「俺達……別れよう」

そう言われた言葉が理解出来ずに俺は口をあんぐり開けて固まってしまった。
別れる?え、ちょっと意味がわかりませんね。
顔を落としたままベットに腰掛けている南沢さんの表情はわからない。
うん、別れる?誰が?俺達?俺と南沢さんがって事か?

「はぁあああ!?」
「だって!倉間俺の事好きじゃないだろ!?」

バッと顔を上げた南沢さんの目には薄く水の膜が張ってあった。
泣きそうだ。
可愛い……って違う今はデレてる場合じゃない!

「なんでそうなるんスか?大好きですよ!」
「じゃあ言い方変える。倉間は俺の事好きだけど愛していない」

そうキパッという南沢さんは梃子でも動かないといった感じだ。
俺は頭がふらつく感覚に襲われた。
どうしてこうなった。
俺は南沢さんが大好きだし勿論愛してる。
普段の生意気でちょっと意地悪な先輩の時も、二人っきりの時の照れた横顔も、ふとした時の柔らかい笑顔も。
みんなみんな大好きで、大切で、愛しいんだ。
南沢さんもそうだと思ってた。
でもそう思ってたのは俺だけなのか?

「なっ、なんでそんな風に思うんですか?」
「お前が……っ、……いい、なんでもない」
「なんでも無いってなんですか!?」
「これ以上お前に嫌われたくないんだよ!!」

そう叫ぶと南沢さんは立ち上がり自分の鞄を掴むと足早に出て行ってしまった。
あまりのイキナリさに俺が固まってしまい、自我を取り戻したのは玄関の扉が閉まる音を聞いてからだった。

勿論これで終わらす筈がない。
俺はすぐに立ち上がり南沢さんを追う。
足の速さは南沢さんのがちょっとだけ上だけど、南沢さんはローファーで俺はスニーカーを履いた。
つまり速さは変わらない、むしろ俺のが速い。
走って追いかけて、角を曲がると南沢さんの後ろ姿を目視。
更にスピードを上げて近づく。
あともう少しだ、という所で南沢さんが迫り来る俺に気づく。
ぎょっとした顔をした後、南沢さんも更にスピードん上げる。
また少し縮んだ差が離れてしまった。

「なんで逃げるんすか!?」
「そっちこそなんで追いかけてくんだよ!?」
「南沢さんがわけわかんない事言って逃げるからでしょ!」
「わけわかんなくないし逃げてもいな……っっ」
「!南沢さん!?」

目の前の南沢さんがぐらりと揺れる。
慌てて手を出すが倒れる勢いは収まらず、二人一緒に地面にダイブしてしまった。

「痛……」
「っつ……ってあ、南沢さん大丈夫ですか!?」
「あー……うんまぁ」
「って、膝血ぃ出てるじゃないですか」
「……うん」
「……南沢さん。俺あんたがなんであんな事言ったかわかりません。
が、ただ一つだけ言えるのはちゃんと愛してるって事です」
「……なんであんな事言ったんです?俺別れる気は無いんで、悪い所あったら直すんで言ってください」

南沢さんは暫く話すか否か迷うようにしていたが少し経って口を開いた。

「……倉間はさ、俺を求めてこないだろ」

そう南沢さんは小さく呟いた。
……え、それって、つまり。

「最初はさ、大切にしてくれてるのかなって思ってたんだけど段々不安になってきて……。
倉間はもう俺の事好きじゃないけど、でもお前は優しいから別れを切り出せなかっただけなのかなって思って……」
「んなわけないだろ!!」

ああ、もうそういう事かよ。と俺は再び地面に尻をつく。
へにょへにょ〜とした擬音がつきそうなくらい一気に力が抜けた。

「南沢さん、俺はあんたが嫌になったからその、あの……そういう事誘わなかった訳じゃなくて……俺達まだ中学生ですし、だから今はそういうのじゃなくてもっと違う所で恋人らしい事したかっただけでして」

ちょっとだけキャパオーバーしてるからちょっと日本語あやふやだけど許して欲しい。

「でも、それで南沢さんが不安にさせた事に関しては謝ります。ごめんなさい」
「えっと、なんていうか、俺もごめん」
「いえ……」
「……」
「……あ、あのですね南沢さん」
「何?」
「もっかい俺ん家来ませんか?」

南沢さんの顔をジッと見つめながら言う。
俺の次の言葉に気づいたのか南沢さんは少し頬を赤らめてコクンと頷く。
多分俺も同じように、もしかしたらそれ以上に真っ赤になってるかもしれない。


「今日、両親遅くまで帰って来ないんですよ」


まぁつまり雨降って地固まるって事で。


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柘榴様、リクエストありがとうございました。お待たせいたしました。
「すれ違いシリアスだけど甘々倉南」との事でしたがこんな感じになりました。
い、如何でしょうか……?
なんかただのバカップルの痴話喧嘩になったような。

嬉しいお言葉ありがとうございます。
どうぞこれからもよろしくお願い致します。

柘榴様のみお持ち帰り可です。
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