狂気と共に笑う

部活が終わって放課後、俺はいつものように白石の 家に来ていた。部活後に白石の家に行くのはもはや 暗黙の了解になっていて拒むことは出来ない。

「侑士、今日は何した?」

小さめのテレビの電源を入れながら言った。白石の 自室に入ってすぐに聞かれるこの台詞、付き合いは じめのころは可愛い嫉妬とかそんなんやろうなぁと 思うとったけど、一年も続けば異常なことに気付 く。

「特になんもなかったで。いつもとかわらへん」 「特にってことは少なからずなんかあったんやろ? いつもとってなに?どれ基準でいつもとなん?」 「ほんまになんもなかっ…ひっ、!」

ガンッと響く壁。音の方を目で追えば強く握られた 拳。恐る恐る白石の顔を見るとにっこりとしてこち らを見ていた。

「特にってなに?いつもとってなに?聞いとるんや からはよ答えや」 「あ、の…」 「なん?」

顔色を伺いながら今日一日で起こったことを順番に 説明していく。にこにこしたり真顔になったり、い つ機嫌を損ねるか分からない。 一日の全てを話し終わり、微笑みを浮かべたまま 「そうか、わかった」と言う白石にほっとしたのも 束の間。何が起こったのか理解できないほど、一瞬 で視界が変わった。病院を連想させる白い天井に逆 光で表情の見えない白石。ああ失敗したんやと認識 するやいなや腕が震えた。

「嘘つき」 「そんなん、ついてない」 「嘘や。今日昼休みの終わり頃池間さんに呼び出さ れて告白されとったやろ。俺知っとるんやで。なん で告白されたこと言わへんの?疚しいことでもある んか?まさか俺と付き合っとるのに池間さんの告白 受けたとか?絶対に許さへんで。なんとか言えや。 黙っとったらわからんやろ、なぁ」 「…っしら…」

そっと首に添えられた手に全身がガクガクと震え出 す。別に池間さんのことでなにか疚しいことがある わけじゃない。なにもないからこそ完全に忘れてい た。そう言いたいのに喉が掠れて空気が漏れるばか り。首に伝わる熱が至極恐怖心を煽った。

「…ははっ、なんてな。俺がこんなことするわけな いやろ?」 「……」 「告白断ったの知っとるし、なんかあったらここに 来るわけないやんなぁ?」 「…せや、な」 「急に押し倒してごめんな。背中痛かったやろ?平 気か?」 「大丈夫、全然、大丈夫やから」

首に添えられていた手をそっと離して体を引き起こ される。頬に手を添えられて顔を覗き込まれるのに 体が勝手に反応して仰け反った。白石は刹那止まっ たがまるで気にしてない風に笑った。

《本日は殺したいほど愛している、ということを話 題にしていきたいと…》

今まで聞こえてなかったテレビの音が耳に流れ出 す。それは白石も同じだったようで食入るように画 面を観ていた。

《世の中には色々な愛がありますが、殺したいほど 愛してるというのは…》 「なぁ侑士」 「…なん?」 「これどう思う?」 「……俺には理解できん。死んだら愛し合えるもの も愛し合えんやんか」

重い沈黙が流れる。再びテレビの音が聞こえなくな る。テレビの中では綺麗なお姉さんが真面目な顔で なにかを話しているのに、聞こえるのは俺と白石の 息遣いだけだった。 目があってもじぃっと見てくるだけで、背中にどっ と汗が流れる。こういうときどうすればいいのかわ からない。なにか機嫌がよくなるほど気の利いたこ とを言えるほどこの男のことを理解していない。

「世の中にはこういう人たちもいるんやで。偏見あ かんわ」 「…おん」 「それに俺も…いや、なんでもないわ」

そしてこの男は綺麗に笑うのだ。

END





…ぬああああああd=(^o^)=b!
あさ丸様!本当にありがとうございます…そして貼るのが遅くなり申し訳ありません…!!
四天というか白石×侑士にお熱なのでこんなリクエスト通りに書いて頂けて本当嬉しかったです!本当にありがとうございました!

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