ナナシさん。たぶんキバナさんが探している人。
怒らせてしまったから謝りたくて探していると、写真付きでメッセージが届いているのを直前に読んでいた。そのあとにたまたまポケモンに襲われている……じゃなくて遊んでいるのを見かけて声をかけた。声をかけたというか、びっくりしてピッピ人形投げちゃったんだけど。
本当は、キバナさんが探していたと伝えなければいけなかったし、伝えるつもりだった。
ただ、他の地方のポケモンが興味深くて……伝え忘れたと気づいたのはナナシさんがボーマンダの背に乗って去ってしまったあとでどうしようもなかった。アーマーガアに乗せてもらえば追いつけたかもしれない。私のアーマーガアだってすごいんだから!

「でもなあ」

でも、引っかかることがある。キバナさんは喧嘩をしたと言っていたけど、ナナシさんに怒っている様子は見られなかった。そりゃ人と喧嘩したからってずっと怒っているわけじゃないけど、なんというか、不思議な雰囲気だった。
全部を諦めているというか、自分だけ輪から外れていると思っているというか。今までにいろんな人に会ってきたけど、あまり記憶にないタイプ。性格が悪いとか、嫌いとかそういう意味じゃないけど!
どちらにせよ、不通はちょっと喧嘩してるからって友達がいないとか言うとはあまり思えない。少ないとか喧嘩してるとかならわかるけど、喧嘩したからってその友達のなかからキバナさんのこと外しちゃうのかな。人それぞれ、と言ったらそれまでなんだろうけどどうしても引っ掛かってしまう。
それにキバナさんから送られてきたあの写真。最近撮ったやつと言っていたけど、ボーマンダの横に立って笑ってるあの表情。あんなに幸せそうな笑顔を向ける相手を、そんな簡単に無かったことにしてしまえるのかな。
そんなことを考えていたからだろうか、ボールで遊んでいたはずのエースバーンがいつの間にか近寄ってきていて、心配そうにこちらを見上げている。何でもないよ! と伝えても首をかしげるだけで離れようとはしない。いつもだったらすぐにボール遊びを再開するのに。
優しい子だから、私が悩んでいることを見抜いて離れないのかもしれない。このままではポケモンたちに迷惑をかけてしまう。それに、喧嘩別れは寂しすぎる。進む道が違えただけでも寂しいのに。

「よし、遊ぼう!」

エースバーンにそう言うと、先ほどまでとはちがってぱあっと満面の笑みを浮かべた。そしてボールを蹴りながら早く早くと手まねいてくる。
連絡先は交換したし、次はホップも誘っていいと言ってくれた。ホップしか誘っちゃダメとは言われてないから、たぶんキバナさんも誘って良いはず。そうしたらきっと二人で話ができるし、仲直りもできれば良いなぁ。
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -