弱らせてボールを投げて捕まえる。毒矢麻痺などの状態異常にすると捕まえやすくなる。ボールを変えることによって捕まえやすさが変わってくる。
基礎的なことはゲームでの知識があるからと慢心していた。
クリスからそれらのことを教わったとき、素直に頷きながらも知ってる知ってると軽く流していた。しかし、いざ実践となるとそう簡単にはいかなかった。

「当たらない……」

「当たらないね……」

バトルはこなせたが弱ったポケモンにボールを投げるときが問題だった。
何度投げてもボールがぶつからない。まったく動かないのならぶつけることができたのだが、弱っていても動くポケモンもいる。そうなると相手がどのように動くのか予想し、予想したその先にうまくボールを投げなくてはならない。
相手の足の動き、視線を見てと言われたが見てもわからない。相手も個性があるのか視線の先に真っ直ぐ逃げるものもいれば、フェイントをかけて違う方向に逃げたりこちらに向かってくるものもいる。
何度やっても動く相手を捕まえられない私にクリスは苦笑を浮かべた。

「こればっかりは経験だから、仕方ないね」

仕方ないね。



基礎は覚えたからあとは相手を麻痺させて動けなくしてから捕まえることにしようということで話は纏まった。
クリスはやはりと言うべきか、峰打ちを勧めてくる。峰打ちがいいよ、特にカラカラ。カラカラ! でもハッサムもいいよとカラカラのごり押しをされながら森を抜けてようやくポケモンセンターにたどり着いた。
部屋の予約とポケモンの回復をお願いしてからクリスとともに備え付けのパソコンを覗き込む。ボックスとは無縁の生活をしていたから存在は知っていたが使うところを見るのははじめてだ。
クリスは手慣れた様子で操作をし先程捕まえたナゾノクサを転送していた。そしてテレビ電話を起動し博士となにやら話をしている。
さすがに話を聞くわけには行かないと離れた場所に移ったのだが、クリスの悲鳴に近づくしかなかった。

「どうしたの? 大丈夫?」

通話は終わったようで、画面は暗くなっている。クリスは私の言葉に答えず頭を抱え、俯いたままだ。何があったのだろうか。

「ううー、どうしよう……。逃げ出したポケモンがいるんだって」

「えっ」

それは普通に、大問題じゃないだろうか。
ようやく顔をあげたクリスが発した言葉に驚くことしかできない。顔色が悪いのも納得してしまう。
どうしようと慌てふためいているクリスに、落ち着くようにと声をかけるが聞こえていないようだ。独り言なのだろうが、他者にも聞こえるような声で早口で言葉を紡いでいる。

「どうしよう、とりあえず研究所と近くの草むらを探してそこにいなかったら隣の町まで行って。野生のポケモンに襲われてたら! でも戦ったことはあるだろうし」

「とりあえず行ったら?」

「その通りね」

まるで、その言葉を待っていたかのような反応だ。手早く荷物をまとめると、最後にひとつと言いながら指差される。

「いい? あなたのポケモンは強いけど、それでも負けることはあるのだからね」

「……肝に命じておきます」

「よろしい」

まるで先生のようだ。
クリスはそれだけ言うと、またねと手をふりながら走り去っていった。扉から出ていったところまでを見送ると、思わずため息が出てしまう。
クリスのあの言葉は、種族値の高さのことを言っているのだろうか。いや、でも種族値なんて言葉があるのかはわからない。ただ単純に気を抜くな慢心するなということなのかもしれないが。
種族値の高さにはたしかに、自覚はある。自然と集まったと言えば言い訳になるが、意図的に集めたと言えば嘘になるから難しい。
とりあえず、クリスの言うとおり負けることもあるのだから、そうならないように努力は怠らないようにしないと。

「がんばらなきゃ」

とりあえず回復が終わったら観光に行こうかな。
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