確かに、


確かに自分は半助の修業時代の話が聞きたいと言った。



だけど今半助が話しているのは一緒に修業していた「石川」という男の話だ。


どれだけすごい奴なのかとか、一緒にこんなことをしたとか。


普通なのか?


こんなに二人一緒に修業するものなのかな。


男二人で毎日毎日?


男色…とかないよな…

まさか先生が…?



「それで結局帰れなくなって、石川と寝たんだ」



「は!?寝た!?」


利吉は半助の言葉に驚き聞き返す。


「え?うん、野宿になっちゃってね。あはは」


あ、野宿か。

でも二人で野宿って…。


何もなかったのかな…。


あれ?


なんか変な方向に想像してる…?


男二人で[何か]なんてあるわけがないのにな。


いや、まてでも男色だったら…いや、いやでももし、もし先生が万が一男色だったとして、石川と何かあったとしても構わないじゃないか…。


先生の恋愛なんだから別に…

別に…


そう思うのにモヤモヤとした気持ちになるのは何故だろうか。


半助を見る。


目が合った半助は、じっとこちらを見ていた。


そっと手が伸びてきて、唇に触れられる。



ビクンッ



体が揺れる。



「たんぽぽの種が付いてた」


半助は摘んだ小さなたんぽぽの種をふっと吹いた。



ふわふわと揺れる白い種。


ああ食堂の床に落ちる、そう思った時、半助が立ち上がり利吉の側まで歩いて来た。


「先生…?」



見上げれば、今まで見たこともない妖艶な表情の半助がいる。


すっと指先を首筋に滑らされてぴくり、震えた。



「先…生…?」


「服の隙間に種が入ってる。それに、髪にも付いてるし」


ふっと首筋に息を吹き掛けられて「あっ」と変な声が出る。


そんな利吉を見て半助は笑った。



「君は結構鈍感なんだなぁ」


君、私の事が好きだろう?


耳元で囁かれて。


カッと体温が上がった。


私が、


先生を、


好き…?



半助から顔を覗かれたが、恥ずかしくて目を逸らす。


「利吉くん」


優しい声にそっと目を遣ると、ふわり唇が触れた。



たんぽぽの綿毛のように軽く柔らかく。




ああ私は、



今日、恋の種を拾ったみたいだ。



**********


あああ先生の小悪魔さを出し切れなかった残念だ;;


この先生は利吉が気付く随分前から自分に好意を持っているのに気付いていたので色々やって反応を楽しんでいたのです。

土井利とも利土井ともとれそうな話になりました。

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