コモルーとピカチュウの二匹をなだめてから、新しく仲間になったピカチュウだと紹介すると普通に歓迎ムードになった。仲間が増えることは純粋に嬉しいらしく、威嚇していたはずのコモルーもおとなしくしている。
ピカチュウもなんだ仲間か、という感じでみんなに挨拶をしている。何を言っているかはわからないが、仲良くしてくれればいいと思う。
見慣れないホウエン地方のポケモンに興味を抱いたウツギ博士の質問に答えていると、菱豆沙音さんが音もなく近寄ってきた。相変わらずにやにやとしている。

「ずいぶんと強そうなポケモンばかりね?」

「……? ええ、まあ、そうですね」

もしかして、種族値のことか? たしかに、ゲームにおいてはこの子達の種族値は優秀だけど種族値だとか、種で選んだわけでは無いからな。曖昧な回答だったが、満足したらしい菱豆沙音さんは笑みを深めて離れていきゴールドのそばに立った。
ゴールドは菱豆沙音さんが隣にいたことには気づいていなかったのか、ガーディに近づいていった。置いていかれた菱豆沙音さんが、不満げな表情を浮かべた理由がよくわからない。
人懐っこいガーディは近づいてきたゴールドにじゃれつき、楽しそうにしている。ゴールドも楽しそうにじゃれられているので、止める必要はないと思いその光景を眺めていた。
すこしばかり人見知りのするキルリアとミロカロス、飽きたらしいコモルーをボールに戻してからピカチュウを抱き上げる。レッドさんのピカのように、サトシのピカチュウのようにボールはやはり好きではないようだ。ピカチュウくらいなら、連れ歩いたって平気だろうから問題ない。

「ナナシさん! オレ、ヒノアラシにするっス」

「ヒノアラシかあ……いいんじゃないのかな。似合うと思うよ」

「この糸目があ?」

「……進化したら格好良くなるよ」

ポケスペのゴールドがヒノアラシを連れていたのを思い出してそう言ったのだが、そのことを知らないゴールドからしたらそのような反応になってしまうだろう。でも、ヒノアラシのあの細い目ってかわいいと思うんだけどな。
ボールから出すとヒノアラシはゴールドに自分の強さをアピールするかのように、背中から火を吹いた。その炎はヒノアラシ自身より大きい炎で、それを見たゴールドは不敵に笑いヒノアラシと視線を合わせるために床に膝をつけた。

「ちっこい体でやるじゃねえか! これからはよろしくな」

「ヒノっ」

ゴールドとヒノアラシは握手を交わし、笑いあった。そんな彼らを見てウツギ博士が何か話し始め、それに相づちを打ちつつも話しに参加する菱豆沙音を横目に私は研究所をあとにしようとガーディを呼んでから少しづつ離れる。ガーディが何してるの? と言いたげにわふわふ言いながらぐるぐると足元を回る。

「あ、ナナシさん途中まで一緒に行きましょうよ!」

ガーディの声に気づいて振り向いたゴールドに離れていったのがばれてしまい、菱豆沙音がにやついた。やっぱりこの人とは仲良くなれる気がしないな……ここまで関わるような人間は始めてだから仲良くしたかったけど、無理かもしれない。所詮ミニスカートは友達もつくれないのかと嘆きつつ、ウツギ博士の長いお話が終わるまでピカチュウと一緒に待ち続ける。

「ピカ、ピカピーカ」

「そうなのかー」

「ピーカー、ピカチュ。ピカ」

「うんうん」

ピカチュウが身ぶり手振りを交えながら何かを訴えてくるが、何を言っているのかわからないまま相づちを打つ。菱豆沙音さんを小さな手で指差してから、むにーっと頬を引っ張ったりしていたがそれはどういう意味なのだろうか。菱豆沙音さんに関することなのだろうが……あまりいい意味ではない気がする。
満足したらしく擦りよってくるピカチュウの頭を撫で、こっちも撫でろという感じでガーディも足に擦りよってくる。二匹とも雄だから、逆ハーレムか……! 始めての逆ハーレムに感動していたら、ウツギ博士の話が終わったらしい。

「ナナシさん、行きましょ」

「ああ、うん……」

あの、ゴールド。ナチュラルに君の横に立っている菱豆沙音さんも一緒に行くの? いや、別にいいんだけどさ、いいんだけどさ……。

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