ジム戦は思っていたよりもあっさりと終わった。元々のタイプ相性がよかったと言うこともあるが、はりきったコモルーが大活躍したと言うのもあり苦戦を強いられることもなくバッジを手にすることができた。足元にいるコモルーが不完全燃焼なのかすこし不満そうにしているくらいだ。
コモルーを宥めながらジムリーダーのツクシからバッジを受け取るが、何故か首をかしげられた。どうかしたのかと尋ねると慌てて首を左右にふられる。

「あ、いや! 話に聞いていた人とは違うと思っただけなんだ」

それは、本人を目の前にして言ってもいいことなんだろうか。どうせ菱豆さんが私のことなんか言ってたんだろうな。これ以上何か聞くとこちらの精神衛生上良くないので聞くことはしない、タイプ相性考えてないとか戦略が未熟だとか媚びてくるとか言われてるだけだろうし。
あ、そうですかで流そうとしたが何故かツクシが話始める。

「考えのない人って言われてたから、ポケモンたちにひどいことする人なんだって思ってて…」

思ってたよりひどいことを言われてる気がするのは気のせいだろうか。わざわざ私に言わなくてもいいことじゃないか可愛い顔してこの野郎…実は性格悪いな?
反応できず黙ったしまった私に、ツクシは傷つけたと思ったのか慌ててフォローしてくれる。君のガーディはこれからもっと強くなるよとか、硬い殻をもつコモルーでストライクの攻撃を防ぐのはいいと思うよとか今回の戦いでのハイライトを伝えてくれた。
自分のポケモンを誉められるのは嬉しい、嬉しいが感謝の言葉を伝えつつも頬がひきつってしまうのは仕方のないことだと思う。

「だから、今回のバトルでわかったよ! 君はポケモンが好きなんだね」

「……誤解が解けたのならよかったです」

本当はちょっと色々と良くないところはあるが仕方のないこと。私は今も昔もポケモンが好きなんですけど? とか喧嘩腰で言われても彼も困るだろうから黙っておこう。
ツクシはコモルーの前にしゃがむとその硬い殻をそっと撫で始める。コモルーはすこし戸惑って僅かに体を動かすようなそぶりを見せていたが、大人しくその手を受け入れた。その様子を見てさすがジムリーダーだと感心しつつも、私もこのくらい野生のポケモンにもなつかれたら楽しくてしかたがないだろうなと羨ましくも思う。

「いくら信頼してる人でも、その言葉を信じこんではいけないんだね」

本当にね、とは言いたいが下を向いているため表情は見えないがその背中は落ち込んでいるように見えたので口を閉じておく。追い討ちをかけたいわけでもなければ、偉そうなことを言えるような人間でもない。

「うん、お互いに精進しよう!」

勢いよく立ち上がったツクシは笑みを浮かべながらそう言った。その瞬間にコモルーが驚いたのかびくっと体を震わせていたのは見なかったことにしよう、あとが怖い。

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