新八の練習が終わる時間帯、ブルンブルンとエンジンをふかして土手に原チャリを停めた銀時は、目を凝らして河原を見ていた。


オタク共がうようよと新八を囲んでいるようだ。


オタクの男が集まってむさっくるしーな、ホント。

あ、新八居た。

何眉間にしわ寄せてイキがってんだ。

つーか何で上着着てねぇの!?
何一人で興奮しちゃってんの!?
あ、あのヤロー新八ガン見してんじゃねぇかざけんな!

あーやっぱ新八可愛いな。

あんなヤロー共の中に居るともう天使だな。うん。

つーか早く上着着ような。

可憐な二つの蕾がまる見えだからね。

見せるなら銀さんに見せなさい。


あ…あ、あれ?

新八こっち見てる?

ん?こっちに向かってね?

つか…めっちゃキレてんだけど?


「ぱっつぁんどーし…イテェ!!」


ゴンッ!

勢いよく頭を打たれた。


「あんたの心の声かなんかしんないけど途中から声出てんだよ!恥ずかしいからやめてくださいよ!つかわけわかんねぇよ!…もー帰ります。皆にもそう言ってきましたから」


顔を赤くしてそう言う新八は可愛くて、銀時は思わず頬が緩む。


「…何笑ってんですか変態」


「だってさー、…まぁいいや。今日の夕飯何?」


「話逸らさないでくださいよ」

新八はじとっと銀時を睨みつけた後、諦めたように眉を下げてふふっと笑った。


(ああ本当に可愛い。)


辺りはもう暗くなっている。

ふわりと柔らかそうな新八の頬に触れた。


「寒ぃな、冷たくなってら。早く帰るぞ」


渇いて冷たくて、少しごつごつした指先。

"帰るぞ"の言葉。

ふっと柔らかくなった表情。

きゅんと胸を締め付ける。


(僕本当に、銀さんのこと好きなんだなぁ…)


ドキドキしながら銀時の腹に手を回して抱き着いた。


鼻先を掠る風は冷たい筈なのに、全然そんなこと感じないのはなぜだろうか。


新八は家に帰るまでずっとそんな事ばかり考えていた。



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