自室に戻るとすぐに着ていた服に手を掛けた。
濡れて重く張り付く布の脱ぎづらさに辟易しながらも全て脱ぎ去り粗放に洗濯機へと放り込む。
血は果て取れるかどうか分からないが、それはまた後で考えよう。
ひとまずは着替えを、と押入れから引っ張り出したスウェットとTシャツを身に着け、そこまで寒さは感じていないが念の為薄手のカーディガンも羽織った。
最後に室内に干したままにしていたスポーツタオルを引っ掴むとそれを肩に掛けながら施錠もなおざりにして隣室へと足早に向かう。
各部屋の入り口には呼び鈴のようなものはなく、翔はおい、いるかと中に声を掛けながらどんどんと扉を叩いた。
するとすぐさまはいはーいと向こう側から返事が聞こえ、程な くして部屋の家主、音也が顔を出した。

「あれ、翔? どうしたのこんな時間に。 あ、この前貸した漫画の新刊が出たんだけど、読む?」
「いや、わりーけどそれどころじゃねーんだ。セシルいるか?」

音也を押しのけ、背伸びをして室内を覗き込む。音也がいるのだから確実にいるとは思うが一応確認のために
声をかけてみれば、すぐに奥から「います」と返事がした。
ソファの影から焦茶の頭がひょこっと飛び出す。
そして翡翠色の大きな瞳を二度三度瞬かせると、翔たちの元へと駆け寄った。

「ショウ、こんばんは。ワタシに何かご用ですか?」

こてんと首を傾げるセシルに、翔は大きく頷いた。

「みてほしい奴がいるんだ」

上がり框がある分いつもより余計に高い位置にある翡翠に、それだけを告げる。
首を横にしたままセシルは一度ぱちりと瞬きしたが、意味を理解するとパッとまっすぐに翔を見返し、表情を硬くした。




|





TOP|back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -