あ、珍しい。そう浜野が呟いた。
昼休みいつも食べてる屋上が、テニス部が自主練に使っていたため使用できずに仕方なく部室に来た。
最初に部室のドアを開けた浜野はそういってドアの前で立ち止まるもんだから俺には何も見えない。
浜野より背が高い速水には見えたらしく「珍しいですねー」とか言ってやがる。
……本当に見えないんだけど。くそ、二人だけで盛り上がりやがって!

「早く中入れよ!!」
「倉間うるさいよー」
「あわわ、倉間くん静かにしないと……」

あれ、何で俺怒られてんの?
別に俺何も悪い事してなくね?

「はぁ!!?」
「「シー!」」
「なんなんだよさっきから!」

浜野を強制的に押しのけ部室に入る。
瞬間目にした光景に足も思考も止まる。
雷門では無い他校のジャージ。しかし着ている人はよく知った。
……南沢さんがソファーで寝てた。
すやすや寝息を立てて気持ち良さそうに横向きになって寝ている。
特徴的な目が伏せられていて普段より幼く見える。

(ていうか……やっぱ美人だな南沢さん)
まじまじと見てるのになかなか目を覚まさない。
これはかなり爆睡してるな。
……キス、してもバレないかな。

「ちゅーか弁当食べねーの?」
浜野の声にはっと意識を現実に戻される。
「寝込みを襲うなんて最低ですよー」
「速水てめぇ!」
「えっ倉間、南沢さん襲う気だったの!?」
「ちっ違ぇーし!!」
「なんだ、違うのか?」

…………あれ?
今俺ら三人以外の声がしなかったか?
最後の声がした方を向くと案の定そこはソファで、さっきまで寝てた筈の南沢さんがこっちを見てた。
欠伸を一つし、ソファから起き上がりこっちに近づいてくる。

「結構期待してたんだけどな?」
俺の前に来て顔を傾げながらこっちの顔を覗きこんでくる。
(うわっ……近っ、エロっ……)
俺の反応に満足したのか早めに顔を遠ざけた。
ホッとしたような、ちょっと残念なような。
南沢さんは浜野と速水に声を掛けられ二人の方に行ってしまった。
「南沢さん久しぶりー!」
「おう、浜野も速水も久しぶりだな」
「今日はどうしたんですか?」
「ああ、月山国光が学校側の予定で休みになったんだ。暇だったしこっち来た」

(……ん、ていうか、期待、してたって……)
それってつまり、南沢さんが俺とのキスを待望していたという解釈で良いのだろうか。
身体が一気に熱くなるのを感じる。
ここで何もしなかったら男じゃない。そうだろ?
「南沢さん!!」
「んー?」
浜野と話していた南沢さんを呼び、振り向き様にキスをする。
俺の方が背伸びっていうちょっと不格好な形だが気にしたら負けだ。
唇と唇が合わさった瞬間南沢さんはちょっと驚きに目を見開いていたが、
離れる時には余裕のある、だが熱の篭った目でこちらを見ていた。
「倉間、なんならもっと先までやってもいいけど……?」
そう艶かしく聞いてくる南沢さんを放置出来る筈も無い。
ああもう、何でこの人はこんなにエロいんだろうか。

「邪魔者は去るかー」と出て行く浜野達を横目に見ながら南沢さんを再びベッドに押し戻した。
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