ユウリちゃんと別れる前に連絡先を交換できた。めちゃくちゃ嬉しい。ポケギアの電話帳がこんなに埋まるとは購入した当初は思ってもいなかった。まあ、その半数以上は繋がらない番号のため生きている番号はふたつしかない。しかもそのうちのひとつは着信拒否してるし、実質ユウリちゃんのみだ。
画面に表示される番号を見るたびににやけてしまう。あんないい子と出会えるとは、やっぱり旅はいいなぁ。この番号もいずれは繋がらなくなるだろうけど、それでも思い出になるし。

連絡先を交換したときに教えてもらったのだが、あの森は立ち入り禁止だそうだ。中に大事なものがあるから、ということを詳細はどうにか伏せようとしながら話すユウリちゃんは可愛らしかった。
半分くらいは内容話してしまっていたけれど、たぶん本人は気づいていないので知らないふりをしておく。
とりあえず森には用事がなくなってしまったので、他のところを目指すことにした。タウンマップを確認するとこの町から近いブラッシータウンに駅があり、そこからワイルドエリアに行ける列車が出ているようだ。
基本的に空を飛んで移動していたから列車に乗る機会が無かったので乗ってみたいような気もするが、どうせ時間はあるのだから線路沿いを歩いて移動してみるのもいいかもしれない。ボーマンダはいい顔をしないだろうが。
そうとなったらブラッシータウンで準備しようかな。ここからだと寄り道しようとすれば出来るけど一本道だ、そう時間はかからないだろう。そう思っていた。

「気づいたらリザードンとはぐれてしまっていてな、助かったぜ!」

ぺかーっと眩しいくらいの笑みを浮かべるのは元チャンピオン。1日に2度のチャンピオン。過剰摂取で死ぬかもしれない。
草むらで進んでは戻って進んでは戻ってを繰り返している人がいるなあと離れたところで見ていたのだが、こちらに気づきぶんぶんと大きく手を振られてしまったので反応せざるを得ない。周囲には私しかいなかったし、これで無視する勇気はなかった。
探し物を手伝ってほしいのかと思い近づいていくと、何やら道に迷ったとのこと。なんで? 一本道なのにさすがにそれはないだろう、たしかに方向音痴という話は聞いたことがあったが誇張しすぎではないか。そう言う勇気はなかったけど。
ダンデさんも同じくブラッシータウンに向かっているとのことなので、一緒に行動することにしたのだが気づいたことがある。草むらにポケモンがいるのに気が付くとそちらへと向かい道から逸れ、さらにそこから何か興味を惹かれるようなものがあるとそちらへ。それを繰り返していくと、正しい道から大きく外れており自分が今どこにいるのかわからなくなる。
なるほどこうやって人は迷うんだな。私よりも年上であろう元チャンピオン相手に思うことではないのだろうが、まるで子供のようだ。

「ダンデさん、そっちじゃないですよ!」
「ああ、すまない!……あのココガラが良い目つきをしていてな」

そう言いながら照れくさそうにしているが、視線はまだココガラに注がれたままでいる。たしかに他のココガラと比べてきりっとしている……ような気がする。気のせいかもしれない。自分のポケモンなら些細な変化でもわかるのだが、野生のポケモンとなるとさっぱりだ。
じっと二人で見ていると人間に見られているのが嫌になったのか、ココガラはひとつ鳴いてから飛び去ってしまった。ココガラには悪いが、そのおかげでようやく進める。

「行っちゃいましたね」
「そうだな。オレたちも進もう!」
「そっちじゃないです!」

正反対の方向を進もうとしたので思わず腕を掴んでしまったが気にしていない様子だ。ワイルドエリアで遭難していそう、と思ったがそれ以前に普通の道や町でも遭難できそう。さすがにそれはないか?

「普段はどうしてるんですか?」
「いつもはリザードンに案内してもらってるんだ!」

そう言いながら満面の笑みを浮かべるのを見ると何も言えなくなる。良かったですね、としか返せない。
しかしリザードンきっと大変だろうな……。今もダンデさんを探しているだろうし、早く会わせてあげたい。大好きなトレーナーに会えないうえ行方不明となれば、精神的負担も不安も大きいだろう。いつも案内してくれているということは、きっと責任感だってあるはずだ。
半分くらい引っ張るようにして歩いているが、失礼だと怒りも振り払いもせずに受け入れてくれるダンデさんは優しい。

「早く会いたいですね」
「ああ、大切な相棒なんだ。君にもそんなポケモンがいるだろう?」
「そうですね……あ、もう着きますよ」

道の先にちいさな赤い影が見えた。きっとあれはリザードンだ。
遠くからでもわかるくらい、尻尾はだらりと地面を這うように垂れており項垂れてもいる。いつも自分が案内をしている方向音痴のトレーナーとはぐれてしまったのだから、あれぐらいしょんぼりしていてもおかしくはない。

「リザードン!」

ダンデさんが声を張り上げると、リザードンの耳に届いたのだろう。大きな翼をその場で何度か羽ばたかせたかと思ったら、砂ぼこりをたてながらダンデさん目掛けて飛んできた。
その勢いに思わず距離をとってしまったが、こちらの様子など目に入っていないようで突進のような勢いのまま突っ込んできたリザードンを笑顔で受け止めハグしている。
うわ、すごい。ポケモンが勢いよく抱きついてくることはよくあるけど、リザードンなみの大きさであの勢いをよく受け止められるなぁ。長い付き合いならお互いにどこまでが大丈夫かを理解し、加減しているのかもしれない。

とりあえず私はもう必要なさそうだから先に行こうかな。二人から離れようと足を動かすと、ざりと砂と靴が擦れあう音がした。それに反応してダンデさんがこちらに視線を向ける。

「ありがとう! キミのおかげで助かった!」

満面の笑みを浮かべるダンデさんは目をそらしたくなるほど眩しかった。
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