『俺の家族』一年A組 一ノ瀬音也




俺の家族は、父さん、母さん、なつ兄、レン兄、俺、翔、それと黒猫のクップル先生の六人と一匹です。

俺の父さんは検事です。首席検事だとかいう偉い地位で、毎日俺たちのために眉間に何本も皺を寄せて働いてくれてます。仕事はいつも忙しそうだけど、俺たち家族のことを一番に想ってくれるいい父親です。

母さんは、着物がすごくよく似合う優しい人。父さんの三歩後ろを歩き一家を陰から支える妻の鑑のような人です。縁側でクップル先生と大好きなメロンパンを食べる後ろ姿はとっても幸せそうで、そんな母さんのことが俺は大好きです。

長男のなつ兄は俺より八つ上の兄ちゃんで現役音大生だけど、もういろんな所からオファーを貰っちゃうような、天才ヴィオラ奏者です。これで料理が殺人級じゃなくて俺の事追っかけて来なけりゃいい兄貴なのに。といつも弟の翔が愚痴をこぼす、すごくピュアな兄ちゃんです。

六つ上のレン兄は顔もスタイルもカッコイイ、弁護士のたまごです。いつもふらふらしてて遊びが好きな人だから、弁護士になると言った時はびっくりしたけど、理由を聞いたら「『イケメン敏腕親子、遂に法廷でバトル!』マスコミや世のレディを騒がす、なかなかに面白い見出しだろう?」とレン兄らしい答えが返ってきました。

末っ子の翔は俺よりひとつ下でちっちゃいけど、兄弟の中では一番のしっかり者。夕方や休日なんかは一緒にゲームやサッカーをやったりする、気の合う兄弟です。冷蔵庫に乳製品を常備して「俺はこれからなんだっ」と豪語する、頑張り屋さんです。

クップル先生は、いつの間にか我が家に住み着いていたマイペースな真っ黒い小猫です。メロンパンをくれる母さんが一番好きらしくて、大概母さんの膝の上で丸まってます。


みんな豊かすぎるほど個性豊かなので、毎日がすごく楽しいです。こんな人たちと家族になれて、俺は世界一の幸せ者だと思います。大好きなこの一ノ瀬家で、いつまでもいつまでも仲良く暮らしていけたらいいなと思います。




読み終えた用紙を折り目に沿って折り畳みながら、音也は小首を傾げて翔に向き直った。

「どうかな?」

「どうってお前…。ダメ、なんじゃね? いや確実にダメだろ、それ」

「えっ、そうかな?自分では結構うまく書けたと思ったんだけど」

「マジでありのまま書きゃいいってもんじゃないと思うぜ。…特に俺の。ちっちゃいってのと乳製品の件はぜってぇ書き直せよな」

「うーん、わかった。じゃあもうちょっと考えてみるよ」

付き合ってくれてサンキュなっ、と片手を挙げてリビングを去った音也をため息で見送り、

「……っつーか。なんであいつは高校生にもなってあんなもんを書かされてるんだよ…」

二階から響く騒がしい足音に不快げに鳴いたクップルの背を撫でてやりながら、頬杖をついてぼつりと零した。






end.





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