どうせウバメの森を通っていくのだからと再び祠まで寄り道してみたが相変わらず祠からはセレビィも何も現れない……当たり前だが。ピカチュウが祠の扉をノックしているが何かが現れるような気配はなくつまらなそうに祠から離れていく。

「セレビィが現れるわけないじゃない」

「ピーカ」

同意を得たことだし進もうか。はじめて森を歩くからか好奇心旺盛なピカチュウはとても楽しそうでたまに振り返り私がついてきているのを確認するとどんどん進んでいってしまう。
稲妻の形をした尻尾を追いかけるとピカチュウが草むらにいるビードルを見ていた。ビードルはじっと自分のことを見つめてくるカチュウのことなんて眼中にない様子で気にもとめずに餌なのであろう葉を食べ続けている。
ここまで相手が自分に興味を抱いてがないとコンタクトをとれないようでピカチュウは戻ってくるとそのまま肩まで飛び乗った。これをやるとサトシの気分を味わえてとても楽しい、ただし少なからず肩に衝撃があるので鍛えないといけない気持ちにもなる。
じゃあ行こうかと再び歩き始めると何故か食べるのを止めて私たちについて来た。立ち止まるとビードルも止まり歩くと後ろをついてくる、何がしたいのだろうか。ピカチュウも気になるようでちらちらと時折振り向いてはビードルがついてきているのかを確認している。
仕方ないのでそのまま進んでいくと分かれ道が現れた。右か左、この森の地形なんて覚えてないしゲームとも変わっているだろうからどちらを選んでも問題ないだろう。

「ピカチュウはどっちがいい?」

「ピー、ピカッチュ」

悩んだそぶりを見せたが右を指したのでそれに従おうとすると足首に何かが巻き付く感触。下を向くと白い糸が巻き付いており、それは後ろからついてきていたビードルが吐き出した糸だった。私を進ませないように巻き付けた糸をぐいぐいと引っ張っている。

「……こっちじゃないの?」

その問いかけに一度動きを止めたビードルは頷き再び糸を引っ張り始める。ピカチュウと目を合わせるも首をかしげ、同じポケモン同士でも何のためにしているのかわからないようだった。道案内のつもりなんだろうか、大人しくビードルが引っ張る方向に進むことにした。


***

これはちょっとおかしいんじゃないか。途中までは普通の道だったが徐々に獣道にそして獣も通っていなそうな道とは言えない物へと変わっていった。引き返すには遅すぎたと今更ながら背の高い草を踏み倒しながら後悔してしまう。
私とは対称的にピカチュウは楽しくなってきたのか目をきらきらと輝かせて時折ピカピカ言って私を励ましてくれている。そして相変わらずビードルは糸を引っ張り私がついてきているのをちらちらと確認しながら進んでいた。
どれくらい進んだのかわからないが、そろそろ何処かにたどり着いても良いんじゃないかと思い始めた頃今までとは違い開けたところに出た。そこは小さな広場になっており中心に大きな木が一本たっている。ビードルは巻き付けていた糸を解くと脇見もせずに木に向かっていった、と思うとこちらを向き私を呼ぶように鳴き声をあげた。
何かあるんだろうか、そう思って近づいたときだった。

「っ!」

声をあげなかったのは幸運なのかもしれない。複数の甲高い羽音、脳裏によぎったのは蜂の大群という言葉だった。そしてその言葉は目の前に現れた。
木から出てきたのはスピアー、それも一匹や二匹ではなく何故一本の木にそんなに集まっていたんだと聞きたくなるような数であった。まさかそんな、罠だったのか。ビードルに視線を向けるも無邪気に体をくねらせているだけであった。
ピカチュウは肩から飛び下りいつでも攻撃できるように構えている。タイプ相性はこちらが有利だがこの数を倒しきれるのか? 他の子も先にだしておいた方がいいんじゃないかとさまざまな考えが頭の中をぐるぐると駆け巡る。そんななか一匹のスピアーがこちらに近づいてきた。両羽での巨大な槍のような針が鋭く光る。
今はまだ相手は敵意を持っているようには見えないがいつこちらを攻撃してくるかわからない、そんな緊張感のなか何かが茂みから飛び出してきた。

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