十二話 理性と本能
あれから数週間後。
一行は草原に流れる川に沿って歩みを進めていた。
川上の方へと歩いて行くうちに、やがて景色は草原から渓谷に変わった。ゴツゴツした岩肌の崖はしっかりしていたが、下を見下ろすと川の激流にのまれそうで、足が竦む。
そんな場所を歩いていると、小さな洞窟を見つけた。小さい、と言っても、一行全員がゆったりできるほどの広さはある。奥に続くような道はなく、風をしのぎ、休憩を取る分には丁度良かった。
もう日も暮れかけていたので、今日はそこで野宿をすることになった。
乾いた枝を集めて火をつけ、いつも通りの三人で夕食を終えた。
紗夜は洞窟の外で佇む殺生丸を見る。彼は遠くの方ばかりを見て、不快そうな顔をしていた。
「……あの様子じゃと、何か気に入らない臭いがされるのじゃろう。犬夜叉とか」
同じく殺生丸を見ていた邪見が言った。
「……犬夜叉……?」
紗夜は聞き慣れない名前に首を傾げる。邪見は殺生丸に聞こえないように、小声で話し始めた。
「犬夜叉というのは、殺生丸さまの弟……と言っても、人間の女から生まれた半妖じゃ。つまりは殺生丸さまの腹違いの弟に当たる。殺生丸さまは半妖なんぞと違い、立派な大妖怪じゃからな!」
殺生丸の話をするときの邪見は、まるで自分のことを話すように誇らしげだ。
「そして、その憎たらしい犬夜叉は父君の刀……牙の剣、鉄砕牙を殺生丸さまから盗み、さらには殺生丸さまの左腕まで、何の躊躇もなく切り落としたのだ!」
「!!」
殺生丸の左腕がないことは、紗夜も気づいていた。
でも、まさか弟に腕を切り落とされたなんて。衝撃的な事実に、紗夜は息を呑んだ。
それから邪見は、二人が犬猿の仲であり、犬夜叉は超単純な暴力男だと紗夜に聞かせ続けた。そのため、紗夜の『犬夜叉』という人物に対しての印象は、至極最悪なものとなったのだった。
◇
やがて夜は更けていき、邪見と話している間にうとうとしていたりんは、いつの間にか眠ってしまっていた。ふと空を見上げると、ほぼ円形の月が浮かんでいる。
――明日は満月、か……。
紗夜はゆっくりと立ち上がると、邪見に頭を下げた。
「おやすみなさい」
「お、紗夜、どこに行くのじゃ?」
「少し暑いので、今日は外で寝ます」
そうして紗夜が洞窟の外に一歩、足を踏み出した瞬間――。
「見つけたぞぉ!!」
「喰ってしまえーぇっ!!」
恐ろしい獣のような咆哮を上げながら、空の雲の切れ間から幾十もの妖怪が一斉に降りてきた。
妖怪たちは、一直線に紗夜に向かってくる。紗夜は一瞬驚いて目を見張ったが、逃げることはなかった。
妖怪たちが紗夜に体当たりしてくる寸前。
――ザンッ!!
鋭い音がして、紗夜は反射的に目を閉じた。
そして、何事かと目を開けて見れば、妖怪たちは一瞬にして肉塊と化していた。誰がやったかなど、妖怪の体を裂いている傷跡を見れば一目瞭然。
「殺生丸様……!」
紗夜は驚いて、爪に付いた血を払っている殺生丸を見る。
――助けてくれたの……? 私が死なないこと、分かっているはずなのに……。
そう思った瞬間、とくん、と心臓が鳴った。
「数が多すぎだ。あまり自らの結界に頼るな」
殺生丸が紗夜を静かに見つめながら言う。口調は少し厳しかったが、それも自分を心配してくれているのだと感じて、紗夜は素直に頷いた。
「はい、ありがとうございます」
紗夜はぺこりと頭を下げ、少し離れた地面の上に横たわった。
「……何じゃ、今のは……」
邪見は呆然と立ちつくし、その様子を見ていた。
沢山の妖怪が紗夜を狙ってきたのは驚いた。だが、それ以上に――。
――い、今の殺生丸さまのお言葉……まるで、あまり無理をするなと言わんばかりではないかっ! この邪見……!お仕えしてこの方、そのような労いのお言葉はかけて頂いたことがございませぬ……! ううっ、殺生丸さま〜……!
邪見がぽたぽたと涙を流していると、
「も〜っ、邪見さまったら、うっとうしいよ。そんなに殺生丸さまを見たら、殺生丸さまが可哀想だよーっ……ぐー……」
りんが寝言を言った。
「おのれ、小娘……っ! どんな夢を見とるんじゃ!!」
邪見はぷりぷりしながらそう言ってから、盛大な溜息をついた。
◇
翌日、一行は再び川の流れに沿って歩き出した。変わらない風景はまだまだ続きそうである。
「紗夜ちゃん、どうしたの? 今日は歩くのゆっくりだね」
「え……そ、そうかしら……?」
口籠る紗夜の声に、邪見は振り返ってみた。
確かに、普段なら阿吽の隣を歩いている紗夜が、今日はその後ろを歩いている。その足取りは軽く、足を挫いている風でもない。どちらかというと、意識的に遅く歩いているようだ。
邪見は不思議に思いながらも、再び前を向いて歩き出したのだった。
そして、この日の紗夜は特別変だった。
最近ようやく話すようになったかと思っていたのに、あまり口を開かず、さらには邪見と視線を交わすことも一切なかった。
視線を交わさないのは、殺生丸に対しても同じようで、紗夜が彼を見ることは一度もなかったのだ。邪見は心底不思議に思ったまま、一行は夜を迎えたのだった。
◇
今晩は洞窟がなかったので、紗夜たちはそのまま地面に焚火をし、夕食をとる。
「ごちそうさまでした」
紗夜はいち早く食事を終えると、静かに席を立った。
「紗夜ちゃん、どこか行くの?」
りんが不思議そうに尋ねると、紗夜は歩みを止めて顔だけ振り返る。
「……今日は、一人で考えごとをしたいの……」
微笑んだ顔が、少し寂しそうだった。
「何じゃー紗夜のやつ、今日はずっと様子がおかしいわい」
「邪見さまがなんかしたんじゃないの?」
「そう言うお前はどうなのじゃ!? そもそもお前は――」
二人の言い合いを少し離れた所で聞きながら、殺生丸は遠ざかる紗夜の背を静かに見つめていた。
◇
「……………」
紗夜は、りんたちのいる所から離れた岩の上に腰を下ろした。
もう直に月が昇り、本当の夜がやってくる。今夜は満月だ。紗夜はそっと瞳を閉じ、朝を待とうと思った。
――しかし。
ジャリッ、と地を踏む音が聞こえて目を開ける。視線は伏せたままにしておいた。
誰かなんて、見なくても分かる。
「……殺生丸様……」
「……何かあったのか?」
「いいえ……」
紗夜の顔が、ほんの少し苦しそうに歪んだのを殺生丸は見逃さなかった。
「では、私の目を見ろ」
「……っ……」
紗夜は目を伏せたまま、静かに小さく首を振る。悲しげな表情は、そうすることが出来ない、と言っていた。
「……紗夜、昨日から不自然だ。何を隠している? この殺生丸を誤魔化せるとでも思うたか」
「!」
紗夜が思わず顔を上げようとした瞬間、
「女ァ……!! 喰ろうてやるぅ!!」
紗夜の背後の切り立った崖の上から、妖怪の恐ろしい咆哮が響き渡った。反射的に立ち上がった紗夜を、殺生丸が庇うように前に出る。
暗闇の中、妖怪の目がギョロギョロと光っているのが見えた。その数は昨日の比ではない。大まかに数えても百はいる。
――どういうことだ? なぜこれほどの数の妖怪が、一度に紗夜を襲う?
殺生丸は闘鬼神の柄に手をかけた。
「グアアアアアッ!!」
妖怪たちは一斉に叫びを上げると、殺生丸たちの方へと飛び掛かってきた。
――ヒュッ、ドオオオオンッ!!
刹那、刀を抜く音がして、激しい爆発音が辺りに響く。
「な、何ッ!?」
りんと邪見が音のした方を振り返る。
殺生丸の前にいた妖怪は、一匹残らず消え去っていた。殺生丸はしなやかな動きで、刀を納める。紗夜は呆然と彼を見つめていた。
――強い……! この数の妖怪を、一瞬で……!
恍惚と見惚れていて、紗夜は気が付かなかった。
自分が彼の瞳を見て、彼が自分の瞳を見ていたことに。――金に輝く満月が、雲の中から現れたことに。
殺生丸と紗夜の視線がぶつかった、その瞬間。
「!!?」
殺生丸の全身が、ドクンッと脈打った。
「っ……!!」
しまった、紗夜が息を呑んだときにはもう遅く。
殺生丸は眉を寄せて、自らの心臓のあたりを強く押さえ付けていた。
「は、っ……くッ……」
殺生丸が荒く息をしながら、苦しげな呻きを漏らす。
紗夜は自分が今何をしなければいけないか、分かっていた。自分の願いとはまるで逆の、でもきっと殺生丸が望んでいること。
――ここから、逃げること。
でも、逃げたくない。殺生丸を放っておきたくない、そう思った。
「っ……殺生丸様っ!!」
駄目だと分かっていたが、紗夜は思わず殺生丸の方に駆け出す。
だが、あと一歩という所で、殺生丸が苦痛の濃い声をあげた。
「っ……来るな、紗夜! 早く……走れ!」
「!!」
紗夜は弾かれたように足を止めると、一瞬迷って踵を返し、勢いよく走り出した。苦しそうな殺生丸の息遣いを後ろに聞きながら、紗夜は泣きそうになってしまう。
――迂闊だった。
今日が望月の夜であると知りながら、殺生丸の側に居てしまった。こんなことになるのなら、初めから殺生丸にすべてを話しておくべきだったのだ。
満月の夜、紗夜の身体は妖怪にとって最も有益なものになるということを。
そう考えながら走っていたとき、紗夜はりんと邪見がこちらに出てきているのを視界の端に捉えた。
「りんちゃん、邪見様、来ちゃダメ!!」
紗夜の叫び声にきょとんとした二人だったが、紗夜の背後に目をやって、驚愕の表情を浮かべる。
「紗夜ちゃん、後ろっ!!」
りんの悲鳴に近い叫び声に、後ろを振り返ろうとしたとき。
――ガッ!!
身体が物凄い力で後ろに引かれた。
「きゃあっ!」
驚いて反射的に瞑った目を開けると、そこには確かに彼の姿がある。
でも――。
「……せ、殺生丸、様……っ……?」
殺生丸はもう、いつもの殺生丸ではなかった。
紗夜の胴を抱いている彼の腕は、力の加減などないほど強く紗夜を引き寄せている。爪はいつもより鋭さを増し、そして、優しかった殺生丸の瞳は、飢えた獣のように赤く染まっていた。
「――せ、殺生丸さまっ!」
邪見が殺生丸を呼ぶが、殺生丸には届かない。
殺生丸の目には、獲物としての紗夜しか映っていなかった。
「殺生丸、様……」
変わり果てた殺生丸の姿を見て、紗夜は心臓を抉られるような心地がした。
辛い時に抱きしめてくれた腕も、優しい瞳も、今ここにはない。彼をこんな風に変えてしまったのは、他でもない自分だ。
「殺生丸さ――……ッああっ!」
彼の名前を呼ぼうとしたとき、腕の力をきつく強められ、掠れかかった悲鳴が漏れる。苦しさに涙が滲んだ。
――すると、
「ぐ……っ……あ……紗夜、ッ……」
「!!」
殺生丸が額に汗を浮かべながら、紗夜の名を呼ぶ。一瞬だけ腕の力が弱まって、赤い瞳が困惑したように揺れた。
殺生丸は葛藤している。紗夜にははっきりと分かった。そして、それに胸が締め付けられた。
紗夜を殺したい、殺すまいとする相反する思いが彼の中でせめぎ合っているのだ。
それはつまり、殺生丸が紗夜を殺したくない存在だ、と僅かながらでも思ってくれているということである。
力を求める妖怪の本能、殺したくないという理性。殺生丸はその狭間で苦しんでいる。
紗夜はどうするべきか迷った。
本来紗夜の望みは“永遠の死”を迎えること。
殺生丸なら、紗夜の身を守る結界も破り、この身を喰らうことも出来るはずだろう。
そうして今殺生丸に喰らわれれば、紗夜の望みは叶う。
――だが、こんな形で彼にそんなことをさせていいのだろうか。彼は本能と闘ってまで、自分を生かそうとしてくれているのに。
紗夜が死んだあとで、それを自分が手にかけたと知ったら、彼はどう思うだろうか……?
――自分のせいで誰かが死ぬ……。その怖さも寂しさも、自分への嫌悪も、私は知っている……。それがどんなに辛くて恐ろしいものか……、一番知ってるのは私だわ……。
紗夜は身体の力をすうっと抜いた。その分殺生丸の腕の力が強まって、息が苦しくなる。
「っ……う、」
どんどん息が出来なくなって、目の前が徐々に霞んできたとき。
――バチバチッ!!
「!!」
弾くような音がして、殺生丸が僅かに身じろいだ。
紗夜の周りには、敵意を持つものを排除するあの結界が出来ていた。
バチバチバチバチッ!!!
「く、うッ……ぐあッ!!」
殺生丸を拒絶する結界が、殺生丸を消し去ろうとする。殺生丸は、痛みに呻きながらも紗夜を放すことはない。
「いやっ!! 殺生丸様っ!!」
殺生丸がこの結界で死ぬなんて、どう考えてもあり得ない。
そう、分かっているはずなのに。
何度も見てきた、妖怪が自分を喰らおうとして死んでいく光景。それが頭の中をぐるぐると回り続けて、紗夜の思考回路を完全に狂わせた。
――死んでほしくない。殺生丸様には、絶対死んでほしくない……!!
「っ……お願い、殺生丸様……!! もうやめてっ……!!」
紗夜は泣きながら彼の身体に手を回し、強く抱きしめた。
殺生丸の腕の力で呼吸も苦しかったが、そんなことは頭に入らないぐらい、殺生丸が死ぬのが嫌で嫌でたまらなかった。
「殺生丸様……もとに、戻って……!」
ありったけの気持ちを込めて彼を抱きしめると、殺生丸の腕の力が微かに緩んだ。
やがて、殺生丸は腕をだらりと下ろすと、ふらりと紗夜にもたれかかった。
「! 殺生丸様……!!」
「っ……紗夜……」
すうっと殺生丸の爪がいつも通りに戻り、赤かった瞳も元の金色の光を宿している。
「良かった……殺生丸様……!」
ほっと安心しながら殺生丸の身体を支えると、彼は荒い呼吸を繰り返しながら紗夜に言った。
「……すまない……苦しかったか……?」
「っ!」
――苦しいのは自分だって一緒だったのに……。私より、ずっと苦しかったはずなのに……。
「ごめんなさい……!! 私が……もっと早くに、言っていればよかった……! そうすれば、殺生丸様はこんなことに……ならなかったのに……っ!!」
涙と嗚咽が混じりながらもそう叫ぶと、結界のせいでボロボロに傷ついた殺生丸がふと言った。
「構わん。お前は、死ななかった……」
「!!」
紗夜ははっと息を呑んだ。
殺生丸はもたれかかっている紗夜の瞳を見て、静かに言う。
「先ほど、お前は私に喰らわれ死ぬことが出来た。だが、お前はそれをしなかった。……己の望みと何を秤にかけたのか――。だから構わん、気にするな」
――私が秤にかけたもの。
私の望みと、殺生丸様の心。
殺生丸様は、どうして分かってしまうんだろう。
紗夜は泣きながら掠れる声で返事をして、こくりと頷いた。
いつもより近い、殺生丸の肩を抱きしめて。
◇
「ねえ……邪見さま、どうしてりんはこっちを見てなきゃいけないのー?」
「小娘のお前には、まだ早いわい」
りんは紗夜たちとは反対方向を向いて、地面に屈んでいた。それを指示したのは、言うまでもなく邪見である。
「邪見さまのケチ。心が小さいから、背も小さいんだよ」
「な、なんじゃと……!! これでも少しは気にして――」
「あーっ!!」
「な、なんじゃ! 突然!!」
邪見の言葉を遮って、りんが叫んだ。そして、さっと立ち上がると、空を見上げて指を指す。
「見て! すごい数の妖怪だよ!」
「!? な、なんと……!」
邪見もりんの指し示す空を見上げると、数百、数千と言ってもいいぐらいの数の妖怪が、ひしめき合って空を泳いでいた。
「あんなにいっぱい……どこ行くのかなぁ?」
のんびりした口調でりんが言う。邪見は、嫌な汗が流れるのを感じた。
「……なありん、なんか近づいて来てる気がするのは、わしの気のせいか?」
「え?」
りんと邪見が空を見上げると、
「ガアアアァッ!!」
咆哮とともに、妖怪の群れが押し寄せてきた。
「「きゃあああっ!! 殺生丸さまあぁぁっ!!」」
◇
「「!?」」
邪見とりんの声に、紗夜がそちらを向くと、二人は死にもの狂いでこちらに駆けてくる。
そして、その背後には何千ともいえる妖怪の群れが迫ってきていた。
狙いは間違いなく自分だ。
紗夜は瞬時にそう判断して、殺生丸を見た。
殺生丸は迫りくる妖怪が近付いてくるのを待つように、闘鬼神の柄に手をかけている。
でも、彼は今怪我をしている。なにより体力をかなり消耗しているのだ。
これほどの数の妖怪を相手するのは、今の殺生丸の身体に確実な負担を掛けてしまう。そのうえ、守らなければいけない者が三人もいては、全員の命が危ない。
――紗夜はぎゅっと拳を握って覚悟を決めた。
妖怪の狙いは紗夜なのだ。ならば、自分がここを離れればいいだけのこと。そうすれば、邪見もりんも、殺生丸も助かる。
妖怪の群れが、目の前まで迫った瞬間。
殺生丸が闘鬼神を抜こうとするのと、ほぼ同時だった。
「殺生丸様」
紗夜の静かな声に、殺生丸がそちらを振り返ると、紗夜は儚げに笑っていた。
「……?」
「ありがとうございました」
紗夜はそう言うと、すぐ後ろにあった崖の方へと後退する。
殺生丸がはっと気が付いたときには、もう遅かった。
フッ、と、紗夜の姿が消えた。
「!!」
殺生丸が急いで崖の方に向かおうとすると、妖怪の群れが阻むように行く手を塞ぎ、紗夜の姿を追って、崖の下へと落ちていった。
すぐに後を追おうとしたが、りんと邪見に目を付けた数百の妖怪が、二人を取り巻いている。
「チッ……」
殺生丸は舌打すると、その妖怪へと斬りかかった。
逸る気持ちを抑えるように、殺生丸はただひたすら刀を振るった。