ゲンガーがこっそりかけた催眠術によって眠ったナナシの身体を抱き上げ立ちあがる。腕にかかる重さが心地よく、ずっと抱いたままでいたくなるがナナシが寝づらいだろうから我慢だ。足元を跳ね回るゲンガーを蹴ってしまわないように気を付けながら、ナナシ専用の布団が敷いてある部屋まで運ぶ。
まさか、暴走族にナナシが絡まれるなんて思っていなかった。しかもポケモンを預けたまま向かうなんて、せめてゲンガーをつれていってくれれば良かった。ナナシを布団に横たわらせ、上から掛け布団を腹辺りまでかける。今日はすこし暑いからこのくらいで平気だろう。
眠っているナナシが気になるのか顔を覗き込んでいるゲンガーの頭を撫で、ナナシから離す。すこし文句を言っていたけど仕方がない。まだやらなくてはならないことが残っている。とりあえずナナシの代わりにポケモンセンターまで行って、モンスターボールを受け取ってからあの男を消さなくては。
ナナシの頬を優しく撫でる。人の生きている体温が心地よい。ナナシにはオレが人の体温が、触れ合うことが好きだと言ったせいか感謝を表すときは抱きついてきたりする。それはとても嬉しいことだけど、それはナナシに限られたことだということに気づいてほしい。
夜の鈴音の小道が綺麗だと言ったのも、遠回しに一緒に行かないかという意味だったのに一人で行くとは思わなかった。千里眼を使い様子を見ていたから良かったけど、そうでなかったらと考えると黒いものが心の中を埋め尽くす。
千里眼があれば離れていてもナナシの様子を見ることができるから大丈夫だと思っていたが、やはりそばに置いておいた方が安全だ。ナナシが自由にしている姿を見ることが好きだったが、仕方がない。ナナシにはオレか、オレかナナシのポケモンがそばにいない時は出掛けないようにきつく言っておこう。きっとナナシのことだから、オレが言うことに間違いはないと思って素直に頷くだろう。
ナナシの頬に唇を落とすとくすぐったそうに身をよじったが、起きる気配は無い。早めに行って、朝までには帰ってきてナナシと一緒に寝よう。あの男以外にも危険分子はたくさんいるし、町の人に迷惑をかけたからという名目で消してしまえばいいか。
うたた寝していたゲンガーに行こうと声をかけ、念のために夢食いを覚えていないゴースを二匹置いていく。ナナシはゴーストタイプのポケモンを怖がらないから、寝起きに驚くだけで怖がりはしないだろう。眠っているナナシの頭上を回っているゴース達を見てから、ゲンガーと共に部屋を出る。
あの男のいる場所は千里眼を使わずともわかる。動けないようにしてから隠したし、見張りにムウマをつけておいたから移動はしていないだろう。していたらすぐにムウマが飛んでくる。オレのポケモンは優秀だから、逃げられるはずがない。
明日ナナシが起きたら何処に行こうか。女中が言っていた美味しい餡蜜が売っているところにでもつれていってやれば喜ぶかもしれない。ナナシのことを考えるだけで幸せな気持ちになれる。
ナナシとポケモン達がいれば、オレはホウオウに会えなくても一生幸せに暮らせるだろう。そのためにはまず、ナナシに害を成す者を根絶やしにしないと。
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