今日も今日とて草むらをうろうろとして修行したり木の実をとったり、短パン小僧にタツベイをけしかけてみたりして一日が終わった。毎日同じ事を繰り返している気がしなくもないが、それでも飽きたりはしない
あちらでは単調な作業のようだったレベル上げという行為も、こちらでは淡々と技を選んでボタンを押すような物とは違い頭を使って作戦を立て指示を出さなくてはならない。それは難しいことではあるが、それと同時にとても楽しいことである
たくさんバトルして疲れた体でポケモンセンターに戻る途中、まだ五歳くらいの小さな女の子とすれ違った。女の子はぱたぱたと私の横を走っていったかと思ったら、ばたん、と勢いよく転んでしまった。さすがに私も転んでしまった女の子を放っておくほど冷めた人間ではないので、大丈夫? と声をかける

「へーきだよ!」

そう言って立ち上がった女の子の膝は、擦りむいてしまったのかうっすらと血がにじんでいる。じっ、と膝をみていると少女も自分の膝の状態がどうなっているのかわかったらしい
あ、やべ。膝の状態を理解したせいか痛みがおそってきたのだろう、目に薄い涙の膜がはっている。あと少しで泣き出してしまうだろう、しかし私はどうすればいいのかわからない。このままではいたいけな少女を泣かす最低な奴になってしまう、どうする。どうするよ?
あと少しで涙の粒が落ちる、というところで鳴き声が聞こえた。ふと顔を上げると、ふらふらと千鳥足のまま少女に近づいてくるパッチールがいた

「ちるちる!」

少女はパッチールの姿を見ると膝の痛みを忘れたのか、駆け寄っていきぎゅうと抱きしめた。ちるちると少女に呼ばれていたパッチールは、抱きつかれたままへらへらと笑っている
どうやらあのパッチールは少女を迎えに来たらしい、少女と手を繋ぐと何処かへ歩いていった。私もポケモンセンターに行こうと人混みに紛れようとすると、後ろから声をかけられた

「おねーさん、ありがとお!」

振り向くとぶんぶんと勢いよく手を振っている膝が痛々しい少女と、へらへらと笑いながら少女と一緒に手を振っているパッチールがいた。私は口元に笑みを浮かべながら、手を振り替えした。少女たちは私が手を振っているのを確認してから人混みに紛れていった
器用に人を避けながらポケモンセンターに向かって再び歩き始める。そういえばあの子、パッチールにニックネームつけてたな……。今までつけてる人いなくて気づかなかったけど、やっぱりニックネームをつける文化はあるんだな
ぶつぶつと何か呟き、腕時計をみながら早歩きしているサラリーマン風の男の横をぶつからないように通り抜ける。ニックネームか、ゲームではつけてたけどな……全部厨二臭のするやつだったけど。やっぱり、あの子たちにもつけた方がいいのかな? でも、私センス無いしな……。ニックネームじゃなくても俺たちの心は繋がってるんだぜ! みたいな感じでつけなくてもいいかな
たとえニックネームが無くても私があの子たちを大切にしているのにはかわりは無いしね。もしもあの子たちがほしがったら、そうしたらあげようか
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