ジム戦も無事に終わり次の町であるヒワダタウンに向かう。
そこにもジムがあり、虫タイプのポケモン使いであるツクシのジムだ。虫タイプならガーディやピカチュウが活躍するだろうし、どうにかなるだろう。タイプ相性考えるとどうしてもそうなってしまうから仕方がない。タイプ相性を考えずに戦って無茶をさせたくない。
それに、下手な戦いかたをすると菱豆さんがうるさそうっていうのもある。実際に面と向かって言われたことはないけど、視線がうるさいことが多々あるし推測でしかないが彼女の性格的に考えるとあり得なくはないし。よく知らない人に対して失礼だが、本当にそんな感じがする。
繋がりの洞窟を抜けて、ヒワダタウンへの道のりを歩いていくと見たことのある後ろ姿があった。ロケット団、真っ昼間に堂々とヤドンの尻尾を切ると言う目立つような活動をするのはどうなのか。
足元にいたキルリアがこっそりと私の後ろに隠れながら、ちらちらと彼らの様子をうかがっている。そんなキルリアの頭を撫でながらどうしようかと考える。
彼らの目的はヤドンの井戸だ。そして私の目的地であるヒワダタウンに行くにはその前を通る必要がある。ロケット団と言えどもさすがにただの通行人に対して急に何かしてくることはないだろう、あくまでも彼らはヤドンの尻尾を切りたいだけなのだし……あれ、そうなるとかわいそうなヤドンを私は無視して進まないといけないのか?
ここから見る限りだがヤドンの姿は見受けられない。井戸のなかでおこなっているのか、またはまだ何もしていないか。ヤドンを助けたいという気持ちはあるが、ここで目立つようなことをしたくないという気持ちもある。なんといっても菱豆さんがめんどくさい。
しかもヤドンの尻尾を切っているかがわからないんだよね、今のところはただ井戸の近くに立っているだけにしか見えないし。
どうしようかと悩んでいたら、それをキャッチしたキルリアも一緒に悩み始めた。手を顎の下にあてて悩んでます、というポーズをとるその姿がかわいらしい。ふふ、和んだ。
よし、決めた。普通に視線をそらしながらこそこそバレないように行こう。完璧だ。
足元のキルリアを抱き上げて、意を決して足を進める。

「おい、何をしている」

死ぬかと思った。驚きすぎて声もでなかった。
背後から肩に置かれた手の先を振り向くとシルバーがいた。ロケット団でなくて良かったと安堵するべきか、それともロケット団の方が良かったと思うべきか。
言葉が出てこない私の代わりにキルリアがロケット団を指す。シルバーはキルリアが示した先を見ると、忌々しげに目を細めながら肩から手をはずし横に立つ。

「……関わるなと言っただろ」

そんなことを言われましても、と言いたいところだがそんなことを言えるはずもなく。

「ただ通りたかっただけだから、大丈夫かと思ったので」

「通行人のポケモンを奪うような奴らが見逃すとでも思ってるのか?」

たしかにこの世界のロケット団ってけっこう過激だと思う。人に対して、というか私に対してラッタでトレーナーにダイレクトアタック食らわせたし。そう考えるとシルバーの言う通りそんな易々と通らせてくれるとは思えない。

「たしかにそうですね」

そうしたらバトルするしかないのか、まあこちらとしてはかまわない。ただ、菱豆さんがめんどくさそうだなと言うだけだ。この場面を見られているとは限らないが、見ていなくても話を聞いたとかなんとかでにやにやされそうな気がする。ロケット団に食って掛かるだけでも面白いことだが、シルバーがいる時点で彼女にとってはさらに面白いことだろうし。
そうしたら一人で戦うかな、シルバーとタッグバトルできる気がしない……とういうか彼もする気はないだろうし。
じゃあ気づかれたら戦うかなと歩みを進めようとすると肩に手が乗り強い力で止められる。

「何をしている」

「え、普通に進もうかと思いまして」

「は?」

何故ため息を吐かれないといけないのか。腕のなかのキルリアも不服そうな表情を浮かべている。キルリアはひょいと身軽に地面に降りると私の横に立ちシルバーの様子を見ている。何かあったら攻撃できるようにか警戒しているようだ。
通るためには戦わないといけないと思うのは仕方がないと思う。ヒワダタウンに行きたいし、そのためにはここの道を通るしかないし。そもそも素通りできないと言ったのは彼なのだからその反応はおかしいだろう。

「ヒワダタウンに行くにはあの道を通るしかないので」

再びため息。

「ちっ」

しかも舌打ちまで。

「おい、行くぞ」

「えっ」

シルバーに腕を掴まれ引きずられるように歩き始める。その後ろからキルリアが慌てたように追いかけてくる。キルリアが攻撃しないということはシルバーに悪意がないということだ。そのまま大人しく腕を掴まれたまま彼の横で歩く。
なんだ、人に戦うのかといっておきながら結局戦うんじゃないか。そう思っていたが違った。
堂々とロケット団の目の前を歩いていくと、当たり前だが彼らは私たちに気づき声をかけてきた。

「あ、おい! そこのガキ!」

その言葉のあとに何か続きはずだったのだろう、しかしロケット団は黙ってしまった。シルバーがロケット団を睨んだ、ただそれだけのことだったのに怯んでいる。

「……何だ?」

「あ、いや、何でもないっす……」

ロケット団弱い!
この地方では見かけないキルリアに対しても、シルバーがいるからか視界にはいっても何も言わない。いや、言いたいけど言えないのだろう。
私たちからあからさまに視線をそらすロケット団の前を通りすぎ、ヒワダタウンにつくと私の腕から手を離した。

「お前は弱い」

なんだ急に。反論を口にする前にシルバーは続ける。

「あいつらは人を見て判断している。例えお前のポケモンが強くてもお前自身が弱ければ意味がない、危険な真似はするな」

たしかに今のロケット団の反応を見る限り、人を見て判断していた。私一人だったらシルバーのように素通りできないだろう。さすがにポケモンを奪われることはないと思うがバトルをするのは間違いない。別にバトルしてもいいけど。
足元のキルリアを見るとシルバーの言葉に頷いていた。私が弱い、という部分ではなく危険な真似はするなのところに頷いているのだと思いたい。
シルバーは自分の言いたいのとだけを言うと去っていった、私の反論を聞かずに。私も言いたいことはあったが仕方がない、ようやくヒワダタウンについたのだからポケセンに行こうか。

「色々考えないとだね、キルリア」

私の言葉にキルリアは大きく頷いた。


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