【罠でもいい】


父上に会いに学園へとやって来た今日。


本当に逢いたい人は別にいる。


一年は組の担任教師、土井半助だ。


父の山田伝蔵は、私の顔を見るなり逃げて行ってしまった。

予定通り。

父を待つ振りをして部屋へと足を運んだ。
父は絶対に来ないだろうことはわかっている。


誰もいない部屋。


でもきっとやって来る。




「利吉くん」


いつもより熱っぽい声が後ろから聞こえた。


「先生…!いつの間に部屋に!?」


半助は壁からすっと姿を現した。


「君が学園へ来たという噂を耳にしてね。きっと部屋に来るだろうと思ったんだ」


照れたように笑って、半助は自分に寄ってきた。


「だからって隠れなくても」


「だって君と二人きりの時間を誰にも邪魔されたくないし」


今私は用事があって町へ出掛けてるということになってるんだ。


そう耳元で囁かれて、熱く見詰められた。


「先生、用意周到ですね」

少し、声が震えてしまう。


唇がじりじりと近くなってきたから。

先生の熱が伝わってくる。

寸止めされた唇は、私を試しているのだ。


可愛い先生。

なのに少し、いやらしい。


「先生、もっと近寄ってください、」


ぎゅっと半助の装束を掴んで引っ張った。


恥ずかしい、自分から催促するなんて。


満足したように笑う先生から口付けをされた。



私はちょっと仕返しをしたくてさらに深くなるように先生の首に腕を絡ませる。



きっとあれもこれも先生の仕掛けた罠なのだろうけれど。




********

きっとこの先生はSで確信犯のえろい人なんだと思う

それで無邪気だったら無敵だ

罠でもいい