「俺、宇宙人なんだ」

恋人であり一個上の先輩は、特徴的な目を細め笑みを浮かべながらそう言った。

「……は?」
「だから、俺は宇宙人なんだよ」

先輩の発する単語に言語処理能力が追いつかない。ちなみに俺の頭が悪いわけでは無い。
誰だってアイアムエイリアンなんて意味不明な事言われたら頭が一瞬止まっちゃっても仕方ない事だろ?
しかし何故先輩はいきなりこんな事を言い出したのか。エイプリルフール?それはもうだいぶ過ぎてるぞ。
単なる冗談……そうか、それか。
この先輩はこうやってよく後輩をからかう。俺や、神童とかを。今回もそれの一つだろう。
でも、だからと言って宇宙人だなんて、からかいにしてもちょっと幼稚すぎないか?

「倉間?」
「えーあー、また冗談っすか?こういうのなら俺より神童のが信じますよ」
「……冗談?」

先輩は今度はその特徴的な目を開いて丸くした。驚いてる。……何で?
そして目を元に戻したが眉間に皺を寄せて口をとんがらせてる。何かに怒ってる、ムカついてる顔だ。
普段大人ぶってるこの人には珍しい子供染みた表情だ。

「冗談じゃないんだけど」

そうたしかに先輩はそう呟いた。
冗談じゃない、先輩が宇宙人なのが冗談じゃない?

「え、あ、ああ!火星とか他の星から見たら地球も確かに宇宙だから地球人も宇宙人ですね!広い定義じゃ俺も南沢さんも宇宙人ですね!」
「違う、そうじゃない。お前達地球人から見た宇宙人なんだ」

ああもうわけがわからない。先輩が宇宙人だなんてそんな、だからなんだ、何かあるのか。
宇宙人だから俺と離れ離れにならなくちゃいけない、だから別れようとかそんなんだったら断固拒否しますよ!

「……信じてないだろ」
「ええ、まあ……」
「じゃあ証拠見してやる」

そう言って先輩は歩き出した。気づかなかったが空はすっかり暗くなり星が出ていた。
先輩は空を見上げて寂しそうな顔をする。その表情が遠い故郷を想う様で俺はチクリ、と胸が痛んだ。

暫く歩くと高い見晴らしのいい丘にあるちょっとしたスペースに来ていた。
先輩は、丘から広がる夜景を背に手を広げて俺に呼びかける。

「しっかり見てろよ、倉間!」

そう先輩が言った瞬間、今まで静かに光っていた星達が一斉に動き出した。
沢山の流れ星が、流星群が先輩の後ろで夜空を輝かす。
キラキラと光る先輩は綺麗で本当に宇宙人なんじゃないかと俺は信じてしまっていた。







……なんて事は起きる筈は無く、俺は先輩と普通に下校をした。それだけだ。
宇宙人だという証拠を見せると言ったが、特に先輩は何をするでもなく普通に分かれ道で別れを告げた。
宇宙人発言はなんだったのか、わからないがまあこれからも先輩とお付き合い出来るならそれでいい。

夕飯を食べてると、母が「今日は星が明るいわね」と窓を見ながら呟いた。



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苺牛乳さんが「宇宙人南沢さん」と呟いたので許可貰って使わせていただいた。
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