さて、これからどうしようか。とりあえずまだ時間はあるし、ひとつ目のジムがあるキキョウシティに向かうため次の町に向かった方がいいかもしれない。ピカチュウは私の肩に乗ったまま降りようとはせず、ボールに戻ることも拒んだためそのままだ。
ピカチュウとガーディの実力を知るために草むらでバトルした方がいいかもしれない。そう思って進もうとすると、後ろから声をかけられた。振り向くとそこには、ゴーグルをした特徴的な前髪をした人がいた。

「どもっ。この辺じゃ見かけない人っスね」

「……ああ、他の地方から来たばかりなので」

「へえ! そうだったんスか。あ、俺はゴールドって言います」

「え、あ、ナナシです」

いきなり話しかけられたうえに、マイペースな話し方に戸惑ってしまう。堅苦しい呼び方しないでゴールドでいいっスよ、と言ってもらえたのでこれからはゴールドと呼ぶことにする。
相変わらずマイペースに喋り始めた彼はどうやら今からウツギ博士の研究所でポケモンをもらうようだ。そうなのかー、と相づちをうっていたら何故か私まで一緒に行くことになってしまった。
ポケモンはもらわないけど、まあ、イベントが見れるならいいのかな? でも今まで一度もイベントに遭遇したこと無いのに、いきなりイベントだなんて……。そう思いつつもついていってしまう私は馬鹿だと思う。

「ホウエンから! はー、わざわざそんな遠いところからこんな田舎町に来るなんて、変わってるんスね」

「うん、こっちに来るまでに色々あって……どうした?」

ウツギ博士の研究所に向かっている途中、いきなりゴールドは足を止めた。研究所の横に生えている木をじっと見つめてから、なんでもないと頭を掻きながら言う。ああ、もしかしたらシルバー……ライバルがいたのかもしれない。
これで深く追求したりして、今後に悪い影響が出たりしたら困るのでポケモンでもいたか? と聞いておく。あくまで人間がいるわけがない、ということを前提にして。

「ポケモン……そうっスね! どうせオタチでしたってオチだろ」

「そうだね」

ポケモンだということで納得したゴールドは、意気揚々と研究所に入っていった。ちらっと木を確認したが人間は見当たらなかったため、きっと何処かに隠れているのだろう。探し出すきはさらさらないから安心して隠れてほしい。そんなことを考えながら、私も研究所に入る。
二度目の研究所内は先程より慌ただしかった。よくわからない機械を弄り、何かしているのだが何をしているか検討もつかない。ゴールドに話しかけられようやく存在に気がついたウツギ博士が、ああキミか! と言ってから慌てて再び機械を弄り出した。
何かのスイッチに触れテーブルのような機械の上にあらわれたのは、三つのモンスターボールだった。嬉しそうにボール中を覗き込んでいるゴールドを後ろから眺める。私はこうやってポケモンを選んだりしなかったな……いや、ラルトスと旅に出たことはまったく後悔してないけどさ。
ゴールドがボールを選んでいると、扉が開く音がした。知らない展開に驚いて振り向くとそこには、見知らぬ女がいた。
それは知り合いでないから見知らぬ、とかそういうわけではなく私の原作知識にまったく当てはまらないということだ。見知らぬ女は私を見ると、背筋が凍るほど冷たい笑みを浮かべた。
誰だこの人。



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