神童は、膝小僧が好きらしい。
それもただの膝小僧じゃなく俺の膝小僧が好きだそうで。
所謂フェチの一貫なのか、神童はじっとその大きな黒目が零れ落ちそうなくらいに目を見開いている。
あまりに熱心な視線は、視線を通り越して熱を持つ。
火傷するほど熱くは無いが、ジリジリと微かに焦がすような熱にムズムズする。
俺が腕や手で膝小僧を隠すと神童は小さく「あっ」と悲しそうな声を出した。

「お願いします、南沢さん」
「やだよ、だってお前の視線怖いもん」
「では見ません。見ませんから触らしてください」

神童は泣き虫で、大人しくて、サッカーと多分ピアノの焦がす以外は一歩下がって見ているイメージがあった。
ついでに言うとオロオロと涙ためて。
でも、俺の膝小僧に関してはそうじゃないみたいだ。
下手に出てると見せてそのくせとんでもないおねだりしてやがる。
あんな熱視線で見ていた奴が触ったらただじゃすまないだろう。
本人がそれをよくわかった上で俺にお願いしてるんだ。
しかも、多分俺が断らないってわかってて。

「……いいよ、仕方ねぇな、触っていい」
「!本当ですか」
「あと別に見てもいいから。目をそらしながら触られるとか逆になんかムズムズする」
「はい、わかりました」

綺麗ににっこり笑って神童は優しく、まるで産まれたての雛を撫でるように俺の膝小僧を撫でた。
優しい手つきがくすぐったい。
膝小僧の皿を神童の形の良い指が撫でる。
しばらく俺の膝小僧を堪能していた神童だったが、その指が一回二回と円を描き、ピタッと止まる。
そのまま黙りこんだ神童が気になり声をかける。

「神童?」
「ああ、すみません南沢さん……舐めていいですか?」
「はぁ?」
「やっぱり駄目ですよねすみません、触れるだけで、充分です」

そう言って神童は首を二三回振るとまた愛でるように俺の膝小僧を撫で始めた。
俺は一先ず安堵の息を吐き、暫くは神童の好きなようにさせていた。
最初は座っていたがだんだんめんどくさくなり、膝は上にたてたまま上半身だけ寝そべった。
神童が「枕とります?」と言ったが断っておいた。寝る気は無い。

他人に膝小僧を撫でられる行為というのはこういうものか、と考える。
これも人生経験の一つになりうるのか、それとも無駄な事となるのかは俺にはまだわからない。
ただ、……そこまで考え俺はちらりと神童を盗み見る。
その目は確かな意思と意地と熱を持っていて、

(ああ、多分次言われたら断れないだろうな……)

「南沢さん、」

(あの時の目と同じなんて卑怯だろ)

俺と神童が繋がる、神童も俺もお互いを求めて繋がるあの時と。
汗が、声が、体が熱に浮かされる。

「すみません、やっぱり」

そこまで、俺の膝小僧が舐めたいかと俺は思わず息と笑みをもらす。
多分そのまま、膝小僧から更に進んだ方もやるんだろう。
じゃなければそれはそれで神童の膝小僧フェチっぷりに乾杯するまでだ。
ああ、でも最後までやるんだろうな。
だって普段大人しい神童が、ギラギラに熱のこもった期待を帯びた目をしてるんだもんな。

(許しちゃう俺も多分同じ目をしてるのだろうけど)
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