後頭部の高い位置に結われた髪が、ゆらゆらと揺れる度に気になってしまう。普段結ったりしないせいか、揺れる度に少し不愉快になるが我慢するしかない。
これは、可愛いイエローがおそろいだと笑いながら結ってくれたものなのだから。イエロー可愛いよイエロー。
今はいない家主に思いを馳せながら、テレビを見る。テレビにはのどかな牧場が映っておりミルタンクが牧草を食べたり、寝たりと自由に過ごしている。
ジョウト地方の特集だからか、レポーターとしてクルミちゃんが出演している。モーモーミルクがはいった瓶を片手に、こちらに向かって笑みを浮かべていた。クルミちゃんはラジオにでたりテレビにでたりと大変だな。
それにしてもジョウト地方か。図鑑所有者のイエローなら知り合いも多いだろうし、今度行ってみたいって頼んでみよう。基本的に私の行動範囲は狭いから、遠出するときはイエローに頼むしかないんだよな。
トキワの森とトキワシティ、あとはマサラタウンくらいにしか行かない。行かない、というか行けないんだけどね。イエローが私が単独行動するのをひどく嫌がるから。可愛いからどうということはない! それに私も最近は一人で何処か行くとかは好まなくなってきたしね、そうです甘ったれです。いつでも、というわけでも無いが大体はイエローと一緒に日々を過ごしている。
テレビを見て時間を潰していると、外が騒がしい気がする。イエローが帰ってきたのかもしれない。ソファから立ち上がって玄関に向かい、扉を開けると走って突っ込んできたコモルーに盛大な頭突きを食らった。私は頭突きの衝撃に耐えられず後ろに倒れ、背中を床にうった衝撃に悶える。超痛い。犯人のコモルーは知らん顔で私の横に立ち、見下ろしている。私を馬鹿にしているような気がしなくもない。

「コモルー!」

コモルーの次に入ってきたのは、ピカチュウのチュチュを肩に乗せたイエローだった。イエローは床に倒れている私を見ると、すべてを理解したのかコモルーにめっと叱っていた。しかしコモルーは何食わぬ顔で定位置である日当たりのいい窓辺に向かい、腰を下ろす。
イエローの後からはわらわらとバタフリーのぴーすけや、私のキルリア達が家に入ってくる。ぴーすけは私を心配してくれているのか、頭上を旋回している。キルリアはコモルーを叱るためか、窓辺の方に歩いていった。いいぞキルリア言ってやれ!
ようやく痛みに復活した私は上半身を起こすと、心配そうに眉尻を下げているイエローに声をかけた。

「おかえり、イエロー」

「ただいま!」

満面の笑みを浮かべたイエローは、体当たりのように勢いをつけながら私に抱きついてきた。その衝撃に再び床に倒れそうになったがなんとか持ちこたえ、イエローの華奢な体躯に腕を回す。ときわの森で散歩をしてきたからか、イエローからはかすかに土の香りと花の香りがする。それに混じってイエロー自身のにおいもする……なんだか変態みたいだ。
イエローを腰に張り付けたままソファに座ろうとすると、一瞬だけ離れてソファに座った私の膝の上に乗っかった。まるでカップルのような光景だが、これが当たり前になってしまった今ではなんとも思わない。日常の光景だ。
つけっぱなしだったテレビを見ると、まだジョウト特集が続けられていてコガネシティジムリーダーのアカネちゃんが映し出されていた。アカネちゃんは腕を組みながら挑戦者を待ってるとか、そんなことを言っている。アカネチャンにはゲームで泣かされたな、ミルタンクの転がる超怖い。
そんなことを考えていたら顔面を掴まれた。両頬を手のひらで包まれ、目の前にはむっとした表情のイエローがいる。あれ、私いつのまに何かやらかしたか?

「どうしたのイエロー?」

そう尋ねると、私の顔を覗きこんでいるむっとした表情から一転、眉尻を下げすこし悲しげな表情を見せた。

「……ナナシさんはボクだけを見ていて」

かーわーいーいー。つまり嫉妬していたと言うわけだ。イエローのその言葉ににやにやすると、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまったが膝から降りることはしない。部屋を飛び回っていたぴーすけが私の頭に止まると、羽をゆっくりと羽ばたかせた。

「ナナシさんにはボクとポケモン達がいればいいんだから」

「そうだねイエロー可愛いね」

「か、からかわないでください!」

ぷんすか怒りながらも、満更でもなさそうなイエローは天使。ごめんごめん、と笑いながら謝るとまったくもう、と呟いていたが口許には笑みが浮かんでいた。大好きなイエローとポケモン達と暮らせるなんて、私はとても幸福だ。イエローの細い腰に腕をまわしてぎゅうと抱き締めると、楽しそうに笑った。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -