ジョウト地方に行く予定だったという話をしていたからか、今日はもう遅いので明日雪が止んだらジョウトのワカバタウンまで連れていこうかとレッドさんが言ってくれた。
シロガネヤマの麓にあるポケセンに連れていってもらっても、そこからワカバタウンまで向かえないのでお言葉に甘える。
レッドさんと談笑していたら、お腹が空いたのでご飯を食べようということになったので放置されたままの鞄を開ける。鞄の中身は何ひとつ変わっておらず、相変わらず水や食料がつまっている。
助けてもらったお礼に缶詰だがごちそうする、と言ったら笑いながらありがとうと言ってもらえた。なんというか、レッドさんは笑顔が素敵に爽やかだ。
鞄から缶詰を選びながら取りだしていると、私の膝に乗ったままだったピカが鞄のなかに頭を突っ込んだ。無制限にものが入るが四次元に繋がっているわけではないので平気だとは思うが、なんだか怖い。
ごそごそと鞄の中で動いていたピカが頭を出すと、その手にはポロックケースが握られていた。ポロックの匂いにひかれて取り出したのかもしれない。興味深そうにポロックケースをがちゃがちゃ振り、首をかしげるピカ。レッドさんも興味を抱いたのか、これは何かと尋ねられたので簡単に答える。

「ポロックという、木の実を使ってつくるポケモンようのお菓子をいれるためのケースです」

「へえ、カントーにはなかったな」

ピカにポロックケースを手渡されたレッドさんも、ピカと同様に降ってからいじり始めた。からん、と軽い音がしてレッドさんの手のひらにひとつのポロックが落ちた。
小さく四角いそれをしげしげと眺めてから、ピカにあげてもいいかと尋ねられたので喜んでうなずく。ピカに私の作ったポロックを食べてもらえるなんて光栄です。
レッドさんの手から放たれたポロックを、小さな手で落とさずにキャッチしたピカは匂いを嗅いでから口にした。ポロックは嫌いな味ではなかったらしく、すぐに平らげてしまった。それを見ていたリザードンが不満げな声を漏らしたので、リザードンにもポロックが投げられた。
器用に口でキャッチしたリザードンは、意味がないような咀嚼してから飲み込むと満足そうに尻尾をぱたんと上下に揺らした。どうやら不味くはなかったようだ。
吐き出されなかったことに安心していると、ベルトについているモンスターボール……ガーディのはいっているボールががたがたと揺れ始めた。
驚いて開閉スイッチに触れると、現れたガーディはレッドさんに……レッドさんの持っているポロックケースに飛びかかる。ガーディにじゃれつかれているとしか思っていないレッドさんは、楽しそうにポロックケースを揺らす。それに反応するガーディも楽しくなってきたのか尻尾を振りながらそれを追いかける。
な、何しに出てきたんだガーディ……。ポロックがほしかったんだよな? まさか遊ぶためだけに出たがったりは、いや、まだ生まれたばかりだし遊びたいのかもしれない。でも場所を考えろ。いくら炎タイプとはいえ、ここは雪山だからね!

「ガーディ、やめなさい。すみませんレッドさん……」

「はは、ポケモンはこれくらい元気なほうがいいって」

さすがレッドさん心がお広い人だ……! 一人で感動していたら、レッドさんがガーディにポロックを与え始めた。まだ躾ていないのに犬のようにレッドさんの言うことに従い、お座りやお手までやっている。ええっ、ガーディあなたそんなことできるの?
レッドさんに誉めてもらえて嬉しそうなガーディは、こちらに駆け寄ってきて何か報告し始めた。わんわん吠えているだけで何を言っているかはわからないが、とりあえずよかったねーと撫でておいた。

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