赤林は着崩れたトムの着物の合わせに手を差し込み、脇腹をするりとなで上げてから親指で胸の飾りをぐりぐりと押しつぶした。じわじわと訪れる快感に、トムの気持ちとは裏腹に、次第に主張するようになった乳首を恨めしく思う。

「触ってない方のも、いやらしく立ってるよぅ。こんなところで感じるなんて女の子みたいじゃないか。ご褒美に両方触ってあげようね」
「んっ…む…!」

衣服としてほとんど意味の成してない着物の帯が解かれる。両手が拘束されているため、脱ぐことはできないが、その姿が余計にそそると赤林は言った。散々弄り倒された乳首を今度は舌で舐められ、触れられていない方の乳首も両方いっぺんに愛撫された。ぞくぞくと望みもしない快感がトムの体を襲う。胸だけの刺激で敏感になった体を赤林はなじるように笑った。胸から手が離されへその辺りを触られると、トムはこめかみを僅かに揺らして、くぐもった声を上げた。

「やらしい体だ。嫌だなんて嘘だろう?下もこんなに濡らしてさぁ」

赤林の言葉にトムはすっかり出来上がった下半身に舌打ちをした。立ち上がった刀身を何の躊躇もなく掴まれて、更に身動きがとれなくなった。赤林の大きい手のひらがトムの刀身を握り、ゆるやかに上下に往復する。ぬるぬると滑るそれはローションでも何でもなく、トムの体から分泌されたカウパーに他ならない。最大にまで育ったそれを、赤林は懐に忍ばせていた赤い一本の縄で縛り上げる。鮮やかな手付きだった。しなやかな縄がトムの男根をぎゅっと締め付け、血流を阻む。

痛みに耐えようとそこから思考を逸らそうとするが、そんなもので痛みが和らぐはずもなく、トムは歯を食いしばって荒い息を吐いた。その間も赤林はトムのそそり立った刀身を指で優しく擦りあげる。剥き出しになった亀頭に爪を立てられて、生理的な涙がトムの頬を伝った。

「おや、おいちゃんの指は泣くほどいいのかい?そんなことされちゃあ男冥利に尽きるねぇ」

流れる涙を眺めてから、まるでもったいないと言わんばかりに赤林はトムの眼球に舌を差し入れて、涙腺から涙を根こそぎ奪っった。犯され歪む視界の中、じくじくと思考が麻痺していくのにそう時間はかからなかった。

「んっ、ん、むぅ…っ」
「…さぁて、どうして欲しい?」

赤林が問い掛けるが、声を奪われたトムは返事をする術を持たない。ひたすらに首を振って拘束を解いて欲しいことを訴えるが、目の前の男はそんなトムを嘲笑うかのように、後ろも弄って欲しいのかい?と、トムの尻に手を這わせるばかり。違う違うと思っていても、硬く閉ざされた後孔をひとなでされれば、トムの意思とは関係なく、中がきゅんと蠢いた。一度男を知った体だ。もう後には戻れない。

「う、ンンんっ!…ん…っ!」
「やっぱり久しぶりだと狭いねぇ」

このタヌキ親父が…っ!
赤林は自らの指をぺろりと舐めてからトムの後孔に中指をねじ込んだ。男のごつごつした筋張った太い指に嫌々ながらも翻弄されていく。トムにはどうすることもできずに、ぬぷぬぷと出し入れされるそこを無意識に締め付けた。低く喘ぐ。

「…言葉がないというのは案外不自由なもんだ。田中の可愛い声が聞けなくて、おいちゃん残念だぁ」
「んんっ…!」

アンタが喋れなくさせてんだろ!怒りに震える瞳で赤林を見やると、ああ、その反抗的な態度そそるねぇと口元の布越しにキスをされた。

「ん、むっ!、んーっ、んっ!」

知らぬ間に指が増やされていたようで、自らの後ろから発される水音がどんどん大きくなっていた。
体を揺らす度に縄がぎりぎりと擦れ、縛られている部位から熱い痛みが脳に伝わった。縄が解かれた後の事はできるだけ考えたくなかった。赤く腫れただれた皮膚が容易に想像できるからだ。苦痛がトムを赤く蝕んでいく。

「気持ちいいかい?こっちはすっかり元気だけれど」

蜜を垂れ流す自身を撫でられる。感じるのが苦痛だけならきっと楽だったろうとトムは思った。己の意思とは裏腹に擦られる粘膜から得る甘い痺れ。これがいけない。こんな状況でも感じてしまう自分に腹が立つ。欲を解放できない自身は苦しいが、それが快感になりつつもあった。
痛みと快楽。相反する二つの感覚が混ざりあい、トムはただ唇を噛み締めるばかりだった。

「そろそろいいかな、」

後ろに回った赤林は、ひたりと熱いものをトムの窄まりに当てる。それが何か理解した時には手遅れで、熱く猛った赤林が入り込んだ後だった。粘膜を根こそぎ奪うような圧倒的な質量に、トムは全身を痙攣させた。

「ん、ぐっう…う、んんっっ!!」
「そおれ、はは。頑張れ頑張れ」

今トムの体を支えているのは、天井から吊された縄と左のつま先のみ。踏ん張ろうにも支えなどない。後ろから入り込んだ赤林に耐えられるはずもなく、力の入らない左足が左右にくるくると回りそうになる。それに堪える体力もない。まるで踊っているようだとトムはどこか他人事のように感じた。

「よし、じゃあ今から田中を天国に連れて行ってあげよう」

言いながら赤林は拘束されたトムの右足に唇を落とした。
しかしトムはそれに気付かない。先ほどまで確かに感じていた痛みは綺麗になくなり、吊り上げられた右足の感覚が全くなくなっていたのだ。熱いのか寒いのか、足が体と繋がっているのか、それすらもわからない。
血の通わなくなった右足が冷えていくのに体はどんどん熱くなるのが怖かった。

「ぐっ…んん―――っ!!!」体をずんずんと暴かれて、ふいに腫れ上がった自身の縄を外された。長い間せき止められていた欲望が溢れ出し、畳を白く汚す。開放感に身震いして、唾液で濡れた布を噛み締めた。けれど萎えることはなく、またすぐに立ち上がったそれ。まだまだ欲しいとばかりに腰が揺れる。

「堪え性がないねぇ」

さあ、続きをしようかと赤林はサングラスを外した。








不格好バレリーナ











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