ぶつぶつと銀時は呟いていた。

長谷川さん今日仕事なんだよねー、とかパチンコ行く金ねーんだよなーとか、大きな声で呟いている。



「じゃー銀ちゃん行ってくるアル」

「戸締まりちゃんとして下さいね、まぁ泥棒が来ても盗られるものなんて何もありませんけど」


銀時を無視して新八と神楽が玄関の戸を開けると、もう夕焼け空だった。


銀時は、恨めしげにこちらを見ている。


神楽はそんな銀時を見て、心底ウザそうな目をしていた。


あぁ、娘から嫌われている父親ってこんな目で見られてるんだなぁ…と新八は銀時に対し哀れみの目を向けた。
しかもあの人、絶対お化け怖がってるよね。


「銀さん、僕今日やっぱりここ戻りますよ。練習終わったら買い物して帰るんで、ここ開けといて下さい」


そう言えば銀時の魚の死んだような目が一瞬煌めく。


「ふーん。まぁ、新八がここに居たいっつーならいいけどォ?あ、別に俺は一人でも全然ダイジョーブなんだけどね?一人でもエンジョイ出来るけどね?せっかく誰もいなくてやりたい放題じゃんって思ってたけど、そんなに新八がいたいっつーならいいけど?銀さん大人だからね」

明らかに嬉しそうに強がっている銀時を見て、神楽はいよいよ汚物を見るような目をした。


「はいはい。じゃあいってきますんで。神楽ちゃんも気をつけてね」


「ハイハーイ」

「おぅ」


二人の返事を聞いて、新八も練習場所へ向かった。


「あっ新八!」


声に新八は振り返る。


「今日迎え行く。どこで練習すんの?」


新八は腕を組んだまま素っ気なく言う銀時を見詰め、

「心配しなくても帰りますって」

と苦笑した。


「違うっつーの!…まーいいや、どこ?」

拗ねたように口を尖らせる銀時を笑い、新八は今日は近くの河原です、と言って軽く手を振り歩いて行く。


「新八のヤロー、かわいくねーの」

そう言いながらも丸い頭が小さくなるのを見て、銀時はふっと笑った。



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