自分を好いてくれている自信があると公言したのですから。私もナナシに好かれている自信はあります、だって私はエスパーポケモン。ナナシが嬉しいのも悲しいのも楽しいのも苦しいのもすべて共有できるのです。ナナシは私達と一緒にいると嬉しいとか楽しいとかそういう感情になります、なので少なくとも嫌われてはいないのです

「確かに、コモルーの言う通りなのです」

「だろ?」

「なので明日はみんなで精一杯ナナシに甘えるのです。ヒンバスもそれでいいですか?」

「……う、あ、はい」

ヒンバスは一度捨てられたことがあるからかまだナナシを信用することができないみたいなのです。いや、信用はしているのです。ただ、一度植え付けられた恐怖はすぐに治ったりはしないのです、だからまだナナシに上手に甘えることができないのです。きっと、ヒンバスもナナシが捨てたりしないことをわかっているはずなのです。だから、じっくりと時間をかけてでもナナシに甘えられるようになればいいと思うのです

とりあえず今日はもう遅いので、会議は終了寝ることにしたのです。コモルーと一緒にタライをずるずると引きずってナナシの寝ているベッドのすぐ横まで持っていく、これでみんな一緒に寝ることができる
ひょいっと軽くジャンプしてベッドの上に飛び乗りナナシのそばで目を閉じて眠りにつく。コモルーはヒンバスのいるタライの横でクッションを引いて眠っている事でしょう。うっすらと瞼を開くと疲れたからかぐっすりと眠っているナナシの顔

「おやすみなさい」

よい夢を。きっと明日は忙しいから
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -