だらだら長い









「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! みんな大好き、嶺二お兄さんだよ〜! ねえねえみんな、今日はなんの日だか、わっかるっかな〜?」

「どわっ!? ……ったく、急に現れて耳元で大声出すんじゃねえよバカ嶺二」

「貴様を呼んだ覚えなどない、帰れ」

「ミューちゃんひどい!」

「今日、7月13日といえばお盆の初日だね。一昨日ナツキとセシルが兄弟とお馬さんを作るんだって、キュウリを抱えてた。あとは、日本標準時制定記念日も今日だったと記憶してる」

「キュウリ馬か。もうそんな季節か、道理であちぃわけだぜ……。よっしゃいっちょロックな馬の作り方でも教えに行ってやるか。この時季のキュウリは太くて食いごたえあるしな」

「ふん、そんな低俗なもので先祖の霊を迎えようとは貴様、つくづく野蛮な男だな」

「ぁあ? てめ、ロックバカにしてんじゃねえよ。だったらどんなんならいいってんだ」

「神聖なものを迎えるのであるから、乗る物も神聖でなければならん。すなわち、ペガサスもしくはユニコーンがふさわしいだろう。……もっとも、あの愚猫にそのような高尚なものが作れるとは思わんが」

「あいつは別に覚えがわりいわけじゃねえししっかり教えりゃあやれるだけの器用さはある。ヒガサだろうがユージコージだろうがわけねえっての」

「はいストーップ! ストーーップ! ふたりとも肝心のぼく放って心底わけわかんないことで争うのはやめて!」

「レイジを放っておくのは別に構わないけど、その無意味な言い合いをやめてほしいというところにはボクも同意だよ。そんな小学生の自由研究みたいなものを作ったらあの家にメイワクになるでしょ」

「いやぁー……彼らはむしろもっとスゴイもの作りそうだけどなぁー……。ってそうじゃなくて! お盆でも日本……えーっとなんちゃら記念日でもなくて、もっと大事なことがあるでしょほら! ほらほら!」

「だーもううっせえなぁ。知るかよんなこと」

「日本における7月13日に行われる風習、制定された記念日でボクの知る限りそのふたつ以上に大切な事項は記録にはないよ」

「……え? え? ほんとに? ほんとにみんな忘れちゃってる……?」

「忘れるも何もなかろう。そんなことよりも寿。いつになったらそのドルチェに手をつけるのだ。よもや貴様、俺の作ったドルチェを一口も食わず駄目にする気ではないだろうな?」

「へ? ドルチェ……? ってこのフルーツもりっもりのやつ?」

「愚問だな。それとも、お前にはこの場にそれ以外のドルチェでも見えているのか?」

「いや、ないですけどぉ……確かにぼくちんが登場した途端に目の前に置かれたなーとか美味しそうだし食べてもいいのかなーって思ってたけど、ほんとにぼくの分だったんだ? なになに、次の新作?」

「いや、店に出すつもりはない。手を抜いた覚えはないが、このドルチェは俺の矜持に反する」

「えぇーなんでさもったいない! ぼくちん甘いものそこまで得意じゃないからこういうフルーツ盛りだくさんでクリーム少なめなほうが好きだし、そういう女の子も結構いると思うよ?」

「ふん、余計なお世話だ。俺は俺の作りたいものを作る。客に媚びるような真似はせん」

「……どこの執事喫茶だっつー接客してるやつがよく言うぜ」

「何か言ったか黒崎?」

「べっつにーぃ」

「レイジ、早く食べないと本当にだめになるよ。今日は気温も高い上に湿度も高いから。いまの時点で、おいしさが14%は減少してる」

「ええっ!? そりゃあ大変だ、急いで食べないと! …………と、……あー……っと」

「……レイジ? どうかした?」

「んだよお前、食わねえならおれが食っちまうぞ」

「俺が作ったのだ、不味いなどということは万にひとつもないのだから何を躊躇うことがある」

「いやぁ、そこはもちろん全然まったくこれっぽっちもぼくちん疑ってないんだけども」

「甘さのことなら安心していいよ。ちゃんとボクが計量の指示をしたし。それに今回は、フルーツの甘さをより引き立たせるために砂糖をウンと少なくさせたから」

「それはすっごい助かる! けど……けどなあー……」

「煮え切らん奴だな。言いたいことがあるならはっきり言え」

「……もしかしてレイジ、最近太ったのを気にしてる? 先月よりも、丁度1kg」

「ギクギクゥ! アイアイ、ど、どうしてそれを……」

「そんなの、見ればわかるでしょふつう」

「いやわかんねえだろフツー」

「でも、それなら丁度良かった。はい、これ」

「うん……? なに、これ? たぬき……の腹巻き?」

「低周波を流すことで筋肉を刺激して腹部を引き締めるダイエット器具だよ」

「……なんかこれ、頭と手足は立体なのに胴体だけ薄っぺらくてしかもすっごい切なげーな表情でこっち見てるからなんだか無性に申し訳ない気持ちになってくるんだけど」

「これ買いに行ったとき、ナツキもいたから。そのたぬき、本来は中に氷袋やカイロなんかを入れるものなんだけど。ナツキが、このほうがかわいいからって」

「あ、あははー。見た目はとってもシュールだけどぉ、これなら美味しいケーキ食べても華麗にシェイプアーップ☆できるね! ありがとアイアイ!」

「うん、どういたしまして。……あとはランマルだね」

「……ちっ」

「いやぁミューちゃんのケーキはおいしいしアイアイもなんだかいつもより優しいし、お兄さんいまとっても幸せかも……」

「おい嶺二。それ食ったら出掛ける。車出せ」

「……ってランランはいつも通り横暴だね!?」

「んなことねえだろ。食いてーもんがあんだよ。車出したらお前も食えんだからいいじゃねーか」

「とか言って、どうせお金は全部ぼく持ちなんでしょ! お兄さん騙されない!」

「ちっ、めんどくせえな。つべこべ言わずにとっとと行くぞばか嶺二」

「わわっ! ランランそこ引っ張ったら苦しい! 苦しいからー!」

「……」

「……」

「行っちゃったね」

「……辛うじて完食したとは言え、あれでは俺のドルチェを碌に味わっていなかろう。黒崎のやつ、戻って来たら締め上げてやる」

「それにしても。自分で最初に言ってるくせに、どうして気が付かないんだろうね、レイジは」

「ふん、そのほうが都合がいいだろう。気付けば付け上がって余計に煩くなるだけだからな」

「……うん、それもそうだね」









れーじ先輩バースデーおめでとうございます
たいへんなぐだぐだに仕上がりましたありがとうございますおめでとうございます






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