私を見て、一生懸命喋っている表情がとても可愛くて。

私に懐いてしまって視線や口元のひとつひとつが私の反応を楽しみにしているところが垣間見えると心が柔らかくなってしまって。

もうどうしようもなくなる。


彼が細く長い指を折り曲げたり広げたりしながら私に話をしてくれている時に、唐突に彼の手を取った。


その行動に何より驚いていたのは自分だった。

利吉は切れ長の目がまん丸くなるまで見開いて、私の事をみている。

自分の手のひらにじんわりと広がる熱は、確かに今ここに在って。

それがなんて愛おしいことなのかと私の心は感動で震えた。

彼を想う時の心の満ち足りた感じは、彼と離れている時でさえ私を幸せにしてくれる。

好きという感情を知るという事。

なんて素晴らしい。

とても健全で、時に不健全にこころを動かす。


「先生…?」

不思議そうに、でも、声音は少しだけ戸惑って語尾が掠れた彼の声。

半助は手に取った利吉の手のひらを両手で握りしめて、そのままゆっくりと摩った。


「きみが好きだよ」


驚くほど素直に出てきた言葉に、利吉は驚いた顔に赤が加わった。


そして照れたように笑って「私もです」と答える。


その顔を見て、半助の心に好きの気持ちが積み重なっていく音がしたような気がした。

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土井先生と利吉

きみがすき