『ぱぱの頼れるところはどこ?』
「……栄えある第一問目に何故これを選んだのか理解に苦しむ上まるで私が頼りない人間のような訊き方に大いに引っ掛かりを覚えるのですが?」
「まぁまぁ、これがいっこめなのは偶々だし、質問くれたやつもそんなつもりはないって。……たぶん。――つっても親父の頼れる所かー」
「んー、父さんの頼れる所……」
「……」
「……」
「……お前たち、何故そこで黙るのだ?」
「いや、急に言われると……」
「何もいくつも挙げろと言われている訳ではないのだから、簡単だろう?」
「それはそうなんだけど……」
「なあ……?」
「はぁ、全くお前たちは……。日頃トキヤがどれだけお前たちのことを……ああほら見てみろ、落ち込んでしまったではないか」
「落ち込んで……落ち込んでなど……」
「でもさ、高いとこのもん取るのは親父よか那月たちのが確実だし」
「ちっさい頃一緒にキャッチボールしてくれたのも逆上がり教えてくれたのもつき兄やレン兄だったし」
「そういうお袋は、ダディの頼れる所はどこだと思ってるんだい?」
「そんなこと。もちろん、全てに決まっている」
「ま、真斗さん……っ」
「出会ってからというもの、俺はトキヤに頼りっぱなしだ。俺がいまこうして幸せに身を置いていられるのも、俺たちがいまこうして自由に日々を過ごしていることも。すべて、お前という存在がなければ無かっただろう。だから」
「真斗さん、ありがとうございます。あなたにそうおも」
「たとえ荷物持ちに不適だろうと電球に手が届かなかろうと瓶の蓋を開けられなかろうと飼い猫に馬鹿にされていようと、俺はお前なしでは生きてゆけないのだ」
「うわあ、すてきな愛の告白ですねぇ」
「うんうん。父さん泣いちゃったよ」
「感激の涙だね」
「いや間違ってねーけど正しくもねーぞたぶんそれ」
『一ノ瀬家のみなさんに質問です〜 休日はどんなことをされてますか?』
「なにもなければ夕方くらいまで寝てるかな」
「僕はお買い物のお手伝いしたり、お母さんのピアノと僕のヴィオラで即興をしたりしてます」
「私も真斗さんの手伝いをしますね。もともと家事は嫌いではないので苦になることはありませんし、普段任せきりになってしまっている分、こういう機会にゆっくりして貰いたいですから。あとは、晴れた日などには庭にシートと椅子を持っていって彼らの散髪をしたりもしますね」
「俺は、専業主婦だから休日も平日もないが……今トキヤが言ったように家事を代わってくれた日などは、友千香とどこかへ出かけたりもするな」
「俺らは晴れたら公園か庭でサッカーしてるよ」
「んで雨とかんときは家で ゲームしたり漫画読んだりな」
「あ、この前は久しぶりにかくれんぼもしたよね」
「そうそう、家ん中ぜんぶ使ってさ。意外と白熱したよなー、あれは」
「元気なことは結構ですがあなたたち、少しは勉強したらどうです? というか、かくれんぼに白熱できる要素なんてありましたか」
『一ノ瀬家の皆さん、学校の成績はどんな感じ(だった)ですか?』
「う……っ」
「いや、それは……」
「ほおら、いい歳をして勉強もせずかくれんぼなどしているから答えられないような成績を取るんですよ。第一。翔、あなたは受験生でしょう。そんなことでちゃんと第一志望に合格できるんですか?」
「かっかくれんぼしたのはこの前の一回きりだっての。それに、俺高校は音也と同じとこ受けるつもりだし。こいつが受かるなら、俺も受かる!」
「え!?なにそれ翔ヒド!!」
「とまぁオトとおチビちゃんはこの会話で察せる通りの成績だね。あぁちなみに赤なんてのは」
「取ってない取ってない! それはさすがの俺でもへこんじゃうよ…」
「……赤点でなくても平均より下回ったなら十分反省して貰いたいものですが」
「俺とナッチは常に片手の指で足りる順位だったよ。たぶん、ダディたちもそうだったんじゃないかい?」
「ええ。そうですね。試験で苦しんだ経験はありませんよ」
『家族の皆は、服や文房具など、日用品を誰かとトレードすることとかありますか? あと、お母さんと次男と末っ子と先生大好きです! メロンパンあげるので一ノ瀬家に入れてください』
「お前しょっちゅう俺に消しゴムやらペンやら貸してくれって言ってくるけどさ。貸してっつって、返ってきたタメシ、ねーよ?」
「あ、はは〜。なんかなくなっちゃうんだよねー、すぐ。さっきまであったはずなんだけどなー。って」
「お前……」
「翔、もうこいつには何があっても何も貸さんでいいぞ。物を大事にできんやつはまずその物の大切さを知るべきだ」
「らじゃー」
「あう……気をつけマス……」
「それでちなみにお袋は」
「俺か? 俺は洋服だな。普段滅多に着ることがないため自分ではあまり持っていないのだ。なのでどうしても必要な場合は、身長の近いトキヤや音也に借りている」
「母さんってホントいっつも着物だから、そうやってたまーに洋服着てると、なんだかドキッとするよね」
「なんつーか、普段の柔らかいイメージとのギャップみたいのあってさ。シャツとか細身のパンツとか履いてっと、マジで、かっけー!!って思う」
「そ、そうか? なにやら気恥ずかしいが、お前たちにそう言って貰えるのは嬉しいな。ありがとう」
「で」
「ん?」
「いや、まだ質問残ってっけど」
「あ、あぁ………好意は素直に嬉しいのだがしかしこのような男だらけの家にメロンパンひとつで女性を放り込んでしまうのは、な。いや物の問題でも量の問題でもなくだぞ。そういうことはその。順を追って、正しくだな」
「母さん、マジメー」
『一ノ瀬一家、一人一人の宝物はなんですか? 誰に貰ったかもお願いします!』
「じゃーん、俺はコレ! リンちゃんに貰った手作り金メダル〜! 小学校のサッカー大会で俺が決めたシュートでチームが優勝したときに「おめでとう」ってくれたやつなんだ。これだけは絶対なくしたくないからいつもは机に飾ってるよ」
「僕はお父さんとお母さんに初めて買ってもらったヴィオラです。今でも欠かさず手入れをしていますし、たまに弾いたりもしてるんですよ」
「俺はヘアピンだな。今日着けてんのじゃなくて、赤いシンプルなやつ。俺がまだちっさかったころお袋にもらった」
「おチビちゃんは今でも十分ちいさいじゃないか」
「うっせ! そんで頭に肘乗っけるんじゃねー!! ったく、そういうお前はどうなんだよ」
「俺かい? 俺は特には、………あぁ、宝物……かどうかはわからないけれど。随分と昔に壊れてしまったというのに捨てられずにとっておいているものならあるよ」
「壊れたのに捨てられないって、それ宝物以外のなんでもねーじゃん」
「そういうものかい? あぁちなみに、オルゴールなんだけど」
「……オルゴール? それはもしや俺が昔、お前がよく眠れるようにと作ったやつか? お前、まだ持っていたのだな」
「うんまあ、今じゃ取っ手がうまく回らなくなってしまって曲を聴くことはできないんだけれどね。……もっとも、俺がリビングで寝ているといつもお袋が弾いているもんだから、メロディーを忘れたことはないけれど」
「なんだ、知っていたのか」
「まあね」
「私の宝物はもちろん、あなたたちですよ」
「そうだな。俺もトキヤと同じだ。お前たちの笑顔が俺の一生の宝だ」
『長男に質問です!一番お気に入りのピヨちゃんグッズはなんですか?』
「そうですねぇ。ピヨちゃんはどれもとーってもかわいいからそのときどきでお気に入りが変わるんですが……いまはやっぱり、翔ちゃんが先日UFOキャッチャーで取ってきてくれた子ですね! クップル先生より少し小さいくらいの大きさのぬいぐるみで、尖ったサングラスをかけて棒つきのキャンディーを銜えてるんですよぉ!」
「あれって、なつ兄には「他に欲しいもんがあってやったらたまたま取れちまったから、やる」って言ってたけど本当は最初からそれ狙いで何回も何回もチャレンジして取ったやつなんだよね。取れたときすんごいガッツポーズしてたし」
「な!? お前見てたのかよッ!?」
「そこのゲームセンターの近くのからあげ屋さんに並んでたら翔が入ってくのが見えたから、追っかけて見守ってみた」
「見守ってみた。じゃねーよ! 気付いたんなら声くらいかけろよな、逆に恥ずかしいじゃねーか!」
「ああもう翔ちゃんだいすきっ! 僕すっごく嬉しいよ。ずっとずっと、大切にするからね!」
「お、おぅ……………へへ、汚したりなんかしたら、承知しねーかんな!」
「うん!!」
『クップル先生の好きな食べ物はやっぱり魚じゃなくてメロンパンですか? メロンパン以外にも好きな食べ物はありますか?』
「タァスエーム・ゲダレッ!!」
「う、おおっ!? ななななんだよ突然!」
「その名を口にしないでください!!」
「おいおいだめだよおチビちゃん。クップルせんせはその頭にサのつく生物が心底嫌いでらっしゃるんだから」
「イエス。名前を聞くだけでもオソロシイ。それを平然と言ってのけるなんてショウ、あなたはもしやオニかアクマなのでは……!」
「んなわけあるか! ……いや悪かったよ。好きじゃねーんかなとは思ってたけど、まさかそこまでだなんて知らなかったからさ。確かに嫌いなものって、名前聞いただけで味思い出したりしてやな気分になったりするよな。今度から気ぃ付ける」
「だってさせんせ。おチビちゃんもこの通り反省しているみたいだし。今回は俺の顔に免じて許してやってくれないかな」
「……そう……ですね。レンがそこまでいうならしょうがないです。許してあげます」
「さすがクップル先生。お優しい」
「イエス、ワタシは心の広い猫。ショウ、以後気をつけてくださいね」
「よかったねおチビちゃん」
「(ただ質問読み上げただけだってのになんでこんな…)」
「それじゃあおチビちゃんの反省も見られたところで改めて質問に戻ってもいいかい、先生?」
「はい。なんでもござれです。…えっと」
「ああ、おチビちゃんが余計なことを言っちゃった所為で質問が頭に入らなかったんだね。質問はズバリ、好きな食べ物はメロンパンか。そしてメロンパン以外に好きな食べ物はあるか。だよ」
「メロンパンはすきです。縁側に座りあたたかい日の光を浴びながらマサトと並んでひとつのメロンパンを分け合い食べる時間……それは至福のとき」
「なるほど。それじゃあメロンパンのほかに好きなもの、なにかあるかい?」
「ミルクです。冷たいのもいいですが、あたたかいものもだいすきです。なかでもマサトの作ってくれるホットミルクはカクベツ。自分で作ろうとしても、マサトのようにはならない。砂糖のほかになにかトクベツなものをいれているらしいのですが「ひみつだ」と言って教えてくれないのです」
「俺も昔何度か飲んでいたからそれの中身は知っているが……、そういうのは自分で見つけ出してこそだからね。健闘を祈るよ」
「はいっがんばります!」
「……なあ、ちょっといいか。ホットミルクで思い出したんだけど」
「うん? どうかしたかいおチビちゃん」
「クップルお前、この前晩飯が寿司のときふつうに食ってなかったか? しかもうまそうに。冷たいのならともかく甘いホットミルクが寿司と合うのか? って疑問に思ってたからよっく覚えてる。…まああれがお袋の作ったやつだったんなら寿司と合ってもおかしかねーけど」
「お袋のホットミルクは不思議とどんな料理ともケンカしないからね」
「イエス。あれはまさにキセキの飲み物。神秘です。すばらしい…」
「いや注目するとこそこじゃねーから。お前寿司食えんじゃん!」
「? おすしは好きです。とくにトロはいい。口の中にいれた瞬間じゅわりと広がる風味や柔らかな食感はたまりません」
「お前さっきサ、……の付くやつにものすっごく怯えてなかったかよ?」
「それとこれとは話がベツなのです」
「別か? それ別にしてもいいのか?」
「小さなことを気にしていては、良きニッポンダンジにはなれませんよ」
「そうだよおチビちゃん。そうやってちっちゃいことを気にしているから、いつまでたっても君はおチビちゃんなままなんだよ」
「身長は関係ねーだろ!? それにちっちゃくもねー!」
『翔君は大きくなるならどのくらいおっきくなりたいですか?家族の中から選んでください』
「……お前、いま意図的にこの質問選んできただろ、さっきの流れで」
「うん? そんなことはないさ。たまたまだよ、たまたま」
「うっそくせー。っつーか、”大きくなるなら”って、もう成長する見込みがないみてーな言い方だな。言っとくけど俺の成長期はまだまだこれからなんだかんな!そんで家族の中からなんて生ぬるいぜ!親父も那月も軽く超えて、いずれは龍也さんをも超える高身長になってやる!!」
「そうだね。夢を見ることは自由だ。たとえそれが、どんなに叶う可能性のないことであろうとも夢を抱く、そのこと自体に意味があるんだよ。未来に希望を思い描けば、その人の人生はそれだけで光り輝いたものになる。だからその夢は絶対、なくさずにいつまでも持っていてほしいな。兄として応援してるよ」
「めっちゃかっこよくまとめてっけどお前、応援する気微塵もねーだろ」
「おや、なんだばれちゃったか」
「バレバレだこんちくしょー!! 見てろよぜってーお前は抜いてやっかんな!!」
「あはは、じゃあその時を楽しみにしているよ」
『翔ちゃんお酒のんで。』
「だが断る!」
「こら翔、精神誠意回答しろと言っただろう。と、言いたいところだがこれに関しては致し方ないな。以前翔本人も言っていたが、俺としても体のことを思うと……あまり呑んでほしくはない」
「俺の場合は絶対に何も起きない、なんて断言はできねーからなー。もう二度と、お袋たちにあんな顔はさせねー! って、決めてるから」
「……」
「それに! 俺まで酔っ払っちまったら本格的に収拾つかなくなりそうだしな。毎回砂月が出てきてるわけじゃねーし、親父は俺らの世話しようにも誰かさんがべったりで全ッ然離してくれねーみたいだしな〜?」
「なっ!! お、おおお俺はそのようなことをした覚えなどないぞ!?」
「最近だと前にも増してべったべただかんなー。仲好いに越したことはねーけどさー、見てるこっちが恥ずかしいっての」
「……!!!?」
「とまあそんなかんじだからさ、わりーけど俺は一生酒は呑まない。ストッパーになんなきゃってのもあるけど、素面でだってあいつらの馬鹿見てんの案外楽しいんだぜ」
『翔ちゃんが普段着てる服はどんな服ですか??』
『お母さんはいつもどんなお着物を着てるんですか?』
『一ノ瀬一家のみんなはどんなファッションが好きですか?(いつもどんな格好してますか?)』
「詳しくはほかのページを見てください〜」
「なつ兄それ言っちゃだめなやつ!」
「でもあれ参考になんのか?」
「ならないことはないんじゃないかい。趣味に走っていることは多いけれど、俺たちがそれぞれ絶対に着そうにない服装は殆どしていないと思うよ」
「あなたたち、メタ発言はそのくらいにしておきなさい。まずは翔、指名を受けているあなたからですよ」
「へーい」
「家族の中だと、翔が一番おしゃれだよね。買ってくるもの自体もそうなんだけど、ひとつの服でも毎回全然違う組み合わせにするからたっくさん服持ってるような錯覚しちゃう」
「実際はそんな持ってるわけじゃないんだけどな。音也と違って俺はまだバイトできねーからさ。こづかいだけじゃどうしたって月に何着も買えねーじゃん? ゲームとか漫画だって欲しいしさ」
「それで腕が磨かれたということですか。もともとのギフトもあったのでしょうが。その才能には心底関心してしまいます」
「へっへーん、俺もこれに関してはそこらのやつには負けねー自信あるぜ! ……ってぇ、なんか微妙に質問からズレてねーか?」
「言われてみれば、私としたことが。質問は普段どのような服装をしているか、でしたね」「んー、最近だと変形デザインのやつがブームでよく着てるぜ。左右で形とか柄なんかが違ったり、あとはモモンガとかウィングスリーブとかも好きだな。それとぜってー外せないのが、ハット! なんてったって俺さまのトレードマークだからな。たけーけど、ほかのもの我慢してもハットだけは二ヶ月に一回は必ず買って、外出るときは絶対被ってくぜ」
「身長もごまかせるしね」
「うっせ! ってことで次、お袋な!」
「む、俺か。俺は知っての通り、着物を普段着としている。派手なものはあまり好かんため大概が落ち着いた色合いのものばかりだが、たまに柄物も着たくなることがあるな。と言ってももちろんごてごてとしたものではなく、足元や袖口にさりげなく意匠の凝られたものだが」
「私は仕事柄、スーツでいることが多いですね。私服には特にこだわりはありませんが、どちらかといえばかっちりとしたスタイルを好みます」
「ダディはネクタイやループタイなんかはたくさん集めているんじゃないかい」
「ああ、そうでしたね。ネクタイは仕事着の一部としてですが、ループタイは確かに目に付くとついつい買ってしまいます。自覚はありませんでしたが、恐らく好きなのでしょうね」
「おじいちゃんだね」
「うるさいですよ」
「俺は生来窮屈なのは苦手だから、私服も襟口が広いものが多いかな。シャツを着るときもあるが、そのときもボタンは最低でも上からふたつは必ず開けてあるよ。あとはそうだな、ストールやジゴスリーブのものが好きで種類もいろいろ持っているかな」
「俺はファッションには特にこれといったこだわりないなー。ううーん、しいていうなら……動きやすさ重視? パーカーとか七分丈が多いよ。あ! でもチェック柄は好きだな。シャツもパンツもスニーカーも、チェック柄のやつはいっぱいあるよ!」
「最後は僕ですね。ええっと僕もレンくんと同じで、かっちりしているものよりもふわっとしたシルエットのものが好きです。アイテムだとカーディガンやリボンタイが好きですね。あっそうそう、お買い物に行くときは、いっつもさっちゃんとふたりでじ〜っくり相談して決めるんですよ〜。いろいろとアドバイスしてくれるのでとっても助かってます」
「那月ひとりに選ばせたりしたらとんでもなくファンシーなのとか持ってきそうだもんな。そりゃあ砂月も必死だな」
「コンサートの衣装は確か、美風さんが選んでくださってるんでしたか?」
「はい! アイちゃんもとってもおしゃれさんなので、僕、衣装合わせはいっつも、今度はどんなデザインなのかな〜ってすっごく楽しみにしてるんです。私服もそうですが僕とさっちゃんで色違いやワンポイント違いになっていることが多くて、とってもとーってもかわいいんですよぉ! それとともちゃんも時々個人名義で僕の衣装デザインをしてくれるんですが、ともちゃんのデザインは襟や裾が変わった形のものが多いのでそっちもかわいくて大好きです」
「そうだな。あいつの作る服は模様や形そのものが変わっていることが多く、実に面白い。那月たちの衣装はすべて手が空いていたから、趣味みたいなものだからと言って無償でくれるが、改めて今度礼を言わねばな」
『いつも寝るときはどんな格好をして寝ますか? 教えてください!』
「ふむ、服装繋がりだな。俺は冬は冬用、夏は夏用の寝間着を着ている。着古した浴衣などを直したものだ。羽織るだけで着られるようにしてあり、帯も縫いつけてしまっているからな、楽でいいぞ」
「へえ〜。着物で寝るのってめんどくさそうって思ってたけど、それなら確かに楽そうだね。母さん俺にも作って!」
「ああ、もちろん構わんぞ。しかしお前の場合は甚平のほうがよさそうだな。今度、適当な布地を探してこよう」
「わ〜いありがとー!」
「それはそうと、質問は普段寝る際に着ている格好だ。お前は確かTシャツにす、スエットだったか」
「そうだよ。冬の寒い時期は上にパーカー着るけど、下は一年中スウェットかな」
「俺も音也と似たようなもんだぜ。……でぇ、問題なのが…」
「どうしたんだいおチビちゃん、俺やナッチをジロジロと見たりして」
「あのねあのね、僕のパジャマはなんと、ピ」
「自重」
「カチュウくんなんですよぉ〜! 市販のものは残念ながら僕にあったサイズがなかったので、一番大きなサイズをお母さんに手直しして貰ったんです。肌触りがさらさらふかふかしててとぉっても気持ちいいんですよ!」
「さすがおチビちゃん、まさに職人芸だね」
「ありがとよ、問題その二」
「……ふむ。その問題、というのがいまひとつわからないけれど……俺はもちろん、布団に入るときはいつでも生まれたままの姿だよ」
「だぁからそれが問題だっつってんだよ! 頼むからせめてなんか一枚は着ろ!!」
「残念だけど、いくらおチビちゃんの頼みでもこのスタイルを変える気はないよ」
「レン……ワタシのお願いでもだめですか?」
「うん? 先生も、俺に服を着て眠ってほしいのかい?」
「イエス。レンは、とてもあったかい。昼間いっしょに眠っているととても安らぐのです。だから、できれば夜も、眠りにつくときはレンの腕の中がいい……。でもワタシ、ハダカはちょっと……はずかしい……」
「恥ずかしいことなんて何もないさ。男同士、肌と毛皮をくっつけ合って」
「だめです! ……パジャマがいいです」
「…………あぁ。先生にこんなかわいくお願いされたら、袖を通さないわけにはいかないね。オッケーせんせ、今日は特別にパジャマを着て寝ることにしよう。だから機嫌を直して。ね? 今夜は一緒に素敵な夢を見よう」
「はいっ! レン、ありがとうございます!」
「……」
「いやあ飼い猫に負けちゃったね、翔。ドンマイ!」
「べべつに負けてねーし最終的にあいつが服着て寝るなら俺はなんでもいーし」
「……ショートコントはそのくらいで構いませんか? このままでは埒が明きませんから、次の質問に行きますよ。ああちなみに私は黒の一般的なパジャマを愛用しています。デザインにこだわりはありませんが、良質な睡眠を得るため素肌に余計な負担のない、肌触りの良いを選んだのでなかなか気に入っていますね」
『翔君に質問!!お兄ちゃんたちや両親の憧れてるとこ教えて』
「なんか俺への質問多くね? これで最後か?」
「いいなー翔、モテモテじゃん」
「へへ、まあ悪い気はしねーよな。でも兄弟や両親の憧れてるとこ、か……。親父たちは……そうだな、二人のあの感じ、っつーか。あーなんて言やいーんだ? うまく言えねーけど二人とも、尊敬しあってて尊重しあってて支えあってて、お互いがお互いに、こいつじゃねーとだめなんだー! って、感じだろ? そういうの見てると、俺も将来結婚したらこんな夫婦になりてーなって思う」
「ふんふん。じゃあさじゃあさ、兄弟の憧れてるとこは?」
「那月はやっぱ、普段あんだけぽやーーーーーっとしててもヴィオラに関してだけは絶対に手ぇ抜かねーとこだな。レンも、あいつふらふらしてるようで案外俺たちのことよっく見てんだよな。そんでその場その時の状況で自分がどう動くべきかってのちゃんと把握してんの。そういう、周りを見る力はすげーなって思うぜ。…それが俺をからかう方向にいったときはイラッとすっけどな。砂月は言うまでもねーが俺にとって全部が憧れだ! いつか俺もって、ガキの頃からずっと追っかけてる目標だからな。でも追いつくだけじゃねー、追いついたら追い抜かして、砂月をも超える男に俺はぜってーなってやる!」
「う〜ん、あと25cmかー。道のりは長そうだね」
「……一応言っとくけど、身長だけの話じゃねーからな?」
「あれ? そーなんだ?」
「……」
「………」
「…………ん? なんだこの間? さっさと次の質問行こーぜ」
「え? …ええッ!? ま、待って待って翔俺まだ言われてない!」
「あ? だってねーもん」
「せめて考える素振りはしてよ俺泣いちゃうよ!?」
TOP|back