よおし、はりきっちゃうぞー。ロケット団が繰り出したのはズバットとドガースの二匹、なるほどダブルバトルということか。私はサトシと違い冒険せず相性の良いポケモンを出したい人間なので、迷いなくポケモンを選ぶ。

「頼むよ。キルリア、ミロカロス」

光に包まれながら現れた二匹は凛と立ち、目の前にいるポケモンを見ている。ジョウトにはいないポケモンだからか、ロケット団が首をかしげお互いに知っているかどうか聞きあっていた。もちろんお互いの方を見あっているため、こちらから視線が外れている。そんな隙を見逃すわけもなく先手必勝一撃必殺、技を繰り出す。

「サイコキネシス! 冷凍ビーム!」

細かいところまで指示しなくてもやってくれると思えるのは、信頼しているからできることなのだろう。キルリアのサイコキネシスがドガースに、ミロカロスの冷凍ビームがズバットに命中。効果は抜群なうえに、レベルの差もあるのだろう二匹は目を回しながら地面に落ちた。二匹が地面に落ちる音でバトルが始まっていたことに気づいたらしい二人は、頭を抱えながら私を責める。
しかし、基本的に草むらなどで行われる対人バトルはポケモンを繰り出したら始め、という場合が多いのでずるくないといえばずるくない。ポケモン図鑑を使って調べようものなら、その隙に攻撃されたって文句は言えない。

「ひ、卑怯者!」

「ならどっちかが審判やってくださいよ」

審判がいれば私は審判の指示に従いますよ、そう言うと二人は悔しそうにしてから何やら相談し始めた。どうやらこの二人はロケット団だがすこし間抜けらしい。憎みきれないロケット団、まさにそんな感じがする。その気になれば私自身に攻撃することだって、私がポケモンを繰り出してすぐに攻撃することだってできたはずだ。
始めて遭遇したロケット団の悪役っぷりに対して、この二人は間抜けなしたっぱなのか。ロケット団にもいろいろな性格の人がいるな……。そんなことを考えていたら話が纏まったらしく、一人が審判をやることになった。後ろにいるシルバーがため息を吐いたような、あきれた声が聞こえたのだが……まあ、ロケット団をかばうことはできない。
ロケット団のしたっぱが次に繰り出したのはラッタ。毛を逆立てて威嚇してくる。私はキルリアとミロカロスをボールに戻し、次のポケモンを出すためにボールに手を伸ばした。が、ロケット団は私に対して技を繰り出してきた。つまりは、プレイヤーにダイレクトアタック。手段として考えてはいたが、実際にやるとは思っていなかった。

「電光石火だ!」

「え、ちょ……げほっ!」

目で追いきれない速さでまっすぐ突っ込んできたラッタを避けきれるはずもなく、勢いよくラッタが腹にぶつかった。その衝撃で軽く宙を飛び数メートルほど地面を転がる。ぶつかった際の衝撃でできたであろう痣と、地面を転がった際にできた無数の擦り傷がひりひりと痛み、口の中に砂が入りじゃりじゃりとした嫌な食感がする。卑怯だ、なんて言葉を口にする暇もなく次の指示を飛ばすロケット団に先程までの間抜けではないかという印象ががらりと変わった。今までは演技だったのか、そう思ってしまうくらいだ。

「っの野郎……!」

次の攻撃も食らうわけにはいかない、そう思いながらもラッタは徐々に迫ってくる。痛みで動けないため地面に転がったままボールに手を伸ばし、開閉スイッチに触れる。間に合うかどうか、微妙なところだ。

「まかせた、コモルー!」

「ラッタ、かみつく!」

あとわずかな距離しか残っていなかったラッタと私の間にコモルーがあらわれた、が、ラッタの攻撃を避けきれずに噛みつかれてしまう。コモルーの体を覆う固い殻はわずかに傷がつき、衝撃によろめいたが倒れたりはせずにしっかりと立っている。ラッタはコモルーの固い殻に噛みついたせいで歯が欠けたのか、痛がりながらコモルーから離れる。
体の痛みがひいてきたのでふらつきながらも立ち上がり、にやついた笑みを浮かべるロケット団を睨み付ける。さて、治療費とクリーニング代をいただかなくては。


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