まじ菱豆さんとかかんけーねーし大丈夫! オーライ!テンション、というより思考がちょっと危ない人だか細かいことは気にしない。あのままちょっと戯れて、ご飯を食べてからすぐにジムに向かった。
忘れていたがジムは毎日やっているとは限らないし、やっていても予約をしていなかったら他にチャレンジャーがいたら終わるまで待つしかない。それに気づいたのがジムの受付に行ったときで「ご予約はされてますか?」と言われたときだった。
受付で間抜け面を晒す私に苦笑を浮かべながらも「当日エントリーもできますし、今の時間帯なら空いてますよ。いかがですか?」と言ってくれた受付のお姉さんはマジ天使。頭を下げてお願いした。
そんなわけで無事ジムに挑戦できるようになった私は、受付のお姉さんに感謝の言葉を残し華麗にジムトレーナーを倒していた。もしかしたらリメイク版のように命がけで進まなくてはならないのかと思ったが、そんなことはなくて安心した。頂上を目指すことにはかわりはないが、上に行くのは階段を使うしトレーナーと戦う場所はちゃんと広い。
あんな柱一本しかないような狭い場所で戦わなくてすんで、正直ほっとしている。そのお陰か、今のところ大きな怪我もなく順調に進んでいた。ただガーディが空から地にめがけて電光石火で襲いかかってくるポッポに翻弄され、ダメージを逐負ったがまだ大丈夫だ。

「がんばってね、ガーディ」

「わん!」

元気よく、尻尾を左右に激しくふりながら答えるガーディの頭を撫で、次のフロアへと続く階段を上る。後ろを追いかけてくるガーディがかわいくて、緊張していたが和んだ。次、勝てたらジムリーダーに挑戦できる。階段を上りきった先にいたジムトレーナーがにやりと笑みを浮かべた。

「よくここまで来たな、だが、ハヤト様に挑むには早すぎるぜ!」

そう言ってトレーナーはボールを空に向けて投げ、オニスズメを繰り出した。序盤にあるジムだから仕方ないが、ポッポとオニスズメばかり出てくる。まあ、いきなりピジョットやエアームドを出されても困るから問題はないのだが。ばさばさと翼を動かし空を飛ぶオニスズメは大きく一つ鳴くと、トレーナーの肩に降りてこちらを睨んでくる。

「お前のポケモンはそのガーディか?」

「はい、そうです」

そう答えると後ろからガーディが飛び出してきて、私の前でわん! と力強く鳴いた。その声を聞いたジムトレーナーは満足そうにうなずいた。

「よし、バトル開始だ!」

その声と共に肩にとまっていたオニスズメは再び空を舞う。ガーディも気合い十分で、私の指示を待っている。空を飛び回るポケモンに対して、こちらは地上で戦うしかない。チャンスは体当たりなど、地上に飛んできたときくらいだ。火の粉を上に放つこともできるが、自由に飛び回る相手に対して命中率は高くない。当たり前だが、このような点も現実とは違っていてバトルが難しく感じる。だからこそ、楽しいけど。

「体当たりだ!」

「鳴き声からの火の粉!」

空からガーディを狙い急降下するように体当たりを繰り出したオニスズメは、ガーディの鳴き声に怯み速度が落ちた。すかさず火の粉を放つと、迫ってくる火の粉にオニスズメは空を旋回し避けたがわずかに羽を焦がした。オニスズメはぎゃー! と大きく鳴くと、宙に戻り上からガーディの様子を窺う。
次はどうしようか、そう何度も同じ手が通じるとは思えない。そうこうしている間に、相手は待ってくれるはずもなく次の技を繰り出してくる。次は何をしようかと考えている隙に攻撃するのは当たり前だとわかっているのに長考してしまうのは、悪い癖だ。

「もう一度体当たりだ!」

「っ、避けて!」

ワンテンポ遅れたせいか、ガーディは完全には避けきれず体当たりを食らってしまう。よろけているうちに相手は宙に戻り、反撃することはできなかった。
自分の頭の悪さに思わず舌打ちをするが、すぐに切り替え次の手を繰り出す。

「火の粉!」

ガーディの口から放たれた火の粉はオニスズメに向かっていったが、やはり避けられてしまった。先程のように、降りてきたところを狙うしかないのか?
ぐるぐるとガーディの頭上を旋回し、近くまで降りてきたりと挑発してくるオニスズメにわんわんと吠え始めた。それに対してわざとゆっくりとガーディの目の前をオニスズメが通った瞬間、ガーディが動いた。

「がう!」

反射的なものだったのだろう、低く鳴いたと思ったらオニスズメに噛みついていた。驚いたオニスズメは悲鳴をあげながらガーディの口から逃れようと暴れているが、羽が数枚抜け落ちただけでびくともしない。予想外なガーディの行動に反応できず、遅れながらも指示を飛ばす。

「そのまま火の粉!」

放たれた火の粉から逃れることはできず、至近距離で食らったオニスズメはガーディが口を離したとき飛ぶこともできず地面に転がった。茶色かった羽が黒く焦げうっすらと煙をあげている。

「お、オニスズメ!」

ジムトレーナーが慌ててオニスズメの元に駆けていき、両膝をついて抱き上げる。オニスズメは弱々しいが鳴き声をあげ、翼を動かして見せた。それを見てジムトレーナーも私も安堵の息を吐く。正直、オーバーキルしたかと思った。至近距離からだと、いくら火の粉でも威力は相当のものだろう。威力を数値化して見ることはできないから、実際どれくらいのものだったのかはわからないが。

「俺の敗けだ。君にはハヤト様に挑む資格がある!」

そう叫んだかと思うと、立ち上がりこちらへと走ってくる。反射的に横に避けると私の後ろにあった階段を駆け降りていった。どたどたと響く足音がだんだん遠ざかっていく。
彼はジムトレーナーの仕事を放棄してポケセンに行くのだろう。あんなに慌てて、あのオニスズメは大事にされているんだな。

「ガーディ、おいで!」

地面に膝をつき腕を広げると、ガーディが尻尾を振り回しながら飛び込んでくる。

「よくやったね、良い子だね!」

そう言って頭の毛をかき混ぜるように撫でると、嬉しそうにわふわふと鳴く。
次はいよいよ、ジムリーダーとの戦いだ。がんばらないと!

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