神無月ちゃんじゃない、だいぶきつい性格のグリーン狙い注意。
夢主ふるぼっこ(物理)注意。
グリーンはスぺよりゲーム寄りな性格。







知らない少女に路地裏に抵抗する暇もなく引き込まれたかと思ったら、腹パンされて涙目。容赦も力加減も無く腹に入った拳に、わけもわからないままあまりの痛みに腹を抱えて踞る。込み上げてくる嘔吐感を堪えながら犯人を見ようと視線を上に動かしたが、頭を狙った追撃から慌てて身を守るのに精一杯でそんな余裕はなくなった。頭を両腕で抱えたぶん、蹴られ続けている腕が痛い。
女性同士の力だから、たぶん私が本気で抵抗して反撃したら五分五分の戦いになるだろう。しかし、今の私には反撃しようと言う勇気はなく彼女に対する恐怖が勝っている。いったい、何故、何故いきなり私はこんな目に遭わされているのだろうか。

「なんでっ、あんたが! 私の、私のグリーンなのに!」

グリーン? 私を蹴りながら叫ぶ彼女の言葉が耳に入る。グリーンさん、この町のジムリーダーでレッドさんの幼馴染みでありライバルであり元チャンピオンと肩書きの多い人だ。レッドさん繋がりでバトルを教えてくれたり、一緒に出掛けたりとと良くしてもらっているが、何故彼がでてくる?
猛攻が止み、ぜえぜえと荒れた息づかいが聞こえる。恐る恐る顔をあげると、すぐ近くに靴の裏が迫っていた。反射的に顔を伏せたが、頭に蹴りを食らってしまいその衝撃で地面に倒れる。コンクリートのざりざりとした感触が頬に痛い。狂気じみた笑い声が耳に痛い。

「ざまあみろ! あんたみたいな不細工は、あんたみたいな身の程知らずはっ、地面に這いつくばるのがお似合いだわ! みぃんな私のものなんだから、あんたなんか出てくる間もないのよ!」

頭を踏まれ、小石が肌に食い込む。痛みに耐えながら、せめてもの抵抗に少女を睨み付けたが火に油を注いでしまったらしい。怒りで顔を真っ赤に染めた少女は、頭から足を外したかと思うと無防備だった腹を蹴る。息が詰まる感覚、込み上げてくる吐き気。げほげほと咳き込むと汚いものを見たかのような目で私を見下ろしてくる。

「私のグリーンに近づくのが悪いのよ、この身の程知らずがっ!」

やばいかもしれない。視界が霞んできた。私のことはどうでもいいから、あの子達が無事ならどうでもいいから。せめて逃がしてやりたいけど指一本動かすのも辛い。くそ、動けよ。ようやくぴくりと反応した指を容赦無く踏みつけられ、爪が割れた感覚に声になら無い悲鳴をあげる。少女の笑い声がやけに遠くに聞こえる。

「もっと痛め付けてやりたいわね。じゃあ、連れてってあげ」「ナナシ!」

霞む視界の中で少女ふっとんだのが見えた。私を庇うように前に立つ背中を見て、安心したのか急激に瞼が重くなり視界が暗くなり気を失った。





目を開けると見慣れない天井だった。ポケモンセンターのものでも、最近泊まっているホテルのものでもない。ここはどこだろうか。今寝ているベッドから起き上がろうと体に力を込めると、全身を痛みが襲ってきて小さく悲鳴を悲鳴をあげる。ああ、そうか、助かったのか。あの子達に手を出される前に助けが来たから、きっと無事だろう。
腕を動かし、視界に入れる。包帯が巻かれており、指先にはガーゼが貼られている。頭を庇ったときのものと、これは指を踏まれたときのものだろうか。きっとどこも似たようなことになっているのだろう。
動くことを諦め、ここはどこかを知ろうと顔を動かすとベッドに頬杖をついたグリーンさんがいた。いきなりのグリーンさんに驚いたが、そう言えばあのとき聞こえた声はグリーンさんだったなと思い出す。彼は私と目が合うと笑みを浮かべた。

「やっと起きたか」

「ええっと……」

「あー、あー、まだ寝てろって! 傷、痛むだろ?」

寝てるままでは失礼だろうと無理矢理にでも体を起こそうとすると、慌てて止められる。体をベッドに戻すと子供をあやすかのように頭を撫でられる。いつもだったら恥ずかしくてその行為から逃れようとするのだが、今だけは安心する。
安心はするがやはり恥ずかしいので掛けかれていた毛布を引っ張り半分ほど顔を隠すと、グリーンさんは少しの間だけ目を丸くしてから笑みを浮かべた。

「あの、あの方はいったい誰だったんでしょうか?」

ふと気になって顔を隠したままそう尋ねると、笑みから一転渋い顔をになった。やはり、話しづらい内容なのか? 私としては、怖い思いをした原因を知りたいのだが……。

「……あー、悪い。あれはオレのファン、だな」

「……モテモテですね」

「おま、よくそんなにボコられてそんなこと言えるな。……まあ、オレが原因なんだけどな」

気に病んでいるためか、ちいさい声ながら彼女のことをすこし話してくれた。曰く、彼女から大量のオクリモノをされたこと。曰く、前から視線を感じることがありその視線の先を見ると彼女がいたこと。曰く、女性のジムトレーナーが彼女から嫌がらせを受けていたこと。
最近では自分のことをグリーンさんの彼女、婚約者だと名乗ることもあったらしい。故に私が邪魔だったのだろう、グリーンさんとそれなりに仲が良く一緒に出掛けたりすることもあったから。

「あいつは今回の事件で捕まったぜ。まあ、二度と会うことはないだろうから安心しろよ」

「そう、ですか……」

「ま! なんてったってこのオレ様が守ってやんだから安心しろよ!」

その言葉に何故か涙が出た。泣くつもりなんて更々無かったと言うのに、涙が止まらずあふれでている。止めようと目を擦るが意味がなく、むしろグリーンさんに頭を撫でられその手の暖かさにさらに涙が増すだけだ。
私は私が自覚している以上に恐ろしかったのだろう。初めてあんなにわかりやすく悪意をもった暴力をあびたのだ、恐ろしくないはずがない。あの場では自分の身よりも手持ちのポケモンにまで危害が加えられないかを心配していたから、今さらになってあの場よりも強い恐怖が襲ってきた。かたかたと震え始めた体をグリーンさんが抱き締め、震えを押さえようとする。

「オレがずっと隣にいて守ってやる」

その言葉に私は黙って何度もうなずいた。グリーンさんの奇妙な笑みに何の疑問を抱かずに。
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