あなたは私を知らなかったでしょうけど、私はあなたを知っていたの。何で知ったのかは覚えていないけど、気づいたらあなたの姿を目で追っていた。違うクラスだったから話す機会もないし、滅多に会えなかったから廊下ですれ違う度にとても嬉しくなった。
お互い部活には入っていなかったから、下校する時間が重なったときは気づかれないように後ろを歩いたわ。下校する生徒なんていっぱいいるから怪しいと思われないし、仮に気づかれてもたまたまだとあなたは思うでしょ?
私、知ってるのよ。帰り道たまにコンビニに寄ってお菓子を買うでしょ。友達とまた太る、とか笑いあいながら新発売の商品や期間限定の商品を手にとってレジに向かう。私はあなたがどの商品を買ったのかを見て、次の日に同じ商品を買いに行っていたわ。あなたと同じものを食べたかったから。
髪を縛っているシュシュや、携帯電話にぶら下げているキーホルダー。全部あなたとお揃いにしたかったけど、そこまですると怪しまれるから買ったものは家に飾ってあるのよ。つけている香水も同じものを買って、クッションやぬいぐるみにつけて楽しんだわ。バニラみたいな甘い香りより、オレンジみたいな香りの方が好きなのね。あなたによくあっていると思うわ。
あなたに会いたくて学校に通っていたけれど、本当は学校なんて嫌いだったの。知らなかったでしょう? 隣のクラスに嫌われ者の女の子がいたことなんて。いじめがあったわけではない、ただ、存在を無視されていただけ。でもね、そんなこと気にしなかったわ。私にはあなたがいたから。それだけが心の支えで、いつしかあなたへの思いが大きく成長していき自分では制御できないくらいになってしまったの。
いつかの帰り道、あなたはお友だちとふざけて笑いあいながら帰っていたわね。話題をころころと変えているうちに、私でもわかる話題になったわ。周りを気にして小さい声だったけど、後ろにいた私には聞こえたのよ。行けるならポケモンの世界に行きたい、そう言ってたわよね。好きなポケモンがいるんだと表情はわからなかったけど、はずんだ声でそう言っていた。
その時、いいことを思い付いたの。昔から好きで読んでいた夢小説。最近は拙いながらも自分でノートに書いたりしていて、私は逆ハー主でみんなに愛される神無月亜莉沙だった。あの世界につれていってしまえば、二人きりになれる。そうでなくても、憎しみでもなんでもいいから私に何かしらの感情を向けてくれるはず。
夢小説は好き嫌いせずに読んでいたから、傍観夢という特殊なジャンルがあるのを知っていた。私はあの傍観夢の逆ハーヒロイン、そう、神無月亜莉沙になればいいんだわ。ちやほやされるのも好きだし、あなたに見てもらえるし一石二鳥だわ。そう考えたら、あとは実行するのみだった。
どこかの夢小説のヒロインのように神様に願って願って願い続けて、ある日突然それは叶った。私を、亜莉沙をあの世界につれていってくれるって。これで私はようやく神無月亜莉沙になれる、そう考えると嬉しくて仕方なかった。
亜莉沙は先に行くけれど、いつかは追い付いてみせてね? 亜莉沙、あなたに会える日を楽しみにしているの。その時のあなたの眼はどんな色をしているのかしら? 怒り? 憎しみ? 喜び? どんな眼で亜莉沙を映し出すのかしら。
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