2020/02/15 17:01

「ヴオォォンフラれた!」

ポケモンの唸り声のような声を出しながら玄関の扉を勢いよく開くと、おめでとうと書かれたフラッグを手にしたヤブクロンが待っていた。

「なんだその……なんだそのフラッグは! 誰が持たせた! 私か! 食べて!」

告白を受け入れられる気満々でいたので、帰ってきたときにヤブクロンがこれ持ってたらめちゃくちゃかわいいじゃん! とノリノリで持たせた1時間前の私を殴りたい。腕から取ったフラッグをヤブクロンの口元へと持っていくと、嬉しそうにもしゃもしゃと食べ始める。よしよしいい子だ何も残さず食べてしまって何も無かったことにして。ついでにこれも無かったことにして。すすす、と床を滑らせるようにしながらヤブクロンに差し出したのは綺麗にラッピングされたチョコレート。
カントーに住んでいた彼に合わせて、カントー流バレンタインの告白としてチョコを選んだのだけどダメだった。チョコが悪いのか、私が悪いのか……チョコだな。私は何も悪くない。ガラル流に花束にメッセージカード仕込んで「貴方を慕う人より」とかやればうまくいっていたんだ。そうすれば彼にまじ無理みたいな表情されなくてすんだのに。

「これももうゴミだから食べて」

そうして差し出されたチョコを目の前に、ヤブクロンはにこにこと嬉しそうに笑みを浮かべながらも体全体を使っていやいやと横に振る。

「なんで!」

いつもだったら嬉しそうに食べてくれるのに! なんならまだごみじゃない手紙まで食べたりするのになんで食べてくれないの! しかも嫌そうに表情を歪めるわけでもなく、笑顔だし。なんなの……ずっと一緒にいたはずなのにヤブクロンの気持ちがわからない……。
衛生的ではないのはわかっているけど床にふせていると、慰めてくれているのか傍に寄ってきてくれる。でもそれは食べてくれないのね。なんでだろう、別に変なものは食べささてないし、仮に食べてたとしてもたいていのものは大丈夫だし……あとは何かヤブクロンの気に障ることしたり言ったりしたかな。昨日の夜から今まで何をしていたか思い出してみるが、まったくもっていつも通りだ。ゴミが出たらヤブクロンに食べてもらってその都度褒めるかお礼を言って、あとは告白するからっていつもより念入りに化粧して服を決めてチョコを準備して……。

「あ」

チョコを準備してるとき、ヤブクロンに話しかけてた。これは好きな人に渡す特別なチョコなんだって。
のそのそと起き上がり、ヤブクロンと向かい合って居住まいを正す。それからチョコのラッピングを剥がして箱の蓋を開け、中のチョコがヤブクロンにも見えるようにする。

「ゴミじゃなくて、バレンタインのチョコレートです。受け取ってください」

その言葉を聞いたヤブクロンはようやくチョコを食べ始めた。あんなちょっとした会話を覚えていてくれているとは思わなかったよ。にこにこと笑みを浮かべているヤブクロンを見ているとこちらまで嬉しくなってくる。
あ、でもラッピングの方も箱も食べるのね。
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