(37話前の話。捏造)


流れ変わる景色を見ながら南沢は誰にでもなくため息をつく。
いや、ため息というよりかは張り詰めていた空気を逃した。
そういったのが正しいのかもしれない。
ガタンガタンと少し荒々しい運転で電車は走る。
四人掛けのボックス席。斜め前には一緒に来た兵頭が座っている。
景色が早々と移り変わり、そして南沢の故郷の景色に近づいてきた。
揺れる電車は南沢と兵頭を、雷門町へと運んでいった。


南沢は、雷門を恨んでいた。
いや、恨んでいたとは少し違う。
雷門を、雷門サッカー部の事はついていけないと思ったが恨んでいるわけでは無かった。
ただ自分の考えや、その他色々な感情が雷門サッカー部とすれ違いおいていかれた。
南沢は当初それを認めたくなく、自分は正しいのだとその一心で故郷を離れたのだ。
自分が背負ってきた10番をフィフスセクターからやって来た一年が着けていた事も、他の奴らが革命に賛同し始めた事も。
それは南沢にとって遠く離れた月山国光に行く決心を決めるきっかけとなった。

元から月山国光に転入するという話は出てたのだ。
父親の仕事の都合。ただ両親は息子が三年という事を気遣い、始めは父親だけが向こうに行く手筈だった。
しかし、革命が始まり南沢は部をやめ、両親に自分もついていく事を話した。
父親は一言いいのか?と聞き南沢はそれに黙って頷いた。
そうして南沢は月山国光へと転入する事となった。
月山国光へ転入後、それなりに色々あったにはあったのだが、ここは割愛させていただく。


そうして南沢は月山国光の一員として雷門イレブンと戦い、全力を出し、そして負けた。
試合前や試合中のゴチャゴチャになっていた負の感情が終わったあとにはキレイさっぱりとまではいかないが、だいぶ無くなっていた。
あるのは負けた悔しさと、それと……。
神童はいつでも待ってますといったが南沢はそれには答え無かった。
なんとなく、雷門サッカー部には戻らないとそう思ったから。

帰りにチームメイトがチラチラ南沢を見てくる。
一人や二人では無い。
もしかしたらチームメイト全員かもしれない。
月島がついに雷門に戻るのか?と聞いた。
南沢は少しだけ笑って俺のチームはここだよ。とそう言った。
そうして南沢は己のチームメイトが案外涙脆い事を、
そして彼以外のメンバーは南沢も意外と涙脆い事を知るのであった。


ここまで順を追って思い出しながら南沢は頬杖をつきながら窓に流れる景色を見ていた。
勝ち進んでいく雷門に、元雷門として、そうしてよきライバルとして彼らに出来る事は何か。
そう考えた結果、月山国光から遥々兵頭と共に雷門へと足を運ぶ事にした。
兵頭は化身使いでGKだ。
雷門がこれから勝ち進むには点を取るのは勿論守備陣がかなり要になってくる。
お人良しの元クラスメイトを強くさせよう。
雷門には勝ち進んでもらわねば困るのだ。
そのために二人は雷門に来た。
革命の手助けをしたいんだと言った南沢にチームメイトは激励の言葉を持って二人を送り出した。
だから、絶対に強くしてやる。

車内アナウンスが懐かしくも聞き慣れた駅名を流す。
網棚に乗せていた荷物を兵頭に取ってもらい、電車を降りる。
改札を出て、兵頭を引き連れ雷門へと向かっていった。
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