この地方ではポケモンを外に出して連れ歩くということは普通なのか、ゴールドはヒノアラシを外に出して一緒に歩いている。
ゲームの連れ歩き機能みたいなものだろうか。私もゴールドと同じく外が好きなピカチュウとガーディを連れて歩いているのだが、菱豆沙音さんはポケモンの連れ歩きをしていない。
彼女がどこの地方出身かは知らないが、他の地方から来た私は彼女が連れ歩きをしなくてもおかしくはないと思うが連れ歩くことが普通なゴールドは気になるらしい。

「沙音さんは連れ歩かないんスか?」

「ふふ、連れ歩くのはあまり好かないんだ。自分のポケモンを自慢しているように見えるし、ね?」

そう言って視線をゴールドから私に移したのは、暗に私が自慢しているように見えるということだろう。珍しいポケモンでもないのに、何故自慢になるのだろうか。空気の読めるピカチュウは嫌そうな表情を浮かべてから、モンスターボールに戻っていった。
いきなり戻っていったピカチュウにゴールドは疑問を抱いたようだが、すこし考えてから気がついたようで複雑そうな表情をしている。ガーディは無邪気にヒノアラシと戯れながら歩いていたが、微妙な空気に気がついたのか振り回していた尻尾の動きが止まった。

「あら、別に貴女のことを言ったわけではないのよ? 私が悪者みたいになってしまうような真似は、やめてくださる?」

「……」

「あ、あー! そーいやあナナシさんはキキョウシティまで行くんスよね? 沙音さんはどーするんスか?」

気まずい空気を振り払うために、気を効かせてくれたゴールドが話題を変えてくれた。菱豆沙音さんはゴールドについていこうかしら、と言っていたが冗談だと受け取ったらしいゴールドはその言葉に笑っていた。
ごめんゴールド、私では止められないけどその人まじっぽいから気を付けて。私への当て付けのためになら、何でもしそうだから怖い。
ええ冗談よ、と言ったわりには残念そうな表情をした菱豆沙音さんを横目で見てからガーディを呼ぶ。わふわふ言いながら駆け寄ってきたガーディとついてきちゃったヒノアラシに、荒んだ心がなごむ。
気がつかなかったがこの短い時間でだいぶストレスがたまっていたらしい。そりゃ、そばに自分を観察というか……粗捜ししてくるような相手がいたらストレスたまるよな。
このまま二人と一緒にいたら、ろくに修行もできないよな。ガーディが生まれたばかりなことやまだ一緒にピカチュウと戦ったことがないことを知らない彼女に、戦い方が下手くそだ弱いだとか言われて自信喪失されたら困る。失礼だが、短時間の付き合いで彼女は私にならそういうことを言っても許される、と思っていることがわかった。確実に私は彼女より下の、見下してもいい人間だと思われている。
何を根拠にそう思われているのかはわからないが、なんか彼女の態度というか……この状況を何かで見たことがあるような気がする。いや、でも、それだとおかしいんだよな。私が逆ハーヒロインのわけがない。

「ごめん、私一人で行くよ」

「え、ちょっ!」

何か言いかけたゴールドを無視して走り出す。ガーディは私が走り出すのと同時に本気で走っていって余裕で置いていかれた何これ恥ずかしい。先に走っていくガーディを追いかける形でゴールド達から離れていく最中に、ふと思った。
なんかこれって、少女漫画でありそうな構図じゃないか。勘違いしたヒロインが走って逃げていく……あ、こりゃ悪化したかもしれん。いや、大丈夫。菱豆沙音さんに遭遇しなければなんとかなるだろ。

next
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -