家のことに嫌気が差し闇間に沈みかけていた俺を救い出してくれたトキヤへの恩返しになるのならと、指輪を受け取り夫婦ごっこをはじめた。
だが"ごっこ"は"ごっこ"であって、トキヤから与えられる温かな想いに心地よさを感じながらも返すことはできない。
返せない自分が、いくら夫婦の形を取っていてもそのほうが不誠実だからと、指輪も嵌めなかった。

ただ、恩を返したかったんだ。

トキヤの申し出を受け入れたあのとき、ありがとうございますと笑ったトキヤの顔はとても綺麗で、ただひたすら嬉しそうに…――俺には、見えた。
だから、あの了承がトキヤにこんなにも長い間辛い思いを強いるものだったなど思いもよらなかった。
薫が俺をあの家に連れ帰ろうとしたとき、奴が言ったあの言葉に心に蟠りを覚えつつも言い返すことができなかった。
あいつらにも叱られそして背を押されて。

やっと、気付いた。

俺はあいつのことが好きだったんだ。
きっと二十年前のあの日、出会ったときから。
何故いままで気付けなかったのだろうか。
もっとはやくに気付いていれば、あいつにあんな思いをさせずにすんだのに。

いまからでは遅いだろうか。


あいつに想いを、返したい――。










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前ページの話のいちばん下に書かれてた真斗独白……なんだけど、私これ書いたおぼえない…



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