レッドさん視点注意。





今日は久しぶりにグリーンが洞窟まで来て、ナナシを帰してやれとか言ってきたのでバトルすることになった。ナナシを帰す気はさらさら無いが、グリーンとのバトルは楽しいので実はグリーンが来るのを楽しみにしていたりする。
トキワシティでジムリーダーを勤めているグリーンは、さすがと言うべきかここに来る度に強くなっている。だからといって負けたりはしない、グリーンが強くなったならそれよりも俺が強くなればいいだけだ。
今回もバトルに勝った俺は、なんやかんやで面倒見のいいグリーンから食料や毛布などをもらってからナナシの待つ洞窟に戻った。洞窟に戻ろうとした際に後ろからいきなり頭を叩かれ、叩き返そうと後ろを振り向いた時にはすでにグリーンはピジョットに乗って逃げていた。次に来たときに叩き返そうと思う、俺は倍返しにする主義だ。

洞窟の奥、リザードンの炎によって作られた焚き火にあたりながら眠たそうに目を細めているナナシに声をかけると、おかえりなさいと返ってきた。新婚夫婦みたいなやりとりに思わずにやけてしまう。最初は俺を警戒していて声をかけても返事すらしなかったナナシだが、一週間もたたないうちに返事をしてくれるようになった。警戒心を解いたのか、諦めたのかは俺にはわからない。
ナナシの隣に座り、はじめて会ったときよりも軽くなった体を持ち上げて膝の上にのせる。毎日と言っていいほどやっているからか、この動作にもずいぶんと慣れた。ナナシも抵抗しなくなり、むしろ持ち上げると無邪気に笑うくらいだ。
俺とナナシとの間に沈黙が流れるが、それは気まずいものではなくむしろ穏やかなものだ。この沈黙ですら愛しい。耳をすまして肩に顔をうずめればナナシの呼吸する音、心音がよく聞こえる。
ナナシの体温を感じながらうとうととしていると、腰に巻いているベルトについているモンスターボールがかたかたと揺れた。顔をあげ手を伸ばして開閉スイッチに触れると、相棒のピカチュウが現れた。ピカチュウは体を解すように大きくのびてから、ナナシの膝の上に飛び乗った。

「おつかれさまピカチュウ」

毛布の隙間から腕をだしたナナシはピカチュウを労るように優しく頭を撫でた。ピカチュウがナナシに頭を撫でられ嬉しそうに目を細めるのを見て、ほほえましい気持ちになる。
ナナシがピカチュウに触れているからといって嫉妬したりはしない。そりゃあ、グリーンに触れたら嫉妬するというか、グリーンにバトルを申し込むけど。ピカチュウ達は俺の仲間だし、仲良くしてくれた方が良いと思っている。
ピカチュウと戯れるナナシを見て、そういえばまだグリーンとバトルしたことを伝えていないことを思い出した。洞窟から出ることが滅多にないナナシにとって、俺と話すかポケモンと戯れるかくらいしかやることがない。なので俺はナナシに少しでも楽しんでもらえるように、洞窟の外での話を毎日している。
とりあえずグリーンとバトルしたことを告げると、ほのかに白い頬を朱に染めてナナシは目を輝かせた。

「バトルしたんですか?」

「……うん、前よりも強くなってた」

「へえ! 今回はどんな技を使ったんですか?」

ナナシはグリーンよりも、俺とグリーンのバトルに関心を抱いている。さすがミニスカートといったところだが、バトルする機会が無いので話を聞くだけ無駄ではないかと思っている。それでもナナシはバトルの話を聞きたがり、どんな技を使ったのか、どのようなバトル構成をしたのかを尋ねてくる。
もしもグリーンについて深く聞いてくるものなら、ちょっとグリーンに奇襲をしかけなくてはならないがそんな心配はしなくていい。ナナシはグリーンを『バトルが強くて食料などを運んできてくれる人』程度にしか認識していない。

「なるほど、さすがレッドさんはお強いですね!」

「……ありがと。」

「いつかこの目でお二人のバトルを見てみたいです」

にこにこと笑いながらそういうナナシの頭を撫でる。できることなら見せてあげたいけど、バトルに熱中しすぎてグリーンに拐われてしまったら困るので見せてあげることは難しい。ナナシのそばにピカチュウでもいさせれば平気だろうか、考えておこう。
技の使い方などを話しているうちに、ナナシは眠くなってしまったのかうとうととし始めた。暖かい格好をしているからか、普段やることが無い時は寝ているせいかナナシは話をしている時でも眠くなってしまう。

「俺も眠いから、一緒に寝ようか」

「……すいません、そうします。おやすみなさい」

「……おやすみ」

俺の膝の上ですやすやと眠り始めたナナシを見て口許がゆるむ。ナナシの膝の上にいたピカチュウも眠くなったのか丸まって目を閉じている。可愛いは正義、と言う言葉があるがまさしくその通りだと思う。
ナナシの肩に顔を埋めて目を瞑る。このまま一生ここで暮らそう。誰にもナナシを盗られずに、誰にもナナシを見せることは無い。それはどんなに幸せなことなのだろうか。愛してるよ、ナナシ。
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