レッドさんと缶詰という侘しい食事をしてから寝ることになった。雪山で寝るとか死ぬんじゃないかと思っていたら、まさかの夢小説的展開が起きた。二人で毛布に丸まって、リザードンに寄りかかりながら寝るというまさかの展開に動揺が隠せない。
たしかに暖かい、暖かいけど寝づらすぎてヤバイ。私のテンパりに気づかないレッドさんは朗らかにおやすみと声をかけてくださった。はい、おやすみなさい。私は世界が優しすぎて辛いです。
隣から聞こえるレッドさんの寝息に心臓が破裂するんじゃないかと思う。なんかもう、恥ずかしいのとテンションの高さが合わさってわけがわからない。逃げ出すこともできないし、明日のためにも目を瞑って無理矢理寝ようとする。
もしかしたら寝れないのではないかと思ったが、自分で感じていた以上に疲労がたまっていたのかすんなり寝ることができた。ああでもすこしでいいからレッドさんの寝顔を拝みたかった……。

次の日の朝、レッドさんに肩を揺らされ目を覚ました。一生の不覚、まさかこのタイミングで寝坊をしてしまうとは。それにしても雪山で寝坊するくらい深く寝ているとか、死んでもおかしくない状況じゃないか? レッドさんに拾ってもらえてよかった、捨てられたら死んでただろう。
レッドさんに寝坊した謝罪と起こしてもらったお礼を言うと、気にすんなよと笑ってくれた。やはりレッドさんは素晴らしく良い人だ。私の頭上であくびをしていたリザードンに挨拶すると、そっぽを向きながらだが返事をしてくれた。
今日は雪が止んでいるので下山するそうだ。今までくるまっていた毛布を丁寧に畳み返そうとすると、下山している最中も寒いからまだ羽織っておいた方がいいと言われた。たしかに、雪山を飛ぶのだから寒いに決まってるよな。
おとなしく毛布にくるまりながら後片付けをする。

「そういえばさ」

「なんですか?」

片付けの手をいったん止めて、レッドさんの方を向く。レッドさんの表情は帽子の鍔にかくされていてよく見えない。

「一日だったけど、ナナシと一緒にいれて楽しかったよ」

「……え?」

「あ、いや、いきなりなんだって思われそうなんだけどさ……」

私の反応に慌てるレッドさんを見て、何が言いたいんだろうかと首をわずかに傾げる。一緒にいれて楽しかったと言ってもらえたことは嬉しいのだけど、何故いきなりそんなことを言い出したのかわからない。たかがミニスカートに主人公との恋愛フラグが建つわけもないのだし、何か理由があるのだろう。

「なんか、ナナシって……あー、また遊びに来いよ!」

何か言おうとしたのをすべて省いてレッドさんは照れ臭そうに言った。結局彼が何を言いたかったのかはわからないが、私はその言葉に頷いた。

「次に来るときは実力でここに来れるくらい強くなりますよ」

「ははっ、それは楽しみだ! そのときにはバトルしようぜ」

ばしばし背中を叩いてくるレッドさんから逃げつつ、片付けを続ける。だらだらと話しつつも片付けは終わり、そろそろ下山するそうだ。
忘れ物がないか注意深く確認し、レッドさんに手を引かれて洞窟を出てリザードンの背に跨がる。私のすぐ後ろにはレッドさんがいて、落ちないように密着しながらリザードンの首に腕をまわしている。
リザードンの背は思っていた以上にしっかりとしていて、人間が二人乗っても余裕そうだ。

「じゃ、行くか」

「はい」

レッドさんの声に反応してリザードンは翼をはためかせ、空に舞い上がった。始めてポケモンで空を飛ぶのがボーマンダじゃないのがすこし寂しいけれど、この体験も良い思い出になるだろう。もしかしたらあとでコモルーに怒られるかもしれないけど。

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