なんか色々注意。








俺の目の前から南沢さんが消えた。
消えてすぐドサッという音と、沢山の悲鳴。
俺は慌てフェンスにかけよる。
だが、フェンスから内側では何も見えない。
俺は踵を返し、屋上の入り口に向かうと階段を一気に駆け下りた。

ざわざわ、人だかりが既にできていた。
人と人の間から見えた手、間違いない南沢さんだ。
人垣をかきわけ、出る。
「南沢さん……」
思わず声がもれた。
南沢さんは、血を流し足や腕は変な方に折れ曲がって、でも高さが足りなかったのか



まだ、生きてた。


ひゅーひゅーと細い、苦しそうな息を繰り返している。
苦しそう、苦しそうなのに南沢さんは周りを見て、口端を歪に上げた。
そう、彼は笑った。笑ってこう言った。

「ざまぁみろ!これで終わりと思うなよ!!」

それっきり、南沢さんは動かなくなった。








異変だ、いや、異質だ、いや、なんていうべきだろうか。
死んだはずの南沢さんがいた。
幽霊かと思ったが透けてもいないし普通に触れる。
「な、なんで……」
「あ、倉間!」
嬉しそうに南沢さんが笑う。
その笑顔に一瞬ドキッとなったがここで絆され?ちゃ駄目だ。
「み、南沢さん……死んだはずじゃ」
「死んだけど?」
あっさりと答えられた。え、何え?
「え、ゆ、幽霊?」
「いや、生身の体。んーほら、あの一回じゃ足りないなーって」
それにほら、言っただろ?これで終わりじゃないって。
そう言って南沢さんは廊下の窓を開ける。
窓から下を見ると移動教室の生徒が何か喋りながら歩いている。
南沢さんはそれを見て、一瞬暗い顔をした後
「じゃあ、またあとでな」
そう言って俺が止める間もなく窓から身を投げた。
上がる悲鳴。
俺は上から歪な体で歪に笑う南沢さんを見てる事しか出来なかった。

そうして南沢さんは飛び降り自殺を繰り返していた。
何をどうやって何度も飛び降り自殺をしているのか、目的はなんなのか一向にわからなかった。
南沢さんを高いところから遠ざけようとしたが無駄だった。
手が届かない。あと一歩で南沢さんに触れられるという所で落下していく彼を何度も見た。
何度も。
そう、何度も見ているうちに気づいた事がある。

南沢さんが飛び降り自殺をする時は必ずと言っていいほど人がいる事にまず気づいた。
次にそれが三年生である確率が高い事を。
その次に会話やノートの表紙を盗み見て気づいたが南沢さんと同じクラスの人が多い事。
そして……


「南沢さん、これは、復讐なんですか?」
そう問いかける俺に南沢さんは目をまんまるにした。
驚いて、でもすぐに眉間に皺をよせた。
「なんだよ、やめろって言うのかよ……!」
「はい。でもやめるのは南沢さんの自殺だけです。復讐は任せてください!」
そう言ってにっこり笑った俺に南沢さんはなんとも言えない、苦虫を噛み潰したような顔をした。


南沢さんはイジメられていた。
細かい事はわからない。俺が独自に調べた事だけだから。
ちょっとした無視と暴力から始まって、物を捨てられたり机や教科書に暴言かかれたり。
そして机には虫の死骸が。
放課後教室に忍びこんで調べた。
みんなの前で、自分を卑下した言葉を並べ強制的に謝らせられた。
これは南沢さんのクラスメイトが笑いながら話してるのを聞いた。
その他その他エトセトラエトセトラ。

こんな奴らのために南沢さんは飛び降り自殺を繰り返してたのか。
最初は目の前で繰り返される自殺に南沢さんのクラスメイトもびびっていたが今じゃ感覚がマヒしたのか、自殺された時は青い顔をしてるが暫くたったら友達とだべっている。
元から外道だったんだ。
だからそんな奴らのために自殺を繰り返すなんてもうしてほしくなかった。

昼休み、南沢さん教室があるの校舎に入った。
ふらり、ふらりと歩きながら人であふれる廊下に出た。
……表札が目に入りそして汚された南沢さんの机を廊下から見、そして俺は絶叫を上げながら教室に入りこんだ。


響く悲鳴、絶叫、奇声。
俺はひたすら自分でもわけのわからない叫び声を上げながら、持っていたカッターを振り回す。
赤い、赤い血が刃に付着する。
そりゃそうだ、だって俺がカッター振り回して教室にいた奴らを刺したり切ったりしてるんだから。
次々と赤く染まっていく教室に俺は高揚を感じた。
そうだ、そうだよ、こんな南沢さんが何度も歪な姿にならなくたって、こいつらを歪にしちゃえばそれでいいんだ。

「ね、いい考えでしょ!!?」

何時の間にか教室の入り口に立っていた南沢さんに向かって笑顔でそう言った。
南沢さんは青い顔をして俺を怯えた目で見てくる。
……あれ?

「南沢さん……?」
「……ヒッ」

手を延ばして近づこうとしたら短い悲鳴を上げて逃げ出されてしまった。
慌てて後を追うとそれに気づいた南沢さんは今度ははっきりと絶叫しながら更にスピードを上げて俺から逃げた。

「!!南沢さんまってくださいその先は……」





階段の一番上から落ちた南沢さんを、動かなくなった南沢さんを、ただ見下ろしていた。



おかしいな、こんなはずじゃ
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