オペラハウスの中で


「オペラハウスの中で」




※ちょっと意味不明










他の耳に流れ込むのは歌。
俺の耳に流れ込むのは涙声。
みんながみんなオペラを観ている。
なのに俺はオペラが観れない。




ここは俺のオペラハウスなのに。







派手な衣装を来た俳優がゆっくり女優に近付いた。
少し髪の跳ねた女優の涙を舐め取り、俳優はほくそ笑んでいる。
女優はきっと騙された。
俳優の上手な演技に騙されてしまった。


俺はそう思った。きっとシナリオ通りなんだと、このまま俳優も女優を本気で愛してしまい、ハッピーエンドの最後を迎えるものなんだと。
女優と俳優は、結ばれるものなんだ。
そう、確信していたはずなのに。


ほくそ笑んだ俳優から女優はどんどん離れていった。
サバンナに生きる逞しい男に、城で暮らす穏やかな男に、街にひっそり隠れる黒い男に、山に籠る不思議な男に。

誘惑されて、どこかへ行ってしまった。


俳優がいくら近づいても、その女優を元に戻すことは出来なかった。
するする手をすり抜けて、どこか遠い心の隅っこに追いやられて、一人虚しくなってしまったのだ。
雨が降り続く。
ざあ、ざあ、
ざあ、ざあ、
雨の中に紛れ込んだ俳優の涙は水に溶けた。



ああ、私はもう一度あなたに会いたい。
この腕の中であなたのぬくもりを。
もう他の男になんて惑わされるな。
全て正しいのはこの私自身であると。
あなたは黙って私を見ていればいいのに。

















あなたは、俺を、ずっと知らん顔して、


生きていくのですね。



涙声は、俺の声。
虚しい俳優は、俺の全部。

「あいたいよ……みなみ…」


ごめんねみなみ、おれはとてもじゃないけどみなみの理想の人にはなれないよ



ワガママな俺のオペラハウスの中でポップコーンがぱん、と弾けた。





_120903



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