その言葉の意味を理解できないほど子供でもない。自衛のため、というよりもキバナさんのために出ていった方が良さそうだと考えて、とりあえず今まで通りのポケセン暮らしに変えることにした。荷物はできるだけ片付けたけど、もしかしたら見落としがあるかもしれない。まあ、処分してくれるだろうから大丈夫だろう。
キバナさんが抱いている感情は一時的な気の迷いから生まれるものだ。面倒を見なければならない、と思っているのを恋愛感情と勘違いしているのもあるかもしれない。
どちらにせよ、それは一時的なものであってそれに惑わされるようなことがあってはいけないのだ。
いつもより長く空白期間を作れば冷静になれるだろう。そうしたらきっと、何故私を好いていたのかと疑問に思えるはずだ。部屋に他人を置き、見知らぬ荷物が増えていくことに違和感を、嫌悪感を抱くことができる。
こちらが一方的に好いているだけで、本当に好かれているんだと勘違いしてはいけない。いけないんだ。自分の思いは報われるのだと調子に乗って浮かれるんじゃねえぞ。
私にはこの子達しかいないんだから。

「何処に行こうか」

空を飛ぶボーマンダの背に乗りながらそう問いかけると、決めていなかったのかと文句を言いたげな鳴き方をされた。飛ぶときに何処に行くのか考えていなかったので仕方ない。
飛んでとしか言わなかったもんな、きっと彼自身もどこに向かっているのかわからずに飛んでいたのだろう。だいぶ遠くまで来てしまった。

「とりあえずあの森に行ってみようか」

眼下に広がる鬱蒼とした森を指差すと、ボーマンダはひとつ吠えてからぐんと高度を下げる。このときにかかる衝撃に慣れるのには時間がかかったが良い思い出だ。最初の頃はなさけない悲鳴ばかりあげていた。今では風を切る感覚も、身体に受ける圧も寒さも慣れたものだ。

「いろんなところ行ったもんね」

その行き先どこでも長居はできなかったけど。
そんなことを考えていたら、ボーマンダは砂ぼこりをたてながら森の前に降り立った。上から見たときはわからなかったが、森はちゃんと管理されているようで立ち入れないように柵がたっている。
さすがにこれを乗り越えて入ろうとは思えない、ちょっと降りる場所を間違えたかもしれない。
森の近くに町が見えたので、歩いてそこまで行けば良いか。とりあえずボーマンダにボールへ戻るように指示をすると、不満げに声をあげた。

「ごめんね」

どうしてもこの地方にいないポケモンであるボーマンダは目立ってしまう。その地方にいないポケモンを連れていて、良いことも悪いことも経験した。
普通に興味を抱いてくれるだけなら良いのだけど、君はもしかしてあれかな? という人には見られたくない。何度経験しても嫌なものだし、なんというか放っておいてほしい。私が相手に恋愛的な好意を抱くことはあっても、相手もそうなるわけではないのだから。そうは言っても、いるだけで邪魔だから無理なんだろうけど。

「ぎゃうぎゃう」
「ごめんって」

まだ戻りたくない、空を飛びたいボーマンダはどすどすと軽くだが頭突きを繰り出してくる。かわいい。ボーマンダになったら無くなるかなと思ったがそんなことはなく、加減をしながら頭突きをしてくるようになった。
しかし襲われているようにも見えるようで、初めて見る人にはよく驚かれる。そういえばキバナさんも、最初見たときは他の地方のドラゴンへの興奮も消えるほど驚いて止めてきたなぁ……。うん、考えるのはやめよう。思った以上に寂しくなってきた。
考えないようにするためにも、頭突きをしてくるボーマンダにじゃれついていると、何処からか飛んできたピッピ人形が足元を転がった。何でピッピ人形? ボーマンダと首をかしげていると叫び声が聞こえた。

「逃げてください!」

あっあー! ごめんなさい! 遊んでるだけなんです!
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