明日のジム戦の予約も行ったので観光でもしてみようかと思い町を回ってみたが、想像以上に何もなかった。何もない、と言うのは言い過ぎかも知れないが目立つものはガンテツさんの家とポケモンジム、それくらいだった。ゲームのマップと違って店や民間もあるがそれほど発展しているわけでもなくちょっと田舎な町といったところだろうか。
近くに都会みたいなところがあるからちょうどいいのかなと思いながら散策を続ける。ピカチュウは早々に飽きたようで私の肩に乗りながら大きなあくびをしている。
レベル上げでもしたいところだが草むらに行くにはヤドンの井戸の前を通らないといけないし、だからと言ってウバメの森は……うん。

「なんでいるのかなあ……」

思わずぼやいてしまう。
ウバメの森の前にシルバーが立っている。さすがに何もせずに突っ立っているわけではなく、ニューラをボールからだしたまま図鑑をいじっている。図鑑の機能を調べてるのか、森のことを調べてるのかはどうでもいい。とりあえず森に行きたいので退いてほしい。
つい先程、ヤドンの井戸の前で助けてもらったばかりのこのタイミングで会うのはちょっと気まずい。またお前か、と私だったら思う。それに何度も会ってることが菱豆さんに知られたらそれこそ面倒なことになる。
向こうはまだ気づいていないし大人しく帰ろうか。今回のジムは虫タイプだしガーディがいる、それに毒タイプにはキルリアだっているしそもそもコモルーとミロカロスをだせばレベル差で殴ってどうにでもなる。
そう思いシルバーから離れるように歩こうとするとくいとスカートを誰かが後ろから引っ張る。こんな低い位置から一体誰がと振り向くとそこにはニューラが!
ニューラの後ろにはこちらを見ているシルバーが!

「ついてこい」

なんでやねん。


***

抵抗してみてものの結局は無駄で、渋々シルバーについていった先はウバメの森にある祠だった。シルバーはこうやって人を連れて行動することってないと思っていたのたがそうでもないのだろうか? いや、それはおかしいだろ。彼はそんなことをするような性格ではないはずだ、たぶん。
シルバーは祠の周りに何か探しているようだが何も見つからない。この祠はセレビィの住む祠なんだろうなと思いつつも口には出さない。セレビィが出てくると言う伝説があった気がしないでもないが、なかったときにどう言い訳すればいいのかわからない。
ピカチュウは私の肩から降りて遠巻きにこちらの様子を見ている野生のポケモンを見ている。まれにピカチュウの頬にある電気袋からぱちりと音がなるのは警戒しているからだろうか。
先程外に出したコモルーは一人で散歩に行った。賢いから遠くにはいかないだろうし何かあったら読んでねと声をかけたら素直に頷いていたから大丈夫だろう。それにしても私は何故連れてこられたのだろうか、私がいる意味が見つからない。

「おい」

声をかけられて振り向くと祠の横に立つシルバーに来いと言われる。ピカチュウと共に大人しく近づいていくとシルバーに祠の前に立たされたが特に何かが起こるわでもなく、理不尽に舌打ちされるのであった。

「なんだ、あいつくだらないこと言いやがって……」

「あいつって……菱豆さんですか?」

もしかしたらそうかななんて軽い気持ちで尋ねると大当たり、本当に菱豆さんでちょっと面白かった。いや、面白くない。私が傍観夢における逆ハー的な立ち位置だと思ってるから、何かしらのイベントが発生すると思ってるのかな? そんなこと起こるはずもないのに。
今後もこんな感じにちょっかい出されるのは憂鬱だな、私の事を観察しているとわかっているとさらに。気にしなければいいとわかっているけど、どうしても気になってしまう。

「お前をここに連れてくれば伝説のポケモン……セレビィが現れると言っていたんだが、くだらない真似しやがって」

「……よくそんなこと信じましたね」

普通だったら信じないだろう、ましてやあのシルバーだ。何故信じたのか理解できない。
祠からシルバーに視線を動かすとすでに興味を失ったのか再び図鑑を手にして何か操作している。図鑑ってそんなにたくさんいじれるほどの機能あったっけ……。ニューラは何も反応も示さなかった祠に対して、シルバーとは違い興味があるのか爪の先でつついてみたり扉を開けようもしたりしている。ピカチュウも地面へと飛び降りニューラの隣に立ち祠を観察していてとても愛らしい。

「自信ありげに言ってくるものだったからな、信憑性は無いが試してみただけだ」

「そうだったんですか」

「他にも言っていたが……試す価値は無さそうだな」

最初から信じないで試さなくても良かったんじゃないだろうか……。いや、可能性が僅かにあるのならやってみるものなのだろうか。
何の変化も示さない祠に飽きたピカチュウは何やらニューラと話し始めた。一方的にピカチュウがピカピカ言うばかりで、ニューラはただ

「ぎゃう」

「あ、コモルーお帰り」

戻ってきたコモルーの頭を撫でるといつものように軽く足に頭突きをしてくる。そのままぐりぐりと頭をすり付けてけるので上機嫌だと判断する。何か面白いものでも見つけたのかな?

「……お前は」

「え?」

コモルーからシルバーに視線を移すといつの間にかこちらを見ていた。

「いや、何でもない」

何か言おうとしたがやめてしまった。またお前は弱いとか言うつもりだったのだろうか?

「まだここにいるつもりなのか?」

「すこし周りを見てから帰ろうと思います」

「そうか、ならロケット団に気を付けることだな」

なんだかシルバーに会うたびにロケット団に気を付けるように言われている気がする。

「……俺も毎回お前を助けられるとは限らない」

えっ、ええー。
私がシルバーの発言に呆然としている間にニューラを連れて去ってしまった。ニューラと話していたピカチュウは傍まで戻ってくると、私の顔を見て首をかしげていた。

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